第50回日本理学療法学術大会

講演情報

口述

口述98

地域理学療法8

2015年6月7日(日) 10:50 〜 11:50 第8会場 (ガラス棟 G402)

座長:山田実(筑波大学大学院人間総合科学研究科)

[O-0733] 介護予防教室終了後にフォロー教室での運動を継続していない地域在住高齢者の筋機能の推移

後藤文彦1, 渡邊英弘1, 金田紘佳1, 和合恵理1, 石川達也1, 西尾さやか1, 小長野豊1, 井戸尚則1, 藤井啓介2, 岡山直樹3, 長谷川龍一4 (1.医療法人社団喜峰会東海記念病院リハビリテーション部, 2.筑波大学大学院人間総合科学研究科体育学専攻, 3.医療法人社団喜峰会東海記念病院整形外科, 4.中部大学生命健康科学部作業療法学科)

キーワード:介護予防, 地域在住高齢者, 筋機能の推移

【はじめに】本邦では,地域在住高齢者が要介護状態になる事を防ぐために介護予防事業が展開されている。介護予防事業の一つとして身体機能の維持・改善を目的とした運動教室が,各地で展開されるようになった。当院でも,地域在住高齢者を対象とした介護予防運動教室『さぼてんクラブ』を2012年から開催している。本教室は,運動器の機能の向上を目的に週1回,全11回の開催を1クールとしてレジスタンス運動を指導し,筋機能の向上を確認している。先行研究では,運動教室の期間が3~6か月程度に設定されたものが多く,その期間内での運動器の機能向上などの成果が報告されている。しかし,運動教室終了後のそれらの機能の推移については,維持したとするものや,低下したとするものなど統一した見解をみない。また,運動教室終了後の検討では,運動継続を目指したフォロー教室に参加している高齢者を対象に,運動器の機能が維持されているとする報告が多い。しかし,地域にはフォロー教室に参加できない高齢者も多く存在し,運動を継続していない高齢者を対象とした報告では,運動器の機能が低下したとの報告が多い。
【目的】本研究の目的は,当院で実施した介護予防運動教室『さぼてんクラブ』に参加後,フォロー教室に参加していない地域在住高齢者を対象に,運動教室前後と,教室終了後の評価会の3時点における,筋機能の推移を明らかにすることとした。
【対象】対象は,2012年9月から2014年7月までに開催した6回の『さぼてんクラブ』に参加した,セルフケアが自立している地域在住高齢者166名とした。このうち,2014年8月に実施した評価会にも参加し,修了者を対象としたフォロー教室には参加していない22名(男4名・女18名,平均年齢75.1±5.8歳)を分析対象者とした。
【方法】本教室は11回の教室開催を1クールとし,介入前後の2回の評価と9回の運動介入を実施した。1回90分間の教室は,ストレッチとゴムバンドを用いたレジスタンス運動を中心に実施した。1クールの1回目(以下;Pre)・11回目(以下;Post)を評価日として設定し評価を実施した。その後,教室終了1ヶ月から1年11ヶ月後に,評価会を実施し同一項目の評価を実施した(以下,Follow)。Pre,Post,Followの3時点において筋機能評価としてArm Curl(以下,AC)とChair Stand(以下,CS)を実施した。統計学的分析は,AC,CSの推移を,反復測定による分散分析法を用いて検討した。主効果が有意である場合はBonferroniの多重比較検定を実施し,統計学的有意水準は危険率5%とした。
【結果】ACの結果には,経時変化が認められた(Pre:20.9±5.9回,Post:24.7±4.1回,Follow:24.7±5.2回(p<0.01))。各水準ではPre-Post,Pre-Followの間で有意な差が認められた(p<0.01,p<0.01)が,Post-Followにおいては有意な差は認められなかった(p=1.00)。CSの結果には,経時変化が認められた(Pre:22.1±7.1回,Post:25.5±6.4回,Follow:26.8±7.5回(p<0.01))。各水準ではACと同様にPre-Post,Pre-Followの間で有意な差を認められた(p<0.05,p<0.01)が,Post-Followにおいては有意な差は認められなかった(p=0.60)。
【考察】フォロー教室に参加していない高齢者においても,運動教室終了後に実施したFollow時に,筋機能は低下することなく維持していた。筋力は,加齢に伴い低下するとされており,先行研究でも,運動教室終了後に改めて評価を実施した場合,筋力が低下すると報告されたものがある。しかし,本研究では筋機能が低下することなく推移しており,10週間程度の短期間の運動教室であっても,その後の機能維持に影響を与えた可能性があることが示唆された。しかし,本研究では,PostからFollowまでの期間にばらつきがあるため,今後,期間を考慮した検証が必要である。また,本結果は,運動教室そのものが,筋機能維持に寄与したのか,もしくは教室後の行動変容が影響したのか原因は不明である。そのため,今後,教室前後における生活機能の変化にも目を向けた検討が必要である。