[1283] 通所介護における小集団体操介入前後での運動機能とADLについて
Keywords:通所介護, 小集団体操, ADL
【はじめに】通所介護利用の主目的は自立支援と日常生活の充実,残存する身体機能を活用して在宅において可能な限り生活することである。当事業所では,平成24年4月から要支援・要介護者に対して理学療法士等による具体的なADLへのアプローチを実施し,併せて小集団体操に取り組んでいる。そこで今回,理学療法士等による小集団体操が,運動機能の維持およびADL低下の防止に一定の効果が得られたので報告する。
【方法】対象は,通所介護を週1~2回利用する要支援・要介護高齢者14人(男性2名,女性12名,年齢:88.3±3.9歳)とした。介護度の内訳は,要支援1が3名,要支援2が3名,要介護1が5名,要介護2が3名であった。小集団体操は理学療法士等が特に入浴,排泄,移動動作において類似の目標を持ち同様の運動内容が設定された5人以下の小集団に対して,実践的かつ反復的に集団体操を行った。運動機能検査は,上肢機能の指標として握力,下肢機能の指標としてTUG(Timed Up and Go Test)を行った。握力はスメドレー式握力計を用いて利き手の最大握力を立位にて測定し,TUGは椅子座位から3m前方のポールを回って着座するまでの時間をストップウォッチにて測定した。また,ADL評価は,FIM(Functional Independence Measure)の運動13項目について,自立度と介助度から1~7点で評価した。小集団体操介入前と介入6・12カ月後の各時期における握力,TUGとFIMの値の変化を比較検討した。なお,統計処理として,有意水準5%未満としてt検定を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には,ヘルシンキ宣言に沿って研究の趣旨及び目的の説明を行い,同意を得た。なお,本研究は医療法人健仁会倫理委員会の承認を受けて実施した。
【結果】握力の平均値では,介入前14.9±5.1kg,介入6ヶ月後15.5±4.1kg,12カ月後14.7±5.2であったが,各時期における有意差は認められなかった。TUGの平均値では,介入前18.4±6.8秒,介入6か月後15.2±5.9秒と有意に改善したが,介入12カ月後17.5±5.4秒と介入前の値にまで戻った。FIMの平均値では,介入前と介入12カ月後で,食事7.0±0.0→7.0±0.0,整容6.1±1.3→6.1±1.2,清拭5.1±1.8→4.9±1.7,更衣上6.2±0.9→6.2±0.9,更衣下5.6±1.2→5.6±1.2,トイレ動作6.1±1.5→6.1±1.3,排尿6.4±1.6→6.1±1.7,排便6.8±0.8→6.8±0.8,椅子移乗6.0±1.1→6.1±1.1,トイレ移乗5.9±1.1→6.0±1.0,浴槽移乗5.0±1.3→5.0±1.3,移動5.4±1.1→5.3±1.1,階段4.3±1.3→4.1±1.4と各項目でほとんど変化がみられなかった。
【考察】理学療法士等による小集団体操を12カ月間取り組んだ結果,握力は各時期において有意差が認められなかった。しかし,先行研究によると要介護高齢者の平均値は14kgであり,また健常高齢者では年2%低下するとの報告に対し,本研究では各時期において同様の値となり,かつ要介護高齢者でありながら介入後に有意差が認められず一定の維持をすることが出来たと考えられる。TUGについてPodsiadloらは「20秒以下で遂行できる高齢者はADLにおける移動課題が自立し,屋外移動のための十分な歩行速度がある」と述べていることから,本研究で20秒以内であったことより良好な状態が維持されたと考えられる。先行研究によると握力・TUG値の低下はADLの自立度低下の危険因子であるとされており,また健常高齢者のADL低下率は年2.5%低下するとの報告がある。これについても,結果からもわかるように握力およびTUGは維持され,FIMも0.55%低下に留まり,運動機能面ばかりでなくADL面においても良好な成績が得られた。これは小集団体操によりADLにおいて具体的な類似の目標を持ち,同様の運動内容を実践的かつ反復的に実施することでADLはもとより運動機能においても一定の維持が出来たものと考えられる。しかし,今後,疾患や認知機能,性別等について検討が必要であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】小集団体操の取り組みを通じて各個人のADLの把握や具体的な目標設定を明確にし,より生活に密着した内容の機能訓練に取り組めることが出来,良好な成績が得られた。これは,在宅生活におけるQOLの向上へつながる一助となると考えられ,各事業所においてより専門性のある職員配置を通じてサービスの充実が必要であると考えられる。
【方法】対象は,通所介護を週1~2回利用する要支援・要介護高齢者14人(男性2名,女性12名,年齢:88.3±3.9歳)とした。介護度の内訳は,要支援1が3名,要支援2が3名,要介護1が5名,要介護2が3名であった。小集団体操は理学療法士等が特に入浴,排泄,移動動作において類似の目標を持ち同様の運動内容が設定された5人以下の小集団に対して,実践的かつ反復的に集団体操を行った。運動機能検査は,上肢機能の指標として握力,下肢機能の指標としてTUG(Timed Up and Go Test)を行った。握力はスメドレー式握力計を用いて利き手の最大握力を立位にて測定し,TUGは椅子座位から3m前方のポールを回って着座するまでの時間をストップウォッチにて測定した。また,ADL評価は,FIM(Functional Independence Measure)の運動13項目について,自立度と介助度から1~7点で評価した。小集団体操介入前と介入6・12カ月後の各時期における握力,TUGとFIMの値の変化を比較検討した。なお,統計処理として,有意水準5%未満としてt検定を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には,ヘルシンキ宣言に沿って研究の趣旨及び目的の説明を行い,同意を得た。なお,本研究は医療法人健仁会倫理委員会の承認を受けて実施した。
【結果】握力の平均値では,介入前14.9±5.1kg,介入6ヶ月後15.5±4.1kg,12カ月後14.7±5.2であったが,各時期における有意差は認められなかった。TUGの平均値では,介入前18.4±6.8秒,介入6か月後15.2±5.9秒と有意に改善したが,介入12カ月後17.5±5.4秒と介入前の値にまで戻った。FIMの平均値では,介入前と介入12カ月後で,食事7.0±0.0→7.0±0.0,整容6.1±1.3→6.1±1.2,清拭5.1±1.8→4.9±1.7,更衣上6.2±0.9→6.2±0.9,更衣下5.6±1.2→5.6±1.2,トイレ動作6.1±1.5→6.1±1.3,排尿6.4±1.6→6.1±1.7,排便6.8±0.8→6.8±0.8,椅子移乗6.0±1.1→6.1±1.1,トイレ移乗5.9±1.1→6.0±1.0,浴槽移乗5.0±1.3→5.0±1.3,移動5.4±1.1→5.3±1.1,階段4.3±1.3→4.1±1.4と各項目でほとんど変化がみられなかった。
【考察】理学療法士等による小集団体操を12カ月間取り組んだ結果,握力は各時期において有意差が認められなかった。しかし,先行研究によると要介護高齢者の平均値は14kgであり,また健常高齢者では年2%低下するとの報告に対し,本研究では各時期において同様の値となり,かつ要介護高齢者でありながら介入後に有意差が認められず一定の維持をすることが出来たと考えられる。TUGについてPodsiadloらは「20秒以下で遂行できる高齢者はADLにおける移動課題が自立し,屋外移動のための十分な歩行速度がある」と述べていることから,本研究で20秒以内であったことより良好な状態が維持されたと考えられる。先行研究によると握力・TUG値の低下はADLの自立度低下の危険因子であるとされており,また健常高齢者のADL低下率は年2.5%低下するとの報告がある。これについても,結果からもわかるように握力およびTUGは維持され,FIMも0.55%低下に留まり,運動機能面ばかりでなくADL面においても良好な成績が得られた。これは小集団体操によりADLにおいて具体的な類似の目標を持ち,同様の運動内容を実践的かつ反復的に実施することでADLはもとより運動機能においても一定の維持が出来たものと考えられる。しかし,今後,疾患や認知機能,性別等について検討が必要であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】小集団体操の取り組みを通じて各個人のADLの把握や具体的な目標設定を明確にし,より生活に密着した内容の機能訓練に取り組めることが出来,良好な成績が得られた。これは,在宅生活におけるQOLの向上へつながる一助となると考えられ,各事業所においてより専門性のある職員配置を通じてサービスの充実が必要であると考えられる。