[1384] 養護学校の自立活動における調査研究
Keywords:養護学校, 重度身体障がい児, 自立活動
【はじめに,目的】文部科学省によると養護学校では「障がいによる又は生活上の困難を克服し,自立を図るために必要な知識技能を授ける」ことを目的として自立活動の時間が設けられている。しかし,養護学校教員の多くは医学的なリスク管理や健康管理において知識が不十分であるため自立活動の取り組み内容の妥当性は十分であるとは言えない。今回,我々は愛知県心身障がい者コロニー中央病院(以下コロニー)周辺に在る重度身体障がい児が在籍する養護学校における自立活動の取り組み方を調査し,その内容と課題について検討する。
【方法】対象施設は愛知県春日井市に設置されているコロニー周辺の肢体不自由養護学校2校(小牧養護学校/瀬戸養護学校)とした。2校の自立活動を担当している教員のうち,2010年~2013年で調査が可能施あった12名(男性3名,女性9名)に対し,自立活動の取り組み内容について聞き取り調査を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者にはインフォームドコンセントを行い,本研究の趣旨を了承しているものである。聞き取り調査では基本的に匿名化を行い,調査対象のプライバシーについては細心の注意を払い,研究目的以外に使用しないこととする。
【結果】小牧養護学校では自立活動の時間に日常生活動作練習やリラクゼーション,ストレッチ等を実施している。自立活動の時間は学年・障害の程度によって異なっている。教員が自立活動の時間にリハビリテーションに近いことを実施しているが,専門的に学習することはなく独学であることが多い。一部の保護者は養護学校教員にも専門性の高い医療行為を求めてくるケースもある。
瀬戸養護学校では自立活動の時間に心身のリラクゼーション,日常生活活動練習,補装具練習,巧緻動作練習,コミュニケーション練習等を行っている。児童個々にあわせて内容を工夫しているが,教員の経験や着眼点の相違によって指導内容の方向性が変わってくるため,Nrs・PT・OT等の専門職に授業へ参加してもらい,練習内容を定期的に確認してもらっている。
両校ともに共通していた点は,保護者の医療的知識は近年,非常に高くなっており,養護学校教員に求めてくる内容も同時に高くなってきている。2校の養護学校教員もPTやOT等に定期的な指導を受けているが,実用化していくことは個人差もあり,非常に困難な状況である。また,同時に医療依存度が高い児童も在学するようになり,教職員も対応の難しさを感じることがしばしばある。すべてを教職員で賄うのには限界がある。他にも学年進行等,担当教員が変わる際,前担当者の知識技術を最低限として求めてくることが多く学年進行も例年課題となっている。
【考察】近年,周産期医療の発展により重度障がい児の救命率が改善された。社会環境面についてもバリアフリー法や障がい者基本法などの法改正により重度身体障がい児者等の社会参加が推進されてきている。このことは教育現場にも影響しており,重度障がい児も養護学校などの教育機関に通学できるようになった。しかし,養護学校等の児童施設に所属している障がい児の障がいの程度が重度化している傾向にあるにも関わらず,Dr・Nrs等を含めた医療従事者の整備は十分とは言えない。医療依存度の高い児童が在学するようになっても,対応のほとんどは担当教員の裁量に任せられている。
今回,コロニー近隣の養護学校2施設の調査を実施した。在校生のほとんどは長期間においてコロニーを利用しており,保護者の専門的知識も豊富である。養護学校教員に対しても専門性の高い多様化した医療行為を求めてきている。しかし,医療依存度の高い障がい児に対し教職員のみで対応していくのはリスク面を考えると非常に危険を伴い限界もある。校内外の専門機関と調整を担っている特別支援教育コーディネーターの教員もPTを含む医療専門職との連携の必要性を感じている。しかし,教員の医療知識技術習得については専門職に講習を受けることや定期的に指導してもらうなど,対応は学校及び教員個人により様々であり,今回の調査結果からは医療機関と教育機関の連携が十分とは言い難い状況であった。
PTは病院から施設,施設から在宅へと活躍の場を広げてきたが,今回の調査から教育機関と医療機関の連携が十分でないことが浮き彫りとなった。今後,筆者らはPT・OTによる養護学校への関わり方について介入研究を進め,PT・OTと教育機関との連携の在り方を検討し報告する。
【理学療法学研究としての意義】肢体不自由を中心とする養護学校における自立活動時間の取り組み内容の現状調査を通して,そこに内在する問題の一端を明らかにできた。PT・OTが行う連携の在り方を検討する上で有効な情報と考える。
【方法】対象施設は愛知県春日井市に設置されているコロニー周辺の肢体不自由養護学校2校(小牧養護学校/瀬戸養護学校)とした。2校の自立活動を担当している教員のうち,2010年~2013年で調査が可能施あった12名(男性3名,女性9名)に対し,自立活動の取り組み内容について聞き取り調査を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者にはインフォームドコンセントを行い,本研究の趣旨を了承しているものである。聞き取り調査では基本的に匿名化を行い,調査対象のプライバシーについては細心の注意を払い,研究目的以外に使用しないこととする。
【結果】小牧養護学校では自立活動の時間に日常生活動作練習やリラクゼーション,ストレッチ等を実施している。自立活動の時間は学年・障害の程度によって異なっている。教員が自立活動の時間にリハビリテーションに近いことを実施しているが,専門的に学習することはなく独学であることが多い。一部の保護者は養護学校教員にも専門性の高い医療行為を求めてくるケースもある。
瀬戸養護学校では自立活動の時間に心身のリラクゼーション,日常生活活動練習,補装具練習,巧緻動作練習,コミュニケーション練習等を行っている。児童個々にあわせて内容を工夫しているが,教員の経験や着眼点の相違によって指導内容の方向性が変わってくるため,Nrs・PT・OT等の専門職に授業へ参加してもらい,練習内容を定期的に確認してもらっている。
両校ともに共通していた点は,保護者の医療的知識は近年,非常に高くなっており,養護学校教員に求めてくる内容も同時に高くなってきている。2校の養護学校教員もPTやOT等に定期的な指導を受けているが,実用化していくことは個人差もあり,非常に困難な状況である。また,同時に医療依存度が高い児童も在学するようになり,教職員も対応の難しさを感じることがしばしばある。すべてを教職員で賄うのには限界がある。他にも学年進行等,担当教員が変わる際,前担当者の知識技術を最低限として求めてくることが多く学年進行も例年課題となっている。
【考察】近年,周産期医療の発展により重度障がい児の救命率が改善された。社会環境面についてもバリアフリー法や障がい者基本法などの法改正により重度身体障がい児者等の社会参加が推進されてきている。このことは教育現場にも影響しており,重度障がい児も養護学校などの教育機関に通学できるようになった。しかし,養護学校等の児童施設に所属している障がい児の障がいの程度が重度化している傾向にあるにも関わらず,Dr・Nrs等を含めた医療従事者の整備は十分とは言えない。医療依存度の高い児童が在学するようになっても,対応のほとんどは担当教員の裁量に任せられている。
今回,コロニー近隣の養護学校2施設の調査を実施した。在校生のほとんどは長期間においてコロニーを利用しており,保護者の専門的知識も豊富である。養護学校教員に対しても専門性の高い多様化した医療行為を求めてきている。しかし,医療依存度の高い障がい児に対し教職員のみで対応していくのはリスク面を考えると非常に危険を伴い限界もある。校内外の専門機関と調整を担っている特別支援教育コーディネーターの教員もPTを含む医療専門職との連携の必要性を感じている。しかし,教員の医療知識技術習得については専門職に講習を受けることや定期的に指導してもらうなど,対応は学校及び教員個人により様々であり,今回の調査結果からは医療機関と教育機関の連携が十分とは言い難い状況であった。
PTは病院から施設,施設から在宅へと活躍の場を広げてきたが,今回の調査から教育機関と医療機関の連携が十分でないことが浮き彫りとなった。今後,筆者らはPT・OTによる養護学校への関わり方について介入研究を進め,PT・OTと教育機関との連携の在り方を検討し報告する。
【理学療法学研究としての意義】肢体不自由を中心とする養護学校における自立活動時間の取り組み内容の現状調査を通して,そこに内在する問題の一端を明らかにできた。PT・OTが行う連携の在り方を検討する上で有効な情報と考える。