[1192] 外来透析患者における運動習慣と自己効力感およびQOLの関係
キーワード:血液透析, 運動習慣, 自己効力感
【はじめに,目的】
透析人口は2011年に全国で30万人を超え,血液透析(HD)患者の高齢化が進んでいる。一般的に,透析をする高齢者では筋力低下,筋委縮,腎性貧血,心肺機能低下などで運動耐容能低下や易疲労性を生じやすい。また,水分摂取や通院などの日常生活における制限や抑うつ,死の恐怖などの精神的ストレスにさらされているため,活動性が低下しやすい心理社会的状況にあると言える。これらの背景から,運動を継続して行っているHD患者は少ないのではないかと推察される。また,透析患者の生活の質(QOL)は一般人口よりも低下していることが知られ,運動習慣の欠如はQOL低下に影響を及ぼす一因かもしれない。本研究では,HD患者における運動の状況とその継続に関わる要因を分析し,運動の継続が自己効力感やQOLに及ぼす影響について検討した。
【方法】
当院のHD患者を対象に,運動の継続に関するアンケート調査と同時にSF-36v2,Exercise Self-Efficacy(運動SE)を実施した。認知症や意識障害,四肢の機能障害を有する患者は除外した。診療録より年齢,性別,透析年数,糖尿病の有無の項目を抽出した。「1回30分以上の運動を,週2回以上,1年以上継続」を“運動習慣”,「何らかの運動を週1回以上,6か月以上継続」を“運動継続”と定義した。続いて,運動継続の有無と年齢(65歳未満と65歳以上),性別,長期透析(10年未満と10年以上),糖尿病の有無との関連を調べた。最後に,運動継続群と非運動継続群に分け,SF-36v2の下位尺度および運動SEのスコアを比較した。統計解析にはChi-Square test,Mann-Whitnet U testを用い,P<0.05を有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は病院倫理委員会の承認を得て実施された。事前に本研究の内容について文書により説明を行い,同意した患者を対象とした。
【結果】
136名中117名より回答を得た。平均年齢は65.4歳,男性の割合は55%,平均透析年数は9.1年,糖尿病を有する割合は35%であった。“運動習慣”,“運動継続”ありの割合はそれぞれ10%,33%であった。運動継続の有無に関わる要因では,年齢,性別,透析年数,糖尿病の有無のいずれも関連を認めなかった。SF-36v2のスコアは,運動継続の有無に関わらず,すべての下位尺度において国民基準値を歌まわっていたが,運動継続群では,身体機能,日常役割機能(身体),日常役割機能(精神)の下位尺度において非運動継続群よりもスコアが高値であった。また,運動継続群は,非運動継続群より運動SEのスコアが高値であった。
【考察】
当院では“運動習慣”のない透析患者が大多数であった。透析患者は一日の活動量が健常人の40%程度まで低下していると言われており(今井2009),透析患者の運動機能をいかに維持するかは深刻な問題である。一方で,“運動習慣”に至らないでも,“運動継続”している透析患者は一定数いることが判明した。何らかの運動を継続することは,透析患者の自己効力感を高め,身体活動に関わるQOLの改善につながる可能性がある。特に,自己効力感は身体活動,運動の促進,継続に最も関わる心理的要因とされることから,透析患者の自己効力感を高め,“運動継続”を支援する対策が必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
今透析医療において高齢化が急速に進んでおり,運動機能の低下により自力で外来通院ができなくなる患者が増加している。長年運動習慣のない透析患者が一人で運動を始めて継続することは難しいため,理学療法士が介入する意義は大きい。さらに,自己効力感が高まるような介入は,身体活動,運動の促進,継続につながる可能性がある。
透析人口は2011年に全国で30万人を超え,血液透析(HD)患者の高齢化が進んでいる。一般的に,透析をする高齢者では筋力低下,筋委縮,腎性貧血,心肺機能低下などで運動耐容能低下や易疲労性を生じやすい。また,水分摂取や通院などの日常生活における制限や抑うつ,死の恐怖などの精神的ストレスにさらされているため,活動性が低下しやすい心理社会的状況にあると言える。これらの背景から,運動を継続して行っているHD患者は少ないのではないかと推察される。また,透析患者の生活の質(QOL)は一般人口よりも低下していることが知られ,運動習慣の欠如はQOL低下に影響を及ぼす一因かもしれない。本研究では,HD患者における運動の状況とその継続に関わる要因を分析し,運動の継続が自己効力感やQOLに及ぼす影響について検討した。
【方法】
当院のHD患者を対象に,運動の継続に関するアンケート調査と同時にSF-36v2,Exercise Self-Efficacy(運動SE)を実施した。認知症や意識障害,四肢の機能障害を有する患者は除外した。診療録より年齢,性別,透析年数,糖尿病の有無の項目を抽出した。「1回30分以上の運動を,週2回以上,1年以上継続」を“運動習慣”,「何らかの運動を週1回以上,6か月以上継続」を“運動継続”と定義した。続いて,運動継続の有無と年齢(65歳未満と65歳以上),性別,長期透析(10年未満と10年以上),糖尿病の有無との関連を調べた。最後に,運動継続群と非運動継続群に分け,SF-36v2の下位尺度および運動SEのスコアを比較した。統計解析にはChi-Square test,Mann-Whitnet U testを用い,P<0.05を有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は病院倫理委員会の承認を得て実施された。事前に本研究の内容について文書により説明を行い,同意した患者を対象とした。
【結果】
136名中117名より回答を得た。平均年齢は65.4歳,男性の割合は55%,平均透析年数は9.1年,糖尿病を有する割合は35%であった。“運動習慣”,“運動継続”ありの割合はそれぞれ10%,33%であった。運動継続の有無に関わる要因では,年齢,性別,透析年数,糖尿病の有無のいずれも関連を認めなかった。SF-36v2のスコアは,運動継続の有無に関わらず,すべての下位尺度において国民基準値を歌まわっていたが,運動継続群では,身体機能,日常役割機能(身体),日常役割機能(精神)の下位尺度において非運動継続群よりもスコアが高値であった。また,運動継続群は,非運動継続群より運動SEのスコアが高値であった。
【考察】
当院では“運動習慣”のない透析患者が大多数であった。透析患者は一日の活動量が健常人の40%程度まで低下していると言われており(今井2009),透析患者の運動機能をいかに維持するかは深刻な問題である。一方で,“運動習慣”に至らないでも,“運動継続”している透析患者は一定数いることが判明した。何らかの運動を継続することは,透析患者の自己効力感を高め,身体活動に関わるQOLの改善につながる可能性がある。特に,自己効力感は身体活動,運動の促進,継続に最も関わる心理的要因とされることから,透析患者の自己効力感を高め,“運動継続”を支援する対策が必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
今透析医療において高齢化が急速に進んでおり,運動機能の低下により自力で外来通院ができなくなる患者が増加している。長年運動習慣のない透析患者が一人で運動を始めて継続することは難しいため,理学療法士が介入する意義は大きい。さらに,自己効力感が高まるような介入は,身体活動,運動の促進,継続につながる可能性がある。