[O-0687] 地域在住高齢者における単純課題および二重課題条件下での歩行速度および歩行周期変動と生活空間との関連
キーワード:生活空間, 二重課題, 高齢者
【はじめに,目的】二重課題条件下で歩行速度の低下や歩行周期変動の増加がみられる高齢者においては転倒リスクが高まることが報告されている。しかしながら,地域在住高齢者の二重課題条件下での歩行速度および歩行周期変動が生活空間と関連しているかについて調べた研究はみられない。
そこで本研究は,地域在住高齢者を対象として単純課題および二重課題条件下での歩行速度および歩行周期変動を評価し,1)二重課題条件にすることによる歩行速度および歩行周期変動の変化,2)単純課題・二重課題条件下での歩行速度・歩行周期変動と生活空間との関連性について明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は滋賀県長浜市に在住している高齢者190名(男性63名,女性127名,平均年齢67.3±5.0歳)とした。なお,測定に大きな支障を及ぼすほど重度の神経学的・整形外科的障害や認知障害を有する者は対象から除外した。歩行速度および歩行周期変動の評価は,できるだけ速く歩行させる最大努力歩行について,単純課題および二重課題の2条件で実施した。なお,二重課題では認知課題(語想起課題)をさせながら,できるだけ速く歩くように指示した。歩行路のスタート地点から2mおよび10m地点に光電管を設置して各地点の通過時間を計測し,2~10m間の歩行速度を算出した。また,多機能三軸加速度計(ベルテックジャパン製G-WALK)を腰部に装着し,ステップごとの踵接地時間を測定した。歩行開始から4~11歩目の8ステップ分の踵接地時間の平均値および標準偏差値から変動係数(Coefficient of variation;CV)を算出し(CV=標準偏差/平均×100),歩行周期変動の指標として用いた。生活空間の評価は,Bakerらによって開発されたLife-Space-Assessment(LSA)を用い,過去1ヵ月間の活動範囲,活動頻度および自立度から点数(120点満点)を算出した。
統計解析について,単純課題と二重課題の歩行速度および歩行周期変動の違いについて,対応のあるt検定を用いて分析した。生活空間(LSA)と歩行速度および歩行周期変動との関連については,Pearsonの相関分析を用いて検討した。なお有意水準は5%とした。
【結果】LSAのスコアは98.8±18.2点であった。単純課題における歩行速度は1.99±0.3m/s,歩行周期変動は4.57±2.7%であり,二重課題における歩行速度は1.72±0.3m/s,歩行周期変動は4.90±2.9%であった。単純課題と二重課題の歩行速度および歩行周期変動の違いについて分析した結果,歩行速度は二重課題条件において有意に減少したが,歩行周期変動では単純課題と二重課題との間に有意差はみられなかった。
生活空間(LSA)と歩行速度および歩行周期変動との関連について,単純課題においては歩行速度および歩行周期変動のいずれもLSAと有意な相関を認めなかった。二重課題において,歩行速度とLSAとの間には有意な相関(r=0.16)が認められたが,歩行周期変動とLSAとは有意な相関を認めなかった。
【考察】単純課題条件と二重課題条件を比較した結果,二重課題にすることによって歩行速度は有意に減少したが,歩行周期変動は変化しなかったことから,二重課題にしても歩行周期が不規則になることはないことが示唆された。生活空間(LSA)と歩行速度および歩行周期変動との関連について,単純課題では有意な相関は認められず,二重課題における歩行速度のみ生活空間と関連が認められた。虚弱な施設入所高齢者を対象とした我々の先行研究では,二重課題下での歩行速度や歩行周期変動は生活空間と関連がみられず,単純課題下での歩行速度および歩行周期変動が生活空間と関連することを報告した。一方,今回の結果から,地域在住高齢者では歩行周期変動は生活空間と関連しないこと,単純課題よりも二重課題条件下における歩行速度のほうが生活空間と関連することが示唆された。しかし,二重課題条件の歩行速度と生活空間との間の相関係数は0.16と低いことから,二重課題の歩行速度が生活空間に及ぼす影響は小さく,地域在住高齢者における生活空間には,その他の運動機能や精神心理的因子や環境因子など,さまざまな因子が関連していると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】本研究の結果,単純課題よりも二重課題条件下における歩行速度のほうが地域在住高齢者の生活空間と関連していることが示された。
そこで本研究は,地域在住高齢者を対象として単純課題および二重課題条件下での歩行速度および歩行周期変動を評価し,1)二重課題条件にすることによる歩行速度および歩行周期変動の変化,2)単純課題・二重課題条件下での歩行速度・歩行周期変動と生活空間との関連性について明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は滋賀県長浜市に在住している高齢者190名(男性63名,女性127名,平均年齢67.3±5.0歳)とした。なお,測定に大きな支障を及ぼすほど重度の神経学的・整形外科的障害や認知障害を有する者は対象から除外した。歩行速度および歩行周期変動の評価は,できるだけ速く歩行させる最大努力歩行について,単純課題および二重課題の2条件で実施した。なお,二重課題では認知課題(語想起課題)をさせながら,できるだけ速く歩くように指示した。歩行路のスタート地点から2mおよび10m地点に光電管を設置して各地点の通過時間を計測し,2~10m間の歩行速度を算出した。また,多機能三軸加速度計(ベルテックジャパン製G-WALK)を腰部に装着し,ステップごとの踵接地時間を測定した。歩行開始から4~11歩目の8ステップ分の踵接地時間の平均値および標準偏差値から変動係数(Coefficient of variation;CV)を算出し(CV=標準偏差/平均×100),歩行周期変動の指標として用いた。生活空間の評価は,Bakerらによって開発されたLife-Space-Assessment(LSA)を用い,過去1ヵ月間の活動範囲,活動頻度および自立度から点数(120点満点)を算出した。
統計解析について,単純課題と二重課題の歩行速度および歩行周期変動の違いについて,対応のあるt検定を用いて分析した。生活空間(LSA)と歩行速度および歩行周期変動との関連については,Pearsonの相関分析を用いて検討した。なお有意水準は5%とした。
【結果】LSAのスコアは98.8±18.2点であった。単純課題における歩行速度は1.99±0.3m/s,歩行周期変動は4.57±2.7%であり,二重課題における歩行速度は1.72±0.3m/s,歩行周期変動は4.90±2.9%であった。単純課題と二重課題の歩行速度および歩行周期変動の違いについて分析した結果,歩行速度は二重課題条件において有意に減少したが,歩行周期変動では単純課題と二重課題との間に有意差はみられなかった。
生活空間(LSA)と歩行速度および歩行周期変動との関連について,単純課題においては歩行速度および歩行周期変動のいずれもLSAと有意な相関を認めなかった。二重課題において,歩行速度とLSAとの間には有意な相関(r=0.16)が認められたが,歩行周期変動とLSAとは有意な相関を認めなかった。
【考察】単純課題条件と二重課題条件を比較した結果,二重課題にすることによって歩行速度は有意に減少したが,歩行周期変動は変化しなかったことから,二重課題にしても歩行周期が不規則になることはないことが示唆された。生活空間(LSA)と歩行速度および歩行周期変動との関連について,単純課題では有意な相関は認められず,二重課題における歩行速度のみ生活空間と関連が認められた。虚弱な施設入所高齢者を対象とした我々の先行研究では,二重課題下での歩行速度や歩行周期変動は生活空間と関連がみられず,単純課題下での歩行速度および歩行周期変動が生活空間と関連することを報告した。一方,今回の結果から,地域在住高齢者では歩行周期変動は生活空間と関連しないこと,単純課題よりも二重課題条件下における歩行速度のほうが生活空間と関連することが示唆された。しかし,二重課題条件の歩行速度と生活空間との間の相関係数は0.16と低いことから,二重課題の歩行速度が生活空間に及ぼす影響は小さく,地域在住高齢者における生活空間には,その他の運動機能や精神心理的因子や環境因子など,さまざまな因子が関連していると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】本研究の結果,単純課題よりも二重課題条件下における歩行速度のほうが地域在住高齢者の生活空間と関連していることが示された。