[1316] 骨盤前傾位と中間位でのスクワット動作における大腿直筋の筋長の変化
キーワード:二関節筋, 大腿直筋, 3次元動作解析
【はじめに,目的】
スクワット動作は閉鎖運動として代表的なエクササイズである。スクワット動作において骨盤肢位の変化は二関節筋である大腿直筋の機能が異なりそれを明らかにすることはこの動作での二関節筋の機能的役割の解明につながる。通常の二関節筋の収縮状況を起始と停止が近づくように運動する。しかし,大腿直筋のスクワット動作時の筋長の変化に焦点を当てた研究は渉猟した範囲に見当たらない。そこで骨盤前傾位と中間位でスクワット動作を行った際の大腿直筋長の変化を3次元動作解析機を用い明らかにすることを本研究の目的とした。
【方法】
被験者は下肢に手術の既往がなく踵部を挙上せずスクワット動作が可能な男性10名(年齢20~22歳,21.90±2.23歳)とした。課題動作の骨盤前傾位スクワットでは下腿と体幹の長軸が平行な状態で行い,骨盤中間位スクワットでは体幹が床に対して直立した状態で行った。被験者は両踵骨マーカー間を上前腸骨棘の幅に合わし立位姿勢をとる。次にスクワット動作を骨盤前傾位と骨盤中間位で3回ずつ行った。これを1セットとし4セット行った。スクワット中の運動力学データは赤外線反射マーカーを身体各標点に貼付し赤外線カメラ8台を用いた三次元動作解析装置VICON MX(VICON社製,Oxford)を使用した。三次元動作解析装置から得られた運動力学データと身長・体重からデータ演算ソフトBody Builder(VICON社製,Oxford)を用いて関節角度,大腿直筋全長,大腿直筋遠位部長,大腿直筋近位部長を以下の方法で算出した。上前腸骨棘と膝蓋骨の上面に貼付したマーカーとの距離を求め,これを大腿直筋全長の近似値とした(大腿直筋全長)。次に大転子と大腿骨外側上顆に貼付したマーカーを直線で結び,その直線の中点を大腿骨中点とする。大腿骨中点から上前腸骨棘と膝蓋骨上面に貼付したマーカーを結んだ線に対し垂線を引きその交点を求めた。交点から上前腸骨棘に貼付したマーカーまでの距離を近位部長,交点から膝蓋骨上面に貼付したマーカーまでの距離を遠位部長とした。スクワット動作時の屈曲動作相の膝関節屈曲15°,30°,45°,60°の各々の大腿直筋全長,近位部長,遠位部長を求めた。骨盤肢位と膝関節屈曲角度を要因として2元配置の分散分析を用いた。また,Tukey法を用い危険率5%をもって有意差ありとした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿っており研究の実施に先立ち広島国際大学医療研究倫理委員会の承認を得た。また,被検者に対して研究の目的と内容を十分に説明し文章による同意を得た後実施した。
【結果】
大腿直筋全長において骨盤前傾位スクワットでは膝関節屈曲角度が増加するにつれ短くなる傾向にあった(15°:454.47mm vs 30°:443.06mm vs45°:429.66mm vs60°:414.74mm)。しかし,骨盤中間位スクワットは屈曲角度による大腿直筋全長の変化はなかった(15°:456.01mm vs 30°:455.61mm vs 45°:450.56mm vs 60°:447.52mm)。両条件のスクワットともに大腿直筋近位部長は膝関節屈曲角度が増加するにつれ短くなり(骨盤前傾位15°:267.68mm vs 30°:246.84mm vs 45°:221.82mm vs 60°:196.58mm 骨盤中間位15°:271.01mm vs 30°:259.90mm vs 45°243.88mm:vs 60°:230.36mm),大腿直筋遠位部長は角度が増加するにつれ長くなった(骨盤前傾位15°:186.80mm vs 30°:196.22mm vs 45°:207.84mm vs 60°:218.16mm 骨盤中間位15°:185mm vs 30°:195.72mm vs 45°:206.68mm vs 60°:217.17mm)。
【考察】
本研究は骨盤前傾位スクワットでは膝関節屈曲角度が大きくなるとともに大腿直筋全長は短くなり,骨盤中間位スクワットは有意な長さの変化は認められなかった。骨盤中間位スクワットは大腿直筋全長の求心性収縮を伴う運動様式が行えていないのに対し骨盤前傾位でのスクワットは求心性収縮を伴った運動であることが明らかとなった。また,骨盤前傾位と中間位のスクワット時ともに大腿直筋近位部は短縮され遠位部は伸張された。本研究結果から骨盤前傾位・中間位スクワットともに大腿直筋の近位部では求心性運動が起き遠位部では遠心性収縮が起きていることが明らかになった。園部らは膝関節股関節同時屈曲の際に大腿直筋の近横断面積が最大になる位置から4cm近位に貼付した電極部での筋活動は大きくなり,8cm遠位に貼付した電極では筋活動は小さくなったと報告した。本研究においてスクワット動作時に大腿直筋の近位部が短くなり遠位部が長くなるという結果を反映している可能性が示唆される。
【理学療法学研究としての意義】
スクワット運動を行う際に骨盤肢位を変化させることは大腿直筋の機能をより特異的にトレーニングできる可能性を示唆しその点において本研究は理学療法研究として意義がある。
スクワット動作は閉鎖運動として代表的なエクササイズである。スクワット動作において骨盤肢位の変化は二関節筋である大腿直筋の機能が異なりそれを明らかにすることはこの動作での二関節筋の機能的役割の解明につながる。通常の二関節筋の収縮状況を起始と停止が近づくように運動する。しかし,大腿直筋のスクワット動作時の筋長の変化に焦点を当てた研究は渉猟した範囲に見当たらない。そこで骨盤前傾位と中間位でスクワット動作を行った際の大腿直筋長の変化を3次元動作解析機を用い明らかにすることを本研究の目的とした。
【方法】
被験者は下肢に手術の既往がなく踵部を挙上せずスクワット動作が可能な男性10名(年齢20~22歳,21.90±2.23歳)とした。課題動作の骨盤前傾位スクワットでは下腿と体幹の長軸が平行な状態で行い,骨盤中間位スクワットでは体幹が床に対して直立した状態で行った。被験者は両踵骨マーカー間を上前腸骨棘の幅に合わし立位姿勢をとる。次にスクワット動作を骨盤前傾位と骨盤中間位で3回ずつ行った。これを1セットとし4セット行った。スクワット中の運動力学データは赤外線反射マーカーを身体各標点に貼付し赤外線カメラ8台を用いた三次元動作解析装置VICON MX(VICON社製,Oxford)を使用した。三次元動作解析装置から得られた運動力学データと身長・体重からデータ演算ソフトBody Builder(VICON社製,Oxford)を用いて関節角度,大腿直筋全長,大腿直筋遠位部長,大腿直筋近位部長を以下の方法で算出した。上前腸骨棘と膝蓋骨の上面に貼付したマーカーとの距離を求め,これを大腿直筋全長の近似値とした(大腿直筋全長)。次に大転子と大腿骨外側上顆に貼付したマーカーを直線で結び,その直線の中点を大腿骨中点とする。大腿骨中点から上前腸骨棘と膝蓋骨上面に貼付したマーカーを結んだ線に対し垂線を引きその交点を求めた。交点から上前腸骨棘に貼付したマーカーまでの距離を近位部長,交点から膝蓋骨上面に貼付したマーカーまでの距離を遠位部長とした。スクワット動作時の屈曲動作相の膝関節屈曲15°,30°,45°,60°の各々の大腿直筋全長,近位部長,遠位部長を求めた。骨盤肢位と膝関節屈曲角度を要因として2元配置の分散分析を用いた。また,Tukey法を用い危険率5%をもって有意差ありとした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿っており研究の実施に先立ち広島国際大学医療研究倫理委員会の承認を得た。また,被検者に対して研究の目的と内容を十分に説明し文章による同意を得た後実施した。
【結果】
大腿直筋全長において骨盤前傾位スクワットでは膝関節屈曲角度が増加するにつれ短くなる傾向にあった(15°:454.47mm vs 30°:443.06mm vs45°:429.66mm vs60°:414.74mm)。しかし,骨盤中間位スクワットは屈曲角度による大腿直筋全長の変化はなかった(15°:456.01mm vs 30°:455.61mm vs 45°:450.56mm vs 60°:447.52mm)。両条件のスクワットともに大腿直筋近位部長は膝関節屈曲角度が増加するにつれ短くなり(骨盤前傾位15°:267.68mm vs 30°:246.84mm vs 45°:221.82mm vs 60°:196.58mm 骨盤中間位15°:271.01mm vs 30°:259.90mm vs 45°243.88mm:vs 60°:230.36mm),大腿直筋遠位部長は角度が増加するにつれ長くなった(骨盤前傾位15°:186.80mm vs 30°:196.22mm vs 45°:207.84mm vs 60°:218.16mm 骨盤中間位15°:185mm vs 30°:195.72mm vs 45°:206.68mm vs 60°:217.17mm)。
【考察】
本研究は骨盤前傾位スクワットでは膝関節屈曲角度が大きくなるとともに大腿直筋全長は短くなり,骨盤中間位スクワットは有意な長さの変化は認められなかった。骨盤中間位スクワットは大腿直筋全長の求心性収縮を伴う運動様式が行えていないのに対し骨盤前傾位でのスクワットは求心性収縮を伴った運動であることが明らかとなった。また,骨盤前傾位と中間位のスクワット時ともに大腿直筋近位部は短縮され遠位部は伸張された。本研究結果から骨盤前傾位・中間位スクワットともに大腿直筋の近位部では求心性運動が起き遠位部では遠心性収縮が起きていることが明らかになった。園部らは膝関節股関節同時屈曲の際に大腿直筋の近横断面積が最大になる位置から4cm近位に貼付した電極部での筋活動は大きくなり,8cm遠位に貼付した電極では筋活動は小さくなったと報告した。本研究においてスクワット動作時に大腿直筋の近位部が短くなり遠位部が長くなるという結果を反映している可能性が示唆される。
【理学療法学研究としての意義】
スクワット運動を行う際に骨盤肢位を変化させることは大腿直筋の機能をより特異的にトレーニングできる可能性を示唆しその点において本研究は理学療法研究として意義がある。