第50回日本理学療法学術大会

講演情報

口述

口述67

生体評価学4

2015年6月6日(土) 15:00 〜 16:00 第8会場 (ガラス棟 G402)

座長:樋口謙次(東京慈恵会医科大学附属柏病院リハビリテーション科)

[O-0510] 超音波診断装置を用いた足底腱膜の腱厚測定信頼性および腱厚と足部アーチとの関係

西岡健太郎1, 山本勇士1, 西坂勝1, 古丸文太2, 藤田俊文4, 足立克3 (1.足立病院リハビリテーション科, 2.足立病院臨床検査科, 3.足立病院整形外科, 4.弘前大学大学院保健学研究科)

キーワード:超音波画像診断, 足部アーチ, 足底腱膜

【はじめに,目的】
近年,超音波診断装置を用いることにより筋繊維の状態や筋厚の測定など,運動器に対する評価が簡便に定量化する事ができるようになった。またそれに伴い各測定の信頼性について良好な結果が確認されたと報告されている。超音波診断装置を用いた足底腱膜腱厚測定の信頼性についてもいくつかの報告は見られる。しかし信頼性を得た結果と足部縦アーチとの関連性についての報告はほとんどみられない。そこで本研究では,足底腱膜腱厚の検者内信頼性の検討と,その測定結果と足部アーチとの関係を明らかにすることを目的とする。

【方法】

対象は足関節・足部に機能障害のない健常男性8名(年齢33.6歳±8.8・身長171.9±6.5cm・体重73.3±10.6kg)左右16肢とした。超音波診断装置による足底腱膜腱厚の測定肢位は,腹臥位にて下腿前面に三角枕を使用し軽度膝関節屈曲位とし,足関節底背屈・回内外中間位とした。測定部位は踵部にプローブを当て踵骨隆起を確認し足底腱膜付着部より5mm遠位部での腱厚を測定した。検者にはモニター上の測定値が見えないようにブラインドした上で,静止画像上に腱厚をマーキングし,第三者が数値を記録した。測定は2回行い,1回目と2回目の測定間隔を10分以上あけて実施した。検者は理学療法士1名とした。なお測定は超音波診断装置(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製LOGIQ S7 Expert)を用いリニア式プローブ(6-15MHz)を使用しBモードにて撮影した。足部アーチの評価として,舟状骨高を足長で除したアーチ高率を算出した。統計学的解析はR2.8.1を用いた。足底腱膜腱厚測定における検者内信頼性については級内相関係数(以下ICC)(1,1)(1,2)を算出した。また,Spearman-Brownの公式により高い信頼性(ICC0.9以上)を得るために必要な測定回数を算出した。足底腱膜腱厚と足部アーチにおける関連性については,2回測定した足底腱膜腱厚の平均値とアーチ高率においてSpearmanの相関係数を用い分析した。
【結果】足底腱膜腱厚測定値の結果,1回目2.2±0.7mm 2回目2.4±0.5mmでありICC(1,1)0.78(95%信頼区間0.49~0.92)ICC(1,2)0.88(95%信頼区間0.66~0.96)であった。またSpearman-Brownの公式により算出された値はk=2.5であった。足部アーチ高率は17.0±2.5%であり足底腱膜腱厚とアーチ高率における相関係数はr=0.34であった。

【考察】
腱厚測定のICCに関してはICC(1,1)0.78 ICC(1,2)0.88となり,本研究にて足部アーチ高率との比較に用いた腱厚2回測定の平均値は信頼性の高い値であったと考えられる。また,超音波診断装置に熟練していない場合は,Spearman-Brownの公式より算出された数値より(k=2.5)測定を3回実施し平均値を用いたほうがより信頼性の高い値となる事が示唆された。足底腱膜腱厚と足部アーチ高率における関連性については有意な相関がみられなかった。足部アーチ高率の算出には足長と舟状骨高の測定が必要である。本研究においては舟状骨高の測定を立位両側荷重位にて実施,腱厚測定を腹臥位非荷重にて実施した。これにより足底腱膜に対し荷重による外力が働き,その影響により足底腱膜腱厚の状態が変化する可能性も考えられた。そのため今後は,非荷重位での足部アーチ高率の算出方法や荷重位での足底腱膜腱厚測定方法を思考し,より詳細に足底腱膜腱厚と足部アーチ高との関連性について再検討を行い臨床での評価や治療に結び付けたいと考える。

【理学療法学研究としての意義】
これまで超音波診断装置を用いた足底腱膜腱厚測定については,足底腱膜炎などに対する症状把握に有用との報告があった。これに加えて本研究結果でも高い信頼性および,より精度の高い測定値を得るための測定回数を提示できたことは臨床上意義のある研究といえる。