第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

調査研究 ポスター1

調査研究

2015年6月5日(金) 11:20 〜 12:20 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0077] 肝疾患患者における運動機能と筋肉量,血中アミノ酸の関係

~サルコペニア基準値の有効性~

草葉隆一1, 上島隆秀1, 時枝美貴1, 樋口妙1, 宮里幸1, 藤田努1, 阿波村龍一1, 根津智之1, 吉住朋晴2, 高杉紳一郎1,3, 前原喜彦2, 岩本幸英1,3 (1.九州大学病院リハビリテーション部, 2.九州大学大学院消化器・総合外科, 3.九州大学大学院整形外科)

キーワード:肝疾患, サルコペニア, BCAA

【目的】
近年,老年医学の分野では加齢に伴い筋肉量が減少するサルコペニアが注目されているが,肝疾患患者においては,骨格筋の維持や増量に重要な役割をする血中の総分岐鎖アミノ酸(BCAA)の低下により,年齢に関係なく筋肉量の減少を引き起こしやすい。本研究は,肝疾患患者の運動機能,筋肉量,血中アミノ酸を測定し,その関係性を調査することを目的とした。
【方法】
対象は,術前の肝疾患患者51名(男30名,女21名,62.1±14.1歳)。運動機能は,握力,歩行速度,膝伸展筋力の3項目とした。筋肉量は,インピーダンス法での骨格筋量(SMM)と,CT撮影による第3腰椎レベルでの骨格筋面積(SMA)を指標とした。血中アミノ酸は,BCAAとチロシンのモル比であるBTRとした。以上の項目を術前に評価し,年齢も含めて相関関係を調べた。また,対象をアジア人のサルコペニア基準(握力:男26kg未満,女18kg未満,歩行速度:0.8m/sec以下)で,sarco群13名(男7名,女6名,64.5±19.7歳),control群38名(男23名,女15名,61.3±11.7歳)に分け,t検定により有意差を調べた。
【結果と考察】
握力,膝伸展筋力は,SMM,SMAと強い正の相関を示した。歩行速度は,握力,膝伸展筋力,SMM,SMAと中等度の正の相関を示し,BTRと弱い正の相関を示した。
2群間(sarco/control)においては,握力(19.9±5.8/33.7±10.3kg),膝伸展筋力(67.1±22.9/124.4±54.7Nm),歩行速度(0.8±0.2/1.2±0.2m/sec),SMM(18.8±5.0/25.9±5.6kg),SMA(91.7±18.1/118.6±29.6cm2)で有意な差(P<0.01)を認めた。BTRは有意な差を認めなかったが,sarco群の平均値では4.3±1.8μmol/Lと基準の下限値(4.41μmol/L)を下回っていた。なお,年齢や性別による有意差は認めなかった。
以上より,肝疾患患者への運動機能評価は,筋肉量減少や血中内のBCAA低下を反映する指標になることが確認された。また,肝疾患では高齢者に限らずサルコペニアの基準が,術前の運動療法やBCAA投与を検討する判断材料になる可能性が示唆された。