[O-0059] 被殻出血における血腫の後外側タイプの出血進展方向と予後との関係
Keywords:被殻出血, CT画像, 予後予測
【はじめに,目的】
被殻は投射線維や多種の回路などが経由し,更に近傍にも多くの線維が通ることから被殻出血は臨床上多彩な症状を呈する。回復期を対象とした我々の調査では,Chungらの血管支配をもとに被殻出血を6分類した評価方法にて,被殻出血でも外側に血腫が広がるケースが約67%あまり占めている事が分かった。その歩行予後は概ね良好であるが,中には歩行自立に至らない症例も散見された。それらの内,血腫が後外側に広がる症例で歩行自立度にばらつきがみられた。そこで後外側タイプの更なる検討として,回復期でのComputed Tomography(以下;CT)画像を用いて松果体とハの字レベルにおける出血の進展方向を把握し歩行能力との関係について明らかにすることを目的とした。
【方法】
2008年~2014年に入院した被殻出血患者71名の中から後外側タイプの14名を抽出した。既往歴に脳血管疾患や整形外科疾患をもつ症例は除外した。後外側タイプの平均年齢,発症日から回復期リハビリテーション(以下;リハ)病棟入院時までの期間,退院時Functional Independent Measure(以下;FIM)移動および認知の点数,Brunnstrom stage(以下;BRS),体性感覚障害の有無,pushing現象の有無をScale for contraversive pushingにて確認した。更に後外側タイプをFIM移動の点数1~5点を独歩不可能群,6~7点を独歩可能群に分類した。
CT画像の観察部位は,回復期リハ病棟入院時の頭部CT画像における松果体とハの字レベルとした。松果体レベルでは被殻前方と後方,島前方と後方,内包後脚前部と後部,視床外側核群の計7部位とした。ハの字レベルでは,側脳室を基準に大脳縦裂から側頭骨まで長さの内側40%部位で内側と外側に2分割し,前後は側脳室前後径を3分割した前内側,中内側,後内側,前外側,中外側,後外側の計6部位の障害の有無を観察した。
統計学的分析は松果体とハの字レベルのそれぞれの部位で,独歩可能か否かをStatcel2にてフィッシャーの直接確率計算法を用いて2要因の関連性を検定した。有意水準はいずれもp<0.05とした。
【結果】
後外側タイプの独歩不可能群は合計7名で,平均年齢61(47-76)歳,男性6名,女性1名,脳の損傷側は右2名,左5名で,発症から回復期リハ病棟入院時までの期間は39.9±13.3日,FIM移動点数は2.9±1.2点,FIM認知点数は25.6±6.0であった。BRSはII43%,III57%であった。感覚障害は86%,pushing現象は43%にみられた。独歩可能群は合計7名で,平均年齢55(39-73)歳,男性3名,女性4名,脳の損傷側は右4名,左3名で,発症から回復期リハ病棟入院時までの期間は19.4±4.1日,FIM移動点数は6.7±0.5点,FIM認知点数は33.3±3.8であった。BRSはII14%,III14%,V29%,VI43%であった。感覚障害は57%,pushing現象は14%にみられた。
独歩不可能群の損傷の割合は,松果体レベルは被殻前方6名(86%)で後方7名(100%),島前方1名(14%)で後方4名(57%),内包後脚前部3名(43%)で後部6名(86%),視床外側核群5名(71%),ハの字レベルは6部位全て6名(86%)であった。それに対して可能群は,松果体レベルは被殻前方5名(71%)で後方7名(100%),島後方2名(29%),内包後脚後部5名(71%),島前方と内包後脚前部と視床外側核群の損傷は観察されなかった。ハの字レベルは前内側と中内側と後内側と後外側では1名(14%),前外側と中外側は2名(29%)であった。すなわち可能群よりも不可能群の方が,松果体レベルにおける視床外側核群,加えてハの字レベルでの前内側・中内側・後内側・後外側で有意に損傷していた。
【考察】
視床外側核群の出血の有無に有意差を認め,後外側タイプでは被殻後方から内側への広がりが歩行予後に影響することが示唆された。視床外側核群は後外側腹側核と後内側腹側核での感覚障害,更に外側腹側核の障害では大脳-小脳神経回路の運動ループの問題から歩行予後不良に至ったと考える。
ハの字レベルまでの血腫の広がりは,被殻の中でも背側部の損傷を意味する。この部位を大脳基底核における運動ループが経由し,且つ同部位には身体部位局在の下肢領域が存在すると言われている。前内側・中内側・後内側部は放線冠を示し,前頭橋路,皮質網様体路や皮質脊髄路,一次体性感覚野などの影響が考えられる。加えて後外側部の出血は,視床後外側核から上頭頂小葉及び楔前部への線維も障害され,ボディーイメージや姿勢定位の障害も歩行予後不良の一因子となったと考える。
【理学療法学研究としての意義】
後外側タイプは被殻後方から視床外側核群に至る内側方向,且つハの字レベルまでの出血の進展を確認することで予後予測に繋がると考える。
被殻は投射線維や多種の回路などが経由し,更に近傍にも多くの線維が通ることから被殻出血は臨床上多彩な症状を呈する。回復期を対象とした我々の調査では,Chungらの血管支配をもとに被殻出血を6分類した評価方法にて,被殻出血でも外側に血腫が広がるケースが約67%あまり占めている事が分かった。その歩行予後は概ね良好であるが,中には歩行自立に至らない症例も散見された。それらの内,血腫が後外側に広がる症例で歩行自立度にばらつきがみられた。そこで後外側タイプの更なる検討として,回復期でのComputed Tomography(以下;CT)画像を用いて松果体とハの字レベルにおける出血の進展方向を把握し歩行能力との関係について明らかにすることを目的とした。
【方法】
2008年~2014年に入院した被殻出血患者71名の中から後外側タイプの14名を抽出した。既往歴に脳血管疾患や整形外科疾患をもつ症例は除外した。後外側タイプの平均年齢,発症日から回復期リハビリテーション(以下;リハ)病棟入院時までの期間,退院時Functional Independent Measure(以下;FIM)移動および認知の点数,Brunnstrom stage(以下;BRS),体性感覚障害の有無,pushing現象の有無をScale for contraversive pushingにて確認した。更に後外側タイプをFIM移動の点数1~5点を独歩不可能群,6~7点を独歩可能群に分類した。
CT画像の観察部位は,回復期リハ病棟入院時の頭部CT画像における松果体とハの字レベルとした。松果体レベルでは被殻前方と後方,島前方と後方,内包後脚前部と後部,視床外側核群の計7部位とした。ハの字レベルでは,側脳室を基準に大脳縦裂から側頭骨まで長さの内側40%部位で内側と外側に2分割し,前後は側脳室前後径を3分割した前内側,中内側,後内側,前外側,中外側,後外側の計6部位の障害の有無を観察した。
統計学的分析は松果体とハの字レベルのそれぞれの部位で,独歩可能か否かをStatcel2にてフィッシャーの直接確率計算法を用いて2要因の関連性を検定した。有意水準はいずれもp<0.05とした。
【結果】
後外側タイプの独歩不可能群は合計7名で,平均年齢61(47-76)歳,男性6名,女性1名,脳の損傷側は右2名,左5名で,発症から回復期リハ病棟入院時までの期間は39.9±13.3日,FIM移動点数は2.9±1.2点,FIM認知点数は25.6±6.0であった。BRSはII43%,III57%であった。感覚障害は86%,pushing現象は43%にみられた。独歩可能群は合計7名で,平均年齢55(39-73)歳,男性3名,女性4名,脳の損傷側は右4名,左3名で,発症から回復期リハ病棟入院時までの期間は19.4±4.1日,FIM移動点数は6.7±0.5点,FIM認知点数は33.3±3.8であった。BRSはII14%,III14%,V29%,VI43%であった。感覚障害は57%,pushing現象は14%にみられた。
独歩不可能群の損傷の割合は,松果体レベルは被殻前方6名(86%)で後方7名(100%),島前方1名(14%)で後方4名(57%),内包後脚前部3名(43%)で後部6名(86%),視床外側核群5名(71%),ハの字レベルは6部位全て6名(86%)であった。それに対して可能群は,松果体レベルは被殻前方5名(71%)で後方7名(100%),島後方2名(29%),内包後脚後部5名(71%),島前方と内包後脚前部と視床外側核群の損傷は観察されなかった。ハの字レベルは前内側と中内側と後内側と後外側では1名(14%),前外側と中外側は2名(29%)であった。すなわち可能群よりも不可能群の方が,松果体レベルにおける視床外側核群,加えてハの字レベルでの前内側・中内側・後内側・後外側で有意に損傷していた。
【考察】
視床外側核群の出血の有無に有意差を認め,後外側タイプでは被殻後方から内側への広がりが歩行予後に影響することが示唆された。視床外側核群は後外側腹側核と後内側腹側核での感覚障害,更に外側腹側核の障害では大脳-小脳神経回路の運動ループの問題から歩行予後不良に至ったと考える。
ハの字レベルまでの血腫の広がりは,被殻の中でも背側部の損傷を意味する。この部位を大脳基底核における運動ループが経由し,且つ同部位には身体部位局在の下肢領域が存在すると言われている。前内側・中内側・後内側部は放線冠を示し,前頭橋路,皮質網様体路や皮質脊髄路,一次体性感覚野などの影響が考えられる。加えて後外側部の出血は,視床後外側核から上頭頂小葉及び楔前部への線維も障害され,ボディーイメージや姿勢定位の障害も歩行予後不良の一因子となったと考える。
【理学療法学研究としての意義】
後外側タイプは被殻後方から視床外側核群に至る内側方向,且つハの字レベルまでの出血の進展を確認することで予後予測に繋がると考える。