[O-0394] 歩行補助具T-support typeS使用による脳卒中片麻痺患者の短下肢装具を用いた歩行因子への影響
キーワード:脳卒中, 片麻痺, 歩行速度
【はじめに,目的】
我々は第48回大会,第49回大会において脳卒中片麻痺患者の長下肢装具を用いたトレーニング時に歩行速度を向上させる補助具T-supportの効果について報告してきた。今回,我々は従来型のT-supportを改良し,短下肢装具を用いた歩行練習時に使用できるT-support typeS(以下typeS)を開発した。本研究の目的は,typeS使用による脳卒中片麻痺患者の短下肢装具装着下での歩行因子の変化を明らかにすることである。
【方法】
対象は当院入院中で短下肢装具を使用し見守りにて杖歩行が可能な脳卒中片麻痺患者6症例とした。typeS装着による歩行因子の変化を明らかにするため,10mの歩行路をtypeS装着時と非装着時の2度歩行し比較した。対象者の下肢Brunnstrom recovery stageの内訳はIIIが2名,IVが4名で,装具の種類は足継手にGait Solutionを用いた金属支柱付装具使用者が3名,Gait Solution Design使用者が3名であった。評価指標として10m歩行所要時間およびステップ数,川村義肢株式会社製Gait Judge Systemを用い計測されるイニシャルコンタクトからローディングレスポンスに装具に発生する底屈トルク値(ファーストピーク値,以下FP値)を測定した。統計学的分析にはウィルコクソンの符合順位検定を用い5%を有意水準とした。
【結果】
typeS装着により,6症例の平均10m歩行所要時間は29.9秒から26.0秒に短縮し,平均ステップ数が34.5歩から31.0歩に減少し,平均FP値が4.5Nmから5.6Nmに増大した。すべての因子が統計学的に有意な変化を示した。
【考察】
脳卒中片麻痺患者の歩行能力を低下させる最大の要因は,麻痺側立脚期に倒立振子が機能せず,身体重心の持ち上げが不十分となることであるとされる。よって下肢装具を用いた歩行トレーニングでは,装具の底屈制動力を発揮させ,立脚期に下腿を前傾させて身体重心をスムーズに持ち上げることが重要となる。先行研究においてGait Solution継ぎ手を用いた下肢装具の底屈制動力は足関節の底屈運動の速度に依存することが明らかになっている。このことから我々は歩行トレーニング時の歩行速度を向上させて麻痺側下肢に荷重させることで,相対的に荷重応答期の麻痺側足関節の底屈速度が向上し,倒立振子機能の獲得に繋がるトレーニングが可能になると考えている。しかし短下肢装具を用いた歩行トレーニングでは麻痺側の荷重応答期に速度を抑制する症例が多く,その結果装具の底屈制動力が十分に発揮されないことが多い。我々はこうした問題点を解決すべくtypeSを開発した。typeSは腰椎コルセットの前面に麻痺側下肢を牽引するためのゴムバンドが固定されており,バンドの下端は短下肢装具の下腿カフに巻き付ける構造となっている。装着肢の股関節が伸展位をとった際にゴムバンドが伸長され,股関節屈曲方向へとスイングを補助する。今回の検証から,装着によりストライド延長による歩行速度の向上が認められ,その結果FP値の有意な増大が見られた。FP値とはイニシャルコンタクトからローディングレスポンスにかけて装具の発生する底屈制動力を反映したものである。このことから,脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいてtypeSを装着することは,下肢装具の底屈制動力をより強く発揮させ,片麻痺患者の倒立振子機能の向上に寄与するトレーニングを可能とするものであると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
脳卒中片麻痺患者の短下肢装具を用いた歩行トレーニングにおいて,typeSを使用することで効率的なトレーニングが可能となることが明らかとなった。この新しい歩行補助具の効果を明らかにした本研究は,脳卒中片麻痺患者の理学療法を発展させる上で重要なものであると考える。
我々は第48回大会,第49回大会において脳卒中片麻痺患者の長下肢装具を用いたトレーニング時に歩行速度を向上させる補助具T-supportの効果について報告してきた。今回,我々は従来型のT-supportを改良し,短下肢装具を用いた歩行練習時に使用できるT-support typeS(以下typeS)を開発した。本研究の目的は,typeS使用による脳卒中片麻痺患者の短下肢装具装着下での歩行因子の変化を明らかにすることである。
【方法】
対象は当院入院中で短下肢装具を使用し見守りにて杖歩行が可能な脳卒中片麻痺患者6症例とした。typeS装着による歩行因子の変化を明らかにするため,10mの歩行路をtypeS装着時と非装着時の2度歩行し比較した。対象者の下肢Brunnstrom recovery stageの内訳はIIIが2名,IVが4名で,装具の種類は足継手にGait Solutionを用いた金属支柱付装具使用者が3名,Gait Solution Design使用者が3名であった。評価指標として10m歩行所要時間およびステップ数,川村義肢株式会社製Gait Judge Systemを用い計測されるイニシャルコンタクトからローディングレスポンスに装具に発生する底屈トルク値(ファーストピーク値,以下FP値)を測定した。統計学的分析にはウィルコクソンの符合順位検定を用い5%を有意水準とした。
【結果】
typeS装着により,6症例の平均10m歩行所要時間は29.9秒から26.0秒に短縮し,平均ステップ数が34.5歩から31.0歩に減少し,平均FP値が4.5Nmから5.6Nmに増大した。すべての因子が統計学的に有意な変化を示した。
【考察】
脳卒中片麻痺患者の歩行能力を低下させる最大の要因は,麻痺側立脚期に倒立振子が機能せず,身体重心の持ち上げが不十分となることであるとされる。よって下肢装具を用いた歩行トレーニングでは,装具の底屈制動力を発揮させ,立脚期に下腿を前傾させて身体重心をスムーズに持ち上げることが重要となる。先行研究においてGait Solution継ぎ手を用いた下肢装具の底屈制動力は足関節の底屈運動の速度に依存することが明らかになっている。このことから我々は歩行トレーニング時の歩行速度を向上させて麻痺側下肢に荷重させることで,相対的に荷重応答期の麻痺側足関節の底屈速度が向上し,倒立振子機能の獲得に繋がるトレーニングが可能になると考えている。しかし短下肢装具を用いた歩行トレーニングでは麻痺側の荷重応答期に速度を抑制する症例が多く,その結果装具の底屈制動力が十分に発揮されないことが多い。我々はこうした問題点を解決すべくtypeSを開発した。typeSは腰椎コルセットの前面に麻痺側下肢を牽引するためのゴムバンドが固定されており,バンドの下端は短下肢装具の下腿カフに巻き付ける構造となっている。装着肢の股関節が伸展位をとった際にゴムバンドが伸長され,股関節屈曲方向へとスイングを補助する。今回の検証から,装着によりストライド延長による歩行速度の向上が認められ,その結果FP値の有意な増大が見られた。FP値とはイニシャルコンタクトからローディングレスポンスにかけて装具の発生する底屈制動力を反映したものである。このことから,脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいてtypeSを装着することは,下肢装具の底屈制動力をより強く発揮させ,片麻痺患者の倒立振子機能の向上に寄与するトレーニングを可能とするものであると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
脳卒中片麻痺患者の短下肢装具を用いた歩行トレーニングにおいて,typeSを使用することで効率的なトレーニングが可能となることが明らかとなった。この新しい歩行補助具の効果を明らかにした本研究は,脳卒中片麻痺患者の理学療法を発展させる上で重要なものであると考える。