第49回日本理学療法学術大会

講演情報

発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

福祉用具・地域在宅8

2014年5月31日(土) 16:40 〜 17:30 ポスター会場 (生活環境支援)

座長:細野香(介護老人保健施設さくら苑)

生活環境支援 ポスター

[1282] 当施設における水中運動療法の効果と今後の展望

佐々木謙二1, 川村泰明1, 龍田記方1, 肥田理恵1, 川初清典2, 大堀克己2 (1.介護老人保健施設サンビオーズ新琴似, 2.社会医療法人北海道循環器病院)

キーワード:水中運動療法, 要介護高齢者, 通所リハビリテーション

【はじめに】
水中運動療法は,水の特性を利用し,心臓や肺,筋・骨格などへの負担を軽減しながら,全身的に効果が得られる,高齢者に適した運動として注目されている。当施設では全国的にも数少ない水中運動用のプールを設置し,デイケアを利用されている方を対象とした水中運動療法を2006年より実施している。そこで,現在までの7年間の結果を分析し,今後の課題と展望を検討したので,報告する。
【方法】
対象は水中運動療法を実施し,運動機能評価が可能であった利用者50名(男性18名,女性32名,平均年齢77.5±7.9歳)であり,開始時と3ヵ月後の ①握力,②膝伸展筋力,③バランス能力-Berg Balance Scale(BBS),④移動能力-Timed Up and Go(TUG)について検討した。また,現在水中運動療法を実施している利用者44名(男性12名,女性32名,平均年齢80.0±7.9歳)に対して,自覚症状の改善に対する聞き取り調査を行なった。
【説明と同意】
対象者にはヘルシンキ宣言に則り十分な配慮を行い,本研究の目的と方法,個人情報の保護について説明し,同意を得た。
【結果】
水中運動療法実施前と3か月後の握力,右脚伸展筋力,BBS,TUGにおいて,有意な改善が得られた。BBSの改善群(21名/50人中)の中で,BBSの項目毎の点数変化を検証すると,段差踏み換え,片脚立位保持など,難易度の高い項目でも改善がみられた。自覚症状の変化としては,柔軟性や姿勢などの改善が最も多く,次いで歩行や立ち座りなどの動作の改善,腰や膝の痛みの改善がみられたとの回答が得られた。
【考察】
現在実施している水中運動療法は,痛みの緩和や柔軟性の改善を目的としたプログラムであり,自覚症状の改善に対する聞き取り調査の結果からも,一定の効果は得られている。またバランス能力や移動能力に関しても改善がみられており,筋・骨格への運動効果も得られている。ただ,現在参加している利用者は,高血圧や糖尿病などの動脈硬化に対するリスクファクターを有する割合が高く,高血圧を有する利用者は54.5%で,高血圧+糖尿病など複数のリスクファクターを有する利用者が31.8%となっている。このことからも,現在のメニューに有酸素運動を取り入れることで,動脈硬化に対するリスクファクターの改善も図っていく必要があると考える。
また,自覚症状の変化により,日常の活動性や精神機能面がどのように変化したのかを評価する必要もあると考える。
【理学療法学研究としての意義】
老人保健施設がプールを設置している例は少なく,要介護高齢者における水中運動療法の効果を報告した例も少ない。本研究は,要介護高齢者においても安全で効果的な運動である水中運動療法を更に発展させる意味でも有用と考えられる。