第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

福祉用具・地域在宅12

2014年6月1日(日) 10:25 〜 11:15 ポスター会場 (生活環境支援)

座長:田村茂(地域リハビリ支援室・タムラ)

生活環境支援 ポスター

[1453] 公共交通機関を利用して外出できる要支援及び軽度要介護高齢者の心身機能の特徴

今田樹志1, 鈴川芽久美2, 波戸真之介1, 林悠太1, 小林修1, 秋野徹1, 島田裕之3 (1.株式会社ツクイ, 2.人間総合科学大学, 3.国立長寿医療研究センター)

キーワード:要支援及び軽度要介護高齢者, 公共交通機関を利用した外出, 心身機能

【はじめに,目的】
外出頻度の減少,閉じこもりによる社会的交流の減少は,要介護状態に移行するリスク因子のひとつであり(渡辺,2005),さらに河野ら(2000)は地域在住高齢者の縦断研究により,高齢者の日常生活活動の自立度を維持していくためには,外出行動を多くとることが有益であると報告している。また鈴川ら(2009)は要介護認定を受けた高齢者においても外出の重要性を指摘し,身体機能との関連性について報告している。外出行動のうち公共交通機関を利用して外出できることは,旅行や買い物等のより多様な外出目的に対応でき,活動量の増進や社会的参加の拡大が期待できる。そこで本研究の目的は,公共交通機関を利用した外出に関連する心身機能を明らかにし,外出範囲の拡大を目的とした機能向上プログラム立案の一助とすることとした。
【方法】
対象は,通所介護サービスを利用する要支援1から要介護2までの高齢者2379名(男性661名,女性1718名,年齢83.0±6.5歳,要支援1:410名,要支援2:570名,要介護1:773名,要介護2:626名)であった。測定項目は,認知機能としてMental Status Questionnaire(MSQ)を測定し,0~2点を認知症疑いなし,3~10点を認知症疑いありに二値化(認知機能低下疑い無し:1,疑い有り:0としてダミー変数化)した。運動機能は握力,chair stand test(CST),開眼片足立ち検査(OLS),6M歩行速度,timed up & go test(TUG)を測定した。また,階段昇降能力はFIMを使用し,7~6点を自立,5~1点を非自立に二値化(自立群:1,非自立群:0としてダミー変数化)した。外出は,「バスや電車を使って移動できますか?」を面接により調査し,公共交通機関を使用した外出可能群と不可能群に分けた。統計学的解析は,各変数において単変量解析(x²検定,t検定,Mann-WhitneyのU検定)を行った。また,単変量解析において有意差が認められた変数を独立変数,公共交通機関を使用した外出可能群と不可能群(可能群:0,不可能群:1としてダミー変数化)を従属変数とした強制投入法による多重ロジスティック回帰分析を用いて,各独立変数のオッズ比を求めた。有意確率は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には,ヘルシンキ宣言に沿って研究の趣旨及び目的の説明を行い,同意を得た。なお,本研究は国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した。
【結果】
公共交通機関を使用した外出可能群は821名,不可能群は1558名であった。単変量解析の結果,性別では有意差が見られなかったが,それ以外の項目で可能群が有意に高い値を示した。また,多重ロジスティック回帰分析の結果,MSQ(オッズ比:0.38,95%CI:0.31-0.46),OLS(オッズ比:0.99,95%CI:0.98-1.00),6M歩行速度(オッズ比:0.58,95%CI:0.34-0.97),TUG(オッズ比:1.09 95%CI 1.06-1.12),階段昇降(オッズ比:0.68,95%CI:0.56-0.84)が有意に関連する変数として抽出された。
【考察】
多重ロジスティック回帰分析の結果から,公共交通機関を利用した外出にはMSQ,OLS,6M歩行速度,TUG,階段昇降能力に有意な関連が認められた。MSQは見当識や記憶等に関する認知機能障害を簡便な質問によって把握する検査である。見当識や記憶に障害がある場合,公共交通機関の利用が日常的ではない対象者は特に行程のイメージをしにくく,外出を躊躇することが想定される。またOLSやTUGはバランス障害の程度を反映する指標であるが,バスや電車を利用する際には平坦とは限らない環境下において乗降,立位,座位といった動作をとる必要があり,バランス機能が低下しているとそれらの動作の遂行が困難になると考えられる。歩行速度や階段昇降能力に関しては先行研究においても外出との関連性が報告されており,本研究においても先行研究を支持する結果となった。一方で多重ロジスティック回帰分析で有意差が認められなかったのは握力とCSTであった。高齢者における機能訓練において頻繁に実施される筋力トレーニングではあるが,外出範囲の拡大を目的とする場合には今回有意な関連が認められた心身機能の評価を行い,低下している機能を確認しプログラムを立案することの重要性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究から,公共交通機関の使用にはMSQ,OLS,歩行速度,TUG,階段昇降能力が関与することが示唆された。高齢者の外出機会を向上するためにこれらの機能の評価は有益な情報となり得る。