[1280] 要支援高齢者の移動能力と日常生活能力の3年間の変化
Keywords:デイサービス, 移動能力, 日常生活能力
【はじめに,目的】2006年の介護保険法改定により新予防給付が新設された。この目的は,虚弱高齢者の介護量を増加させないこと,すなわち,要支援認定高齢者を要介護状態に移行することを防ぐことである。そのため,介護予防を主眼としたデイサービスを実施する施設が多く開設されている。要介護状態に陥らないためには,これらの介護予防サービスを継続的に実施し個々の高齢者の移動能力や日常生活能力を長期にわたり維持することが重要となる。ところが,本サービス利用者の長期的な運動機能や生活機能の推移の実態はほとんど明らかにされていない。本研究の目的は,介護予防特化型デイサービス利用する要支援高齢者の3年間における移動能力や日常生活能力の推移を明らかにすることである。
【方法】東京都内,埼玉県内の2つの介護予防特化型デイサービスセンターへ登録された高齢者のうち本研究に対し同意の得られた124名(男性37名,女性87名,平均年齢79.4歳,49~96歳,標準偏差8.0歳)を対象とした。調査項目は,ADL-20,総合移動能力,屋内および屋外移動能力,外出頻度とし,調査開始から3年間,6か月毎に調査した。そして,経時的推移についてFriedman検定を用いて検討した。統計処理は,統計ソフトSPSS17.0Jを用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者にはすべて,利用開始時に調査および本人が特定されないようデータ分析を行う旨を口頭と書面を用いて説明し本研究への同意を得た。また,本研究は目白大学倫理審査会より承認を得た上で実施した。
【結果】対象のうち,デイサービス利用開始から3年間継続して調査可能であったものは,36名(男性13名,女性23名)であった。要介護度は,要支援1が13名,要支援2が23名,平均年齢は79.9歳(58~95歳,標準偏差8.8歳)であった。3年間継続できずに途中終了したものは,88名であった。終了理由は,要介護認定29名,体の痛み・体調不良19名,入院・入所11名,他のサービスに移行8名,自己都合7名,その他14名であった。3年間デイサービスを継続できたもののうち,調査項目の中で有意な経時的変化が認められた項目は,ADL-20の中の床からの立ち上がり,薬の管理,買い物および総合移動能力,屋外移動能力,外出頻度の6項目であった。買い物は,利用開始時よりも向上がみられたが,その他の5項目はすべて経年とともに徐々に低下する傾向が認められた。
【考察】本研究では,要支援と認定された介護予防に特化したデイサービスを利用する高齢者を対象とし,3年間の運動機能や生活機能の推移を追跡し検討した。有意な経年変化を示した6項目中の5項目で低下傾向を示したことは,加齢による運動機能低下が反映された結果であると考えられるが,調査項目の多数を占める18項目に関して有意な変化が認められなかったことは,本デイサービスによる機能維持効果であると考えることもできる。また,買い物に関しては,むしろ向上していた。移動能力が有意に低下しているにもかかわらず買い物の機能が向上していることは,身体機能は低下傾向にあるものの,デイサービスの利用により社会活動が活性化されたものと推察される。一方,追跡期間の3年間で利用者の約7割が途中終了していた。途中終了者に関しては追跡調査の実施が困難であるが,身体機能や生活能力の低下が予測される。今後は,サービス継続者の機能維持を図ることは当然のこと,途中終了者を減じる対策もしくはフォローアップ体制の確立が重要になると思われる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により,介護予防特化型デイサービス利用者の3年間の移動能力や日常生活能力の変化とその効果が明らかになった。同時に途中終了者への対策の必要性も明らかになった。
【方法】東京都内,埼玉県内の2つの介護予防特化型デイサービスセンターへ登録された高齢者のうち本研究に対し同意の得られた124名(男性37名,女性87名,平均年齢79.4歳,49~96歳,標準偏差8.0歳)を対象とした。調査項目は,ADL-20,総合移動能力,屋内および屋外移動能力,外出頻度とし,調査開始から3年間,6か月毎に調査した。そして,経時的推移についてFriedman検定を用いて検討した。統計処理は,統計ソフトSPSS17.0Jを用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者にはすべて,利用開始時に調査および本人が特定されないようデータ分析を行う旨を口頭と書面を用いて説明し本研究への同意を得た。また,本研究は目白大学倫理審査会より承認を得た上で実施した。
【結果】対象のうち,デイサービス利用開始から3年間継続して調査可能であったものは,36名(男性13名,女性23名)であった。要介護度は,要支援1が13名,要支援2が23名,平均年齢は79.9歳(58~95歳,標準偏差8.8歳)であった。3年間継続できずに途中終了したものは,88名であった。終了理由は,要介護認定29名,体の痛み・体調不良19名,入院・入所11名,他のサービスに移行8名,自己都合7名,その他14名であった。3年間デイサービスを継続できたもののうち,調査項目の中で有意な経時的変化が認められた項目は,ADL-20の中の床からの立ち上がり,薬の管理,買い物および総合移動能力,屋外移動能力,外出頻度の6項目であった。買い物は,利用開始時よりも向上がみられたが,その他の5項目はすべて経年とともに徐々に低下する傾向が認められた。
【考察】本研究では,要支援と認定された介護予防に特化したデイサービスを利用する高齢者を対象とし,3年間の運動機能や生活機能の推移を追跡し検討した。有意な経年変化を示した6項目中の5項目で低下傾向を示したことは,加齢による運動機能低下が反映された結果であると考えられるが,調査項目の多数を占める18項目に関して有意な変化が認められなかったことは,本デイサービスによる機能維持効果であると考えることもできる。また,買い物に関しては,むしろ向上していた。移動能力が有意に低下しているにもかかわらず買い物の機能が向上していることは,身体機能は低下傾向にあるものの,デイサービスの利用により社会活動が活性化されたものと推察される。一方,追跡期間の3年間で利用者の約7割が途中終了していた。途中終了者に関しては追跡調査の実施が困難であるが,身体機能や生活能力の低下が予測される。今後は,サービス継続者の機能維持を図ることは当然のこと,途中終了者を減じる対策もしくはフォローアップ体制の確立が重要になると思われる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により,介護予防特化型デイサービス利用者の3年間の移動能力や日常生活能力の変化とその効果が明らかになった。同時に途中終了者への対策の必要性も明らかになった。