第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

その他3

2014年6月1日(日) 12:15 〜 13:05 ポスター会場 (生活環境支援)

座長:藤井智(横浜市総合リハビリテーションセンター理学作業療法課)

生活環境支援 ポスター

[1602] 終末期リハビリテーションにおける理学療法士の意識調査

臼居優1, 青木淳1, 武田優1, 白濱勲二2 (1.医療法人社団哺育会桜ヶ丘中央病院, 2.神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科)

キーワード:終末期リハビリテーション, 精神的ケア, QOL

【はじめに,目的】
終末期リハビリテーション(以下終末期リハ)とは,大田によると「加齢や障害のため自立が期待できず,自分の力で身の保全をなしえない人々に対して,最期まで人間らしくあるように医療・看護・介護とともに行うリハビリテーション活動」と定義されている。しかし,各セラピストにより終末期の定義,終末期に対する意識が異なる印象がある。本研究の目的は,理学療法士(以下PT)がどのように終末期リハを理解しているのかを明らかにすることであり,当院グループ内の神奈川県内関連病院及び施設に質問紙調査を実施したので報告する。
【方法】
対象は神奈川県内関連病院及び施設(4病院・7施設),166名のPTに郵送法による自記式及び選択式による質問紙調査を実施した。調査は2013年1月~2月に実施した。質問項目は,「終末期リハを患者様に対し提供する場合,特に何に重点をおくか」,「終末期リハの患者様に対する具体的介入方法」を含む8つに対して回答してもらった。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には本研究の趣旨と目的を文書にて説明。回答をもって同意とみなし,発表においては個人を特定できないように配慮した。
【結果】
回答数は全施設,117名から回答を得た(回収率70.5%)。職種経験年数は10年以上が3.4%,5年以上10年未満が29.1%,1年以上~5年未満が67.5%であった。最も治療で重要と考えているのは,精神的な支援・関わり83.8%であった。また,具体的介入方法は疼痛軽減,ポジショニング,本人・家族の希望に沿う,呼吸機能の順で多かった。しかし,「どのようなニーズがあるのか,患者様はどのようなことをして欲しいと思っているのか」,「心得や意義,家族へのフォローなど,何を優先したら良いのか」等,重点・具体的介入方法を選択できない回答もみられた。
【考察】
本研究で明らかになったのは,終末期リハの患者様の治療を行ううえで精神的な支援・関わり方が最も重要であると考えている事が分かった。また,疼痛軽減,ポジショニングなどの介入方法が多いことが分かった。しかし,患者様・家族とどういった関わりをしていくのか,介入方法や内容などに悩んでいると回答した人も多くみられ,終末期リハの治療アプローチが確立されていない面もみられた。大田によると,終末期リハの患者様に対する評価は死後の状態を意識して,ご遺体の状態が身体としてきれいであるか,死の姿としても尊厳が保たれているだろうか,といった視点から見ていくと報告している。今後は,尊厳あるケアを受けられる状態にする,身体として人間らしくある状態に整えていく,という考え方をもって介入していくことが必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究によりPTの終末期リハに対する意識は高いものの,どのように患者様に関わっていけば良いのか分からないことが明らかとなった。今後は,この結果を踏まえ院内での患者様の情報の共有化を進めることと,ガイドラインに則した関わり方等の情報提供をしていきたい。