[1244] 「またぎ歩行」課題におけるMisstepと転倒関連因子との関係
Keywords:「またぎ歩行」課題, Misstep, 地域高齢者
【目的】
我々は昨年の本学会において,自作考案した「またぎ歩行課題」を用いれば二重課題法を用いることなく,転倒経験者の特徴を見出すことができることを報告した。そこで,本研究の目的は,「またぎ歩行」課題におけるMisstep発生の有無に関連する因子を明らかにすることとした。
【方法】
対象は,自立して生活を営むことが可能な65歳以上の地域高齢者であり,両目視力が0.7以上あること,500m以上杖を使用せず歩行が可能であること,神経疾患を有さないことを満たす108名とした。方法は,自作考案した「またぎ歩行」課題をすべての対象者に実施しした。「またぎ歩行」課題は,10cm幅の黄色いライン12本を不等間隔にプリントした10m歩行路(10m×0.9m)を自作し,黄色いラインを踏まないよう指示した「またぎ歩行」を10m×2往復を各対象者が最も行いやすい歩行速度で行わせた。その際,黄色いラインへの足部の接触をMisstepとして定義し,そのMisstepの有無を目視にて観察計測し,合わせて歩行時間も計測した。また,その他の調査項目として身長,体重,BMI,躓き自覚の有無,過去1年間の転倒歴の有無,Timed Up & Go test(TUG),最大膝伸展筋力(アニマ社製μTASを使用),TMT-A,簡易Geriatric Depression Scale(GDS),MMSE,転倒自己効力感(Falls Efficacy Scale:FES)について調査した。
解析は,「またぎ歩行」課題2往復においてのMisstepの有無により対象者をNon-Miss群(N-Miss群)60名(74.0±4.5)とMiss群48名(77.8±6.1)に分類し,調査項目をそれぞれ対応のないt検定,マンホイットニーU検定及びχ2検定を用いて比較検討を行った後,Misstep発生の有無を従属変数,各測定結果にて有意差を認めた項目を独立変数としたロジスティック回帰分析によりMisstep発生に関連する因子について検討した。なお,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は大阪府立大学における研究倫理審査委員会の承認を得ており,すべての対象者には,研究の主旨を書面と口頭にて説明を行い,同意のもと実施している。
【結果】
両群間において年齢に有意差を認めたほか,転倒歴の有無については,N-Miss群60名中11名,Miss群48名中22名が過去1年間に転倒歴があり,Miss群で有意な転倒者を認めた。またTMT-AについてもN-Miss群119.2±32.2秒,Miss群149.5±57.3秒であり,有意にMiss群で高値を示した。さらに,FESでも同様にN-Miss群14.0±6.4,Miss群18.2±14.4となり,Miss群で有意な高値を認めた。これらの項目を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った結果,年齢が高いこと(オッズ比1.1,95%信頼区間1.0-1.2)と過去1年間の転倒歴の有(オッズ比2.8,95%信頼区間1.3-7.1)がMiss群の有意な関連因子であった。
【考察】
本研究結果から「またぎ歩行」課題におけるMisstepの発生要因として,高齢と過去の転倒経験が認められた。地域高齢者の転倒時の状況として,「歩行中の躓き」が最も多いことが先行研究により報告されている。しかしながら,「歩行中の躓き」は転倒に比べ頻度は多く発生するものの,偶発的アクシデントであるとともに,躓きを有する者すべてが転倒するわけではない。本研究における「またぎ歩行」課題におけるMisstepは,躓き自覚の有無や身体機能,注意機能等との関連性は認められず,過去の転倒経験との関係性が認められたことは意義深く。今後は,「またぎ歩行」課題におけるMisstepが将来の転倒予測スクリーニング能を有しているかについての縦断的研究を行うことが必要であると思われる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,地域在住の高齢者を対象とした「転倒」発生の予測指標として,「またぎ歩行」課題が有用となる可能性を示唆するものと考えている。
我々は昨年の本学会において,自作考案した「またぎ歩行課題」を用いれば二重課題法を用いることなく,転倒経験者の特徴を見出すことができることを報告した。そこで,本研究の目的は,「またぎ歩行」課題におけるMisstep発生の有無に関連する因子を明らかにすることとした。
【方法】
対象は,自立して生活を営むことが可能な65歳以上の地域高齢者であり,両目視力が0.7以上あること,500m以上杖を使用せず歩行が可能であること,神経疾患を有さないことを満たす108名とした。方法は,自作考案した「またぎ歩行」課題をすべての対象者に実施しした。「またぎ歩行」課題は,10cm幅の黄色いライン12本を不等間隔にプリントした10m歩行路(10m×0.9m)を自作し,黄色いラインを踏まないよう指示した「またぎ歩行」を10m×2往復を各対象者が最も行いやすい歩行速度で行わせた。その際,黄色いラインへの足部の接触をMisstepとして定義し,そのMisstepの有無を目視にて観察計測し,合わせて歩行時間も計測した。また,その他の調査項目として身長,体重,BMI,躓き自覚の有無,過去1年間の転倒歴の有無,Timed Up & Go test(TUG),最大膝伸展筋力(アニマ社製μTASを使用),TMT-A,簡易Geriatric Depression Scale(GDS),MMSE,転倒自己効力感(Falls Efficacy Scale:FES)について調査した。
解析は,「またぎ歩行」課題2往復においてのMisstepの有無により対象者をNon-Miss群(N-Miss群)60名(74.0±4.5)とMiss群48名(77.8±6.1)に分類し,調査項目をそれぞれ対応のないt検定,マンホイットニーU検定及びχ2検定を用いて比較検討を行った後,Misstep発生の有無を従属変数,各測定結果にて有意差を認めた項目を独立変数としたロジスティック回帰分析によりMisstep発生に関連する因子について検討した。なお,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は大阪府立大学における研究倫理審査委員会の承認を得ており,すべての対象者には,研究の主旨を書面と口頭にて説明を行い,同意のもと実施している。
【結果】
両群間において年齢に有意差を認めたほか,転倒歴の有無については,N-Miss群60名中11名,Miss群48名中22名が過去1年間に転倒歴があり,Miss群で有意な転倒者を認めた。またTMT-AについてもN-Miss群119.2±32.2秒,Miss群149.5±57.3秒であり,有意にMiss群で高値を示した。さらに,FESでも同様にN-Miss群14.0±6.4,Miss群18.2±14.4となり,Miss群で有意な高値を認めた。これらの項目を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った結果,年齢が高いこと(オッズ比1.1,95%信頼区間1.0-1.2)と過去1年間の転倒歴の有(オッズ比2.8,95%信頼区間1.3-7.1)がMiss群の有意な関連因子であった。
【考察】
本研究結果から「またぎ歩行」課題におけるMisstepの発生要因として,高齢と過去の転倒経験が認められた。地域高齢者の転倒時の状況として,「歩行中の躓き」が最も多いことが先行研究により報告されている。しかしながら,「歩行中の躓き」は転倒に比べ頻度は多く発生するものの,偶発的アクシデントであるとともに,躓きを有する者すべてが転倒するわけではない。本研究における「またぎ歩行」課題におけるMisstepは,躓き自覚の有無や身体機能,注意機能等との関連性は認められず,過去の転倒経験との関係性が認められたことは意義深く。今後は,「またぎ歩行」課題におけるMisstepが将来の転倒予測スクリーニング能を有しているかについての縦断的研究を行うことが必要であると思われる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,地域在住の高齢者を対象とした「転倒」発生の予測指標として,「またぎ歩行」課題が有用となる可能性を示唆するものと考えている。