第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター1

神経/脳損傷1

2015年6月5日(金) 11:20 〜 12:20 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0032] 重度感覚障害を呈する左片麻痺症例の起立動作改善の一症例報告

複合運動と複合感覚を用いた評価と治療

三上恭平 (登戸内科・脳神経クリニックリハビリテーション科)

キーワード:複合運動・感覚, 起立動作, 感覚障害

【目的】
理学療法で用いられる感覚検査は,単関節運動や触覚を個別に行う事が多いが,二関節以上の複合感覚(複合運動)検査も重要であることが述べられている(吉尾。2000)。今回,重度な感覚障害をみとめたが,複合運動および,複合運動と触圧覚の組み合わせ(複合感覚)検査で軽快する症例に,これらの感覚特性を含む治療を施行した。結果,起立動作と感覚機能に改善を認めたため以下に報告する。
【症例提示】
症例は脳出血後遺症より左片麻痺を呈した70歳代男性である。Stroke Impairment Assessment Setは26点。下肢感覚項目は0点と重度である。5回法による麻痺側下肢の位置覚,運動覚検査も0/5~2/5と重度であった。しかし股,膝関節の複合運動では運動覚5/5,位置覚3/5であり,膝,足関節の複合運動および足底の触圧覚の複合感覚では,運動覚3/5,位置覚1/5と軽快した。本症例の起立動作は健側に大きく荷重しており,起立直後の立位における立位側方傾斜角度(床との垂直線に対する両足部の中央と頭頂部を結ぶ線のなす角度)をImageJを用いて測定すると,10度健側に偏移していた。起立動作開始から立位までの所要時間(起立時間)は5.2秒であった。

【経過と考察】
介入は2単位,週1回。治療内容は臥位で股,膝関節の屈曲伸展の複合運動と,足底を接触させた端坐位で膝,足関節,足底の複合感覚課題を実施し,ともに足部の位置について解答を求めた。4週間後の立位側方傾斜角度は3度,起立時間は3.3秒に改善し,膝,足関節,足底の複合感覚も運動覚5/5,位置覚4/5に改善した。Fellmanらは視床から感覚野への入力経路には3野のみでなく,1野,2野にも直接経路があると報告している。本症例における複合運動や複合感覚情報処理には,局所の情報処理に関わる3野のみでなく,皮膚と深部感覚の統合に関わる1,2野も関わっていた可能性がある。複合運動や複合感覚を含めた評価が患者の行為改善のために必要である。