第49回日本理学療法学術大会

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特別講演

2014年5月30日(金) 15:20 〜 16:40 第2会場 (1F メインホール)

司会:島田裕之(国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター)

[2003] いつまでも若々しく生きるために

白澤卓二 (順天堂大学大学院加齢制御医学講座)

要旨:双生児の比較研究から,個人の寿命を規定している遺伝要因は25%で残りの75%は環境要因と報告されている。環境要因の中でも食事が重要であるが,動物の寿命延伸のための唯一の確立された方法はカロリー制限である。これまでに,線虫,ショウジョウバエ,マウス,魚,原生動物など様々な動物種で寿命延伸効果が報告されている。実際,ネズミをカロリー制限した実験でも,最終的には動物の寿命が3-4割延長している。ヒトでも適正なカロリーコントロールが生活習慣病全般の予防につながること,過剰摂取が生活習慣病の発症,ガンの発症につながっていることが科学的に明らかにされている。最近,米国で行われている霊長類であるアカゲザルを用いたカロリー制限の介入研究が報告されているが,ヒトでのカロリー制限の寿命延長効果を考察するうえで大変貴重である。一方,寿命を制御する遺伝子の研究も多数報告されている。動物のゲノムには老化や寿命を制御している遺伝子が50個から100個程度存在することが明らかにされている。最近,マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ教授は生活様式により長寿遺伝子が活性化するメカニズムを明らかにした。ガレンテ教授の発見した長寿遺伝子であるサーチュイン遺伝子は全身の細胞の老化のプロセスを日々コントロールしていて,メタボリック症候群や2型の糖尿病のような生活習慣病の発症メカニズムにも関与していることが分かった。高齢期には認知症を予防することが重要であるが,地中海食にアルツハイマー病の予防効果があることが報告されている。また,日系米国人1,836人を対象とした大規模疫学調査Kameプロジェクトでは,週に3回以上野菜または果物ジュースを飲む人は,週1回未満の人に比べて,アルツハイマー病の発症リスクが76%低下していることが分かった。本講演では,健康寿命を延伸させるために食事などの生活習慣が重要であることを解説する。