[1237] 背臥位におけるハンドヘルドダイナモメーターを使用した等尺性股関節伸展筋力の測定
Keywords:股関節, ハンドヘルドダイナモメーター, 筋力
【はじめに，目的】
ハンドヘルドダイナモメーター（以下，HHD）を用いた等尺性股関節伸展筋力の測定に関して，有末ら（2012）はベルトによる固定を用いることで良好な検者内信頼性が得られること，また背臥位における新たな徒手固定法を用いればベルト固定法と同等の検者内信頼性を有することを報告した。しかし，HHDを徒手固定法で用いた場合，検者の体格等に影響されると言われるが，検者間信頼性はまだ確認していない。そこで本研究の目的は，背臥位でHHDを用いた等尺性股関節伸展筋力の測定法に関して，男女各1名ずつの検者による新たな徒手固定法の検者間信頼性の検討と，ベルト固定法との比較を行った。
【方法】
対象は健常成人男女各10名の計20名（年齢：24.5±3.6歳，身長：1.63±0.09m，体重：55.4±10.0kg）の右下肢とし，検者は臨床経験が8年目の理学療法士男性1名（年齢：30歳，身長：1.71m，体重：57kg）と5年目の理学療法士女性1名（年齢：25歳，身長：1.52m，体重：47kg）の2名とした。HHDは，アニマ社製の等尺性筋力測定装置ミュータスを使用した。測定肢位は背臥位とし，HHDを当てる部位は被験者の右下腿遠位後面とした。HHDの固定方法はベルト固定法と徒手固定法を用いた。ベルト固定法は，オーバーヘッドフレームにベルトを固定して行った。徒手固定法は，検者がHHDを持った側（測定側）の肘を治療台に着き，検者の前腕を被験者の下腿に対して直角に保持し，もう一方の手でHHDと被験者の右下腿がずれないように支えた。被験者の右膝関節は最大伸展位とし，被験者の右股関節は徒手固定法における右股関節屈曲角度を事前に測定し，その角度で統一した。なお，骨盤の代償を防ぐため，革製ベルトで被験者の両上前腸骨棘を被い，治療台に固定した。2種類の固定方法と2名の検者からなる4つの組み合わせの中から無作為に選択し，数回練習後，最大努力にて約5秒間実施した。その後，約30秒の間隔を空けて計3回測定し，その最大値を体重当たりのトルクに換算し，代表値として用いた。測定は3日以上空けて，残りの条件を無作為に選択実施した。統計処理は，被験者の股関節の設定角度の違いを比較するために対応のあるt検定を用い，2種類の固定方法の測定値の関係を検討するためにPearsonの相関係数を求めた。各固定方法における検者間信頼性には級内相関係数（以下，ICC）を求めた。
【倫理的配慮，説明と同意】
本研究は当院の倫理員会の承認を得ており，全ての対象者に研究の趣旨や内容を説明し，参加の同意を得た。
【結果】
検者間の股関節の設定角度に有意差はなかった（p=0.30）。徒手固定法とベルト固定法の相関係数は，男性検者がr＝0.824，女性検者がr＝0.880となった。股関節伸展筋力の検者間信頼性は，ベルト固定法がICC（2,1）=0.88（95%CI：0.78～0.93），徒手固定法がICC（2,1）=0.86（95%CI：0.73～0.93）であった。
【考察】
徒手固定法とベルト固定法の測定値は，男女2名の検者とも高い相関を示した。徳久ら（2007）は，HHDを用いた等尺性膝関節伸展筋力の測定において，検者の測定側の上肢を下腿で固定することで，ベルト固定法と同様の良い信頼性を報告した。新たな徒手固定法は，ベルト固定法よりも少ない手間で行えるにもかかわらず，治療台に検者の測定側の肘を着くことで，ベルト固定法と同等の固定性を得ることができ，高い相関を示したと思われる。次に，検者間信頼性は，2種類の固定方法ともに良い信頼性となった。山崎ら（2007）は，膝関節伸展筋力に関して，検者の性別により徒手で固定できる限界が異なると報告した。新たな徒手固定法は，検者の前腕を被験者の下腿に対して直角に保持し，肘を治療台に固定して力を受けており，検者の筋力を過剰に必要としなくても保持が可能となる。これにより，体格や筋力の影響を最小限することができると考えた。以上のことから，新たな徒手固定法は，簡便かつ固定性に優れていることから検者の体格等による影響を受けにくく，検者間信頼性が良好となることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により，背臥位におけるHHDを用いた等尺性股関節伸展筋力の測定に関して，新たな徒手固定法は，男女の検者に良い検者間信頼性が得られた。そのため簡便に誰でも信頼性のある測定が行え，臨床上意義のあるものと思われた。今後は，実際の臨床場面で使用し更なる検証を行いたい。
ハンドヘルドダイナモメーター（以下，HHD）を用いた等尺性股関節伸展筋力の測定に関して，有末ら（2012）はベルトによる固定を用いることで良好な検者内信頼性が得られること，また背臥位における新たな徒手固定法を用いればベルト固定法と同等の検者内信頼性を有することを報告した。しかし，HHDを徒手固定法で用いた場合，検者の体格等に影響されると言われるが，検者間信頼性はまだ確認していない。そこで本研究の目的は，背臥位でHHDを用いた等尺性股関節伸展筋力の測定法に関して，男女各1名ずつの検者による新たな徒手固定法の検者間信頼性の検討と，ベルト固定法との比較を行った。
【方法】
対象は健常成人男女各10名の計20名（年齢：24.5±3.6歳，身長：1.63±0.09m，体重：55.4±10.0kg）の右下肢とし，検者は臨床経験が8年目の理学療法士男性1名（年齢：30歳，身長：1.71m，体重：57kg）と5年目の理学療法士女性1名（年齢：25歳，身長：1.52m，体重：47kg）の2名とした。HHDは，アニマ社製の等尺性筋力測定装置ミュータスを使用した。測定肢位は背臥位とし，HHDを当てる部位は被験者の右下腿遠位後面とした。HHDの固定方法はベルト固定法と徒手固定法を用いた。ベルト固定法は，オーバーヘッドフレームにベルトを固定して行った。徒手固定法は，検者がHHDを持った側（測定側）の肘を治療台に着き，検者の前腕を被験者の下腿に対して直角に保持し，もう一方の手でHHDと被験者の右下腿がずれないように支えた。被験者の右膝関節は最大伸展位とし，被験者の右股関節は徒手固定法における右股関節屈曲角度を事前に測定し，その角度で統一した。なお，骨盤の代償を防ぐため，革製ベルトで被験者の両上前腸骨棘を被い，治療台に固定した。2種類の固定方法と2名の検者からなる4つの組み合わせの中から無作為に選択し，数回練習後，最大努力にて約5秒間実施した。その後，約30秒の間隔を空けて計3回測定し，その最大値を体重当たりのトルクに換算し，代表値として用いた。測定は3日以上空けて，残りの条件を無作為に選択実施した。統計処理は，被験者の股関節の設定角度の違いを比較するために対応のあるt検定を用い，2種類の固定方法の測定値の関係を検討するためにPearsonの相関係数を求めた。各固定方法における検者間信頼性には級内相関係数（以下，ICC）を求めた。
【倫理的配慮，説明と同意】
本研究は当院の倫理員会の承認を得ており，全ての対象者に研究の趣旨や内容を説明し，参加の同意を得た。
【結果】
検者間の股関節の設定角度に有意差はなかった（p=0.30）。徒手固定法とベルト固定法の相関係数は，男性検者がr＝0.824，女性検者がr＝0.880となった。股関節伸展筋力の検者間信頼性は，ベルト固定法がICC（2,1）=0.88（95%CI：0.78～0.93），徒手固定法がICC（2,1）=0.86（95%CI：0.73～0.93）であった。
【考察】
徒手固定法とベルト固定法の測定値は，男女2名の検者とも高い相関を示した。徳久ら（2007）は，HHDを用いた等尺性膝関節伸展筋力の測定において，検者の測定側の上肢を下腿で固定することで，ベルト固定法と同様の良い信頼性を報告した。新たな徒手固定法は，ベルト固定法よりも少ない手間で行えるにもかかわらず，治療台に検者の測定側の肘を着くことで，ベルト固定法と同等の固定性を得ることができ，高い相関を示したと思われる。次に，検者間信頼性は，2種類の固定方法ともに良い信頼性となった。山崎ら（2007）は，膝関節伸展筋力に関して，検者の性別により徒手で固定できる限界が異なると報告した。新たな徒手固定法は，検者の前腕を被験者の下腿に対して直角に保持し，肘を治療台に固定して力を受けており，検者の筋力を過剰に必要としなくても保持が可能となる。これにより，体格や筋力の影響を最小限することができると考えた。以上のことから，新たな徒手固定法は，簡便かつ固定性に優れていることから検者の体格等による影響を受けにくく，検者間信頼性が良好となることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により，背臥位におけるHHDを用いた等尺性股関節伸展筋力の測定に関して，新たな徒手固定法は，男女の検者に良い検者間信頼性が得られた。そのため簡便に誰でも信頼性のある測定が行え，臨床上意義のあるものと思われた。今後は，実際の臨床場面で使用し更なる検証を行いたい。