[O-0600] 頸椎変性疾患に対する力学的評価による運動療法の効果
キーワード:頸椎変性疾患, 力学的評価, 運動療法
【はじめに】
近年,情報テクノロジーやコンピューターの急激な発展に伴い,頸部障害の発生頻度が増加しており,科学的な運動療法の検証が必要である。本邦では頸椎疾患に対する薬物,装具,物理療法等の報告は散見されるが運動療法等に関する報告はみられない。本研究の目的は,頸椎変性疾患患者に対し,McKenzie法の理論に基づいた力学的評価による運動療法の効果について,症状,ROM,日常生活機能,心理面を経時的に調査し,またそれらに影響する因子を分析することである。
【方法】
対象は,2013年7月より2014年6月までの期間で,頸部痛及び上肢帯の疼痛・痺れ等の症状で頸椎疾患の診断を受けた427例中,理学療法を処方され,追跡可能であった45例である。除外基準は,原因が明らかな急性発症例,事故後の頸椎疾患等とした。診断名の内訳は,頸椎症性神経根症18例,頸椎椎間板ヘルニア16例,変形性頸椎症8例,頸椎症性脊髄症3例である。
本研究のデザインは,縦断研究(Prospective,Open Blinded-Endpoint)とした。評価測定の検者は,演者所属施設の理学療法士12名,作業療法士2名とした。
基本情報として問診,カルテより年齢,性別,罹病期間,職業,頸椎アライメントの情報を確認した。評価項目は,頸部自動ROM,Neck Disability Index(NDI),JOACMEQ(VASを含む),SF8とし,リハ初回時,1週間後,1ヶ月後,2ヶ月後,3ヶ月後の推移を調査した。
運動療法は,力学的評価方法に従い,頸部の反復運動,姿勢保持等の評価からDirectional Preference(DP:症状緩解が得られる運動方向)を確認し,DP方向への反復運動によるセルフエクササイズ(5-6回/2時間おき)と,必要に応じて自身でoverpressureを加えることを指導した。姿勢指導については,全例指導した。
統計解析は,治療経過の差の検定には,線形混合モデル(mixed effect model for repeated measures:MMRM)を適用し,主効果が有意な水準間に対しては多重比較法として,対応のあるt検定を適用しBonfferoni法で修正した。治療経過に及ぼす影響について,評価項目の各時期における変化値を従属変数とし,治療に関する情報としてセルフエクササイズ回数,薬物療法・ストレッチ併用の有無,通院回数を独立変数としてステップワイズ法による重回帰分析で解析し,影響がみられた項目を共変量として,MMRMを適用後,主効果が有意な水準間に対しては多重比較法で検定した。また3ヶ月後の結果で評価項目の改善値を従属変数,基本情報を独立変数として,ステップワイズ法による重回帰分析で解析した。解析にはR2.8.1(CRAN,freeware)及びSPSS version 21.0を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
DPで,伸展方向の運動であるRetraction,Retraction+伸展の件数は,全体の86.7%であった。
頸部自動ROM,頸部・上肢症状のVASは,初回と比較して1週間後から,NDIのサブスケール,JOACMEQの頸椎機能は,1ヵ月後から有意な改善が得られた。SF-8は,身体的健康度が,初回と比較して1ヶ月後以降有意な改善が得られ,可及的にその他の下位尺度に有意な改善が得られた。
重回帰分析,共変量を設定したMMRMの結果,伸展ROMの経過において,薬物療法の有無が影響していた。3ヶ月後において,伸展ROM,頸部VAS,SF-8の日常役割機能の改善に対して頸椎アライメント,デスクワークが影響していた。
【考察】
本研究で,頸椎変性疾患に対して力学的評価による運動療法を施行した結果,治療開始1週間後から頸部に関する症状,ROMが回復し,次いで日常生活機能,心理面が可及的に回復することがわかった。ただし,伸展自動ROMの経過に薬物療法が影響しており,必要に応じて薬物療法での疼痛コントロールを併用することで良好な治療成績が得られると考える。また,頸部障害の原因について,3カ月後の頸部の症状,ROM,心理面に,デスクワーク,頸椎アライメントの影響がみられたことから,日常的な頸椎前傾の不良姿勢が影響したと考える。
【理学療法学研究としての意義】
頸椎変性疾患に対し運動療法を実施し,症状,ROM,日常生活機能,心理面といった多面的評価の治療経過を調査し,その経過に影響を与える因子を分析することは,本邦での頸椎変性疾患に対する運動療法の有効性を示すために重要である。
近年,情報テクノロジーやコンピューターの急激な発展に伴い,頸部障害の発生頻度が増加しており,科学的な運動療法の検証が必要である。本邦では頸椎疾患に対する薬物,装具,物理療法等の報告は散見されるが運動療法等に関する報告はみられない。本研究の目的は,頸椎変性疾患患者に対し,McKenzie法の理論に基づいた力学的評価による運動療法の効果について,症状,ROM,日常生活機能,心理面を経時的に調査し,またそれらに影響する因子を分析することである。
【方法】
対象は,2013年7月より2014年6月までの期間で,頸部痛及び上肢帯の疼痛・痺れ等の症状で頸椎疾患の診断を受けた427例中,理学療法を処方され,追跡可能であった45例である。除外基準は,原因が明らかな急性発症例,事故後の頸椎疾患等とした。診断名の内訳は,頸椎症性神経根症18例,頸椎椎間板ヘルニア16例,変形性頸椎症8例,頸椎症性脊髄症3例である。
本研究のデザインは,縦断研究(Prospective,Open Blinded-Endpoint)とした。評価測定の検者は,演者所属施設の理学療法士12名,作業療法士2名とした。
基本情報として問診,カルテより年齢,性別,罹病期間,職業,頸椎アライメントの情報を確認した。評価項目は,頸部自動ROM,Neck Disability Index(NDI),JOACMEQ(VASを含む),SF8とし,リハ初回時,1週間後,1ヶ月後,2ヶ月後,3ヶ月後の推移を調査した。
運動療法は,力学的評価方法に従い,頸部の反復運動,姿勢保持等の評価からDirectional Preference(DP:症状緩解が得られる運動方向)を確認し,DP方向への反復運動によるセルフエクササイズ(5-6回/2時間おき)と,必要に応じて自身でoverpressureを加えることを指導した。姿勢指導については,全例指導した。
統計解析は,治療経過の差の検定には,線形混合モデル(mixed effect model for repeated measures:MMRM)を適用し,主効果が有意な水準間に対しては多重比較法として,対応のあるt検定を適用しBonfferoni法で修正した。治療経過に及ぼす影響について,評価項目の各時期における変化値を従属変数とし,治療に関する情報としてセルフエクササイズ回数,薬物療法・ストレッチ併用の有無,通院回数を独立変数としてステップワイズ法による重回帰分析で解析し,影響がみられた項目を共変量として,MMRMを適用後,主効果が有意な水準間に対しては多重比較法で検定した。また3ヶ月後の結果で評価項目の改善値を従属変数,基本情報を独立変数として,ステップワイズ法による重回帰分析で解析した。解析にはR2.8.1(CRAN,freeware)及びSPSS version 21.0を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
DPで,伸展方向の運動であるRetraction,Retraction+伸展の件数は,全体の86.7%であった。
頸部自動ROM,頸部・上肢症状のVASは,初回と比較して1週間後から,NDIのサブスケール,JOACMEQの頸椎機能は,1ヵ月後から有意な改善が得られた。SF-8は,身体的健康度が,初回と比較して1ヶ月後以降有意な改善が得られ,可及的にその他の下位尺度に有意な改善が得られた。
重回帰分析,共変量を設定したMMRMの結果,伸展ROMの経過において,薬物療法の有無が影響していた。3ヶ月後において,伸展ROM,頸部VAS,SF-8の日常役割機能の改善に対して頸椎アライメント,デスクワークが影響していた。
【考察】
本研究で,頸椎変性疾患に対して力学的評価による運動療法を施行した結果,治療開始1週間後から頸部に関する症状,ROMが回復し,次いで日常生活機能,心理面が可及的に回復することがわかった。ただし,伸展自動ROMの経過に薬物療法が影響しており,必要に応じて薬物療法での疼痛コントロールを併用することで良好な治療成績が得られると考える。また,頸部障害の原因について,3カ月後の頸部の症状,ROM,心理面に,デスクワーク,頸椎アライメントの影響がみられたことから,日常的な頸椎前傾の不良姿勢が影響したと考える。
【理学療法学研究としての意義】
頸椎変性疾患に対し運動療法を実施し,症状,ROM,日常生活機能,心理面といった多面的評価の治療経過を調査し,その経過に影響を与える因子を分析することは,本邦での頸椎変性疾患に対する運動療法の有効性を示すために重要である。