第50回日本理学療法学術大会

講演情報

分科学会・部門 教育講演

理学療法管理部門 分科学会・部門 教育講演15

2015年6月6日(土) 18:40 〜 19:30 第6会場 (ホールD7)

司会:千葉哲也(玉川病院 リハビリテーション科)

[K-15-1] 「社会人基礎力」がめざすもの

橋本賢二 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室)

経済産業省では,これからの職場や社会の中で多様な人々とともに仕事を行っていく上で必要な基盤的能力を「社会人基礎力」として提唱し,その育成の普及をはかっているところである。社会人基礎力は,「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力とこれらを構成する12の能力要素から成る。『前に踏み出す力』は,一人称で物事を捉え,自ら行動できる力を,『考え抜く力』は,決まった答えを導き出すこと以上に,自ら課題提起し,解決のためのシナリオを描く自律的な思考力を,『チームで働く力』はグループ内の協調性だけに留まらす,多様な人々との繋がりや協働を生み出す力をそれぞれ示している。
こうした社会人基礎力を提唱した主な狙いは以下の2点である。
(1)「成長の針路」を示す社会人基礎力
人の成長においては,「現実を認識し,将来を見据える」中で,「目標を立て,実行し,内省する」,これを「さらに次の目標につなげ,成長のPDCAサイクルをまわしていく」ことが重要である。成長過程の中で,若者自身がその成長の目標とすべき「成長の針路」を示す,これが社会人基礎力の大きな目的のひとつである。
(2)人材育成における「対話の鍵」としての社会人基礎力
もうひとつ重要なのは「対話の鍵」として,教育の現場で学生と教員,関わる社会人の間で共有し,活用する視点である。目標を「言葉」にし,自ら意識することで「立ち戻って考える」ことができ,また,他者に共有することで「対話」が生まれ,「アドバイスやフィードバックを受ける」ことができる。「教える側」「関わる人々」「教わる若者」の間で活用される『対話』の促進,これが社会人基礎力育成事業を通じて実現したい教育の変革である。
今回の講演では,こうした社会人基礎力の概念を紹介するだけでなく,教育現場で実施されている取組等を交えて,産業界,特に医療現場における社会人基礎力の活用について考える。