第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

骨・関節25

2014年5月31日(土) 14:50 〜 15:40 ポスター会場 (運動器)

座長:淵岡聡(大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科)

運動器 ポスター

[1126] 人工膝関節全置換術後患者の4週間のクリティカルパスは妥当か?

前川昭次1, 谷口匡史1, 小島弓佳1, 久郷真人1, 大﨑千恵子1, 川崎拓2 (1.滋賀医科大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.滋賀医科大学医学部附属病院リハビリテーション科)

キーワード:人工膝関節全置換術, クリティカルパス, 機能評価

【はじめに,目的】人工膝関節全置換術(以下TKA)後のリハビリテーションプログラムは3週間あるいは4週間のクリティカルパスに準じて実施されることが一般的である。近年,最少侵襲手術の導入や入院医療費削減の観点から,術後1週間以内の入院期間とする施設の報告も散見される。現在,当院では4週パスを適用し,関節可動域(以下ROM)練習,筋力トレーニング,歩行練習主体の理学療法を実施している。そこで本研究では,TKA術前,術後2週,退院時の各パラメータの評価から機能的改善度の推移を把握することにより,現在適用しているクリティカルパスの妥当性の検討ひいては短縮化につなげる基礎データとする。更に,入院期間中の理学療法の効率化,優先性の判断材料とすることを目的としている。
【方法】対象は2011年5月~2012年9月に当院でTKAを施行した変形性膝関節症患者で,当院TKAクリティカルパスに準じ経過し,術前,術後2週および退院時(概ね術後4週)にデータを測定し得た108名(男性17名,女性91名)120関節であった。平均年齢は74.3±6.3歳であった。測定項目は膝関節他動的伸展可動域(以下伸展ROM),膝関節他動的屈曲可動域(以下屈曲ROM),筋力測定器(OG技研社製ISOFORCE GT-360)にて測定した最大等尺性膝関節伸展筋力(以下伸展筋力)・屈曲筋力(以下屈曲筋力),10m歩行時間,Timed Up & Go Test(以下TUG),5回椅子立ち座りテスト(Sit to stand test;以下STS),歩行時疼痛(以下VAS),静止立位荷重量(術側荷重量/体重×100%,Win-pod:MEDI CAPTEURS社製)の計9項目とした。統計処理は術前,術後2週,退院時の差の検定について,一元配置分散分析およびBonferroni法を行った。有意水準は5%未満とし,統計ソフトSPSS Ver20を使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】本学倫理委員会の承認(24-165)を得て実施し,対象者には事前に研究の趣旨,内容および調査結果の取り扱いなどに関して説明し同意を得た。
【結果】本研究の結果,膝伸展ROM(°;-10.5±6.7,-5.3±4.7,-2.9±3.3),VAS(mm;47.5±27.8,27.8±21.9,15.6±17.0)は測定した3時点の全てで有意差があり,術前に比べ術後2週,術後2週よりも退院時において有意な改善が得られていた。また,荷重量(%;42.2±10.3,45.0±10.5,48.7±10.4)は術前に比べ,術後2週・退院時で有意に改善したが,術後2週と退院時の間には差がなかった。さらに,STS(秒;14.8±6.2,15.5±6.4,12.7±5.2)は,術前に比べ術後2週では差がなかったが,術前に比べると退院時には有意な改善を示した。その他,屈曲ROM(°;119.4±19.4,107.9±14.2,118.0±12.7),伸展筋力(Nm/kg;0.82±0.35,0.57±0.23,0.84±0.33),屈曲筋力(Nm/kg;0.40±0.18,0.29±0.14,0.36±0.15),10m歩行時間(秒;9.8±3.8,11.1±3.6,8.9±2.7),TUG(秒;11.9±4.3,13.1±4.4,10.8±3.1)は,術前に比べて術後2週で有意に悪化,術後2週から退院時には有意に改善したが,術前と退院時には差がなかった。
【考察】今回の結果から,TKA術後特に機能的改善度が高かったのは,荷重量であり,術後2週の時点で退院時と同等まで改善していたことから,関節置換の即時的効果の表れと推察する。術前に比べて術後2週で一旦低下する項目があるが,術後2週から退院時には,荷重量以外の8項目は有意に改善し術前と同程度あるいは上回るまでに改善していた。つまり,術後2週から4週までの期間は,最も治療効果が得やすい時期ということになる。したがって,この時期に集中的な理学療法を実施することは重要であり,少なくとも術後2週以上の期間を設定したクリティカルパスが有効であるといえる。今回術後3週時の評価を行っていないため結論付けることはできないが,当院の4週パスは妥当性の高い期間であることが示唆された。また,退院時の機能的改善度は,膝伸展ROM,STS,VAS,荷重量については術前以上の値を,伸展筋力,屈曲筋力,膝屈曲ROM,10m歩行時間,TUGについては概ね術前と同等の値が目標となることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】TKA術前,2週時,退院時の各パラメータの機能的改善度を知ることは,クリティカルパスの妥当性の判断材料の一助になることが示唆された。また,入院中の理学療法の効率化,優先性を再考する上でも重要な指標となるものである。