第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

ポスター1

卒前教育・臨床実習2

2015年6月5日(金) 11:20 〜 12:20 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0361] 入試形態および面接点と定期試験成績との関係

吉澤隆志, 鈴木智裕 (八千代リハビリテーション学院理学療法学科)

キーワード:入試形態, 面接点, 定期試験成績

【はじめに,目的】
近年の入試形態としては,Admissions Office入試(以下,AO入試と略す),高校推薦入試(以下,推薦入試と略す),社会人入試,一般入試などが実施される。AO入試は,受験生の個性や学ぶ意欲を判断することができるとされる。しかし,学科試験が課されないため学力的な問題が指摘される。同様に,推薦入試や社会人入試においても,学科試験が行われない場合は学力面での懸念が残ることとなる。一方,ほとんどの入試において面接試験は実施される。これは,学科試験などの紙面上で測れない受験生の情意面を読み取ることが目的であると考えられる。
進級や国家試験合格を鑑みた際に,定期試験成績(以下,成績と略す)は非常に重要である。また,成績不良になる可能性がある学生が分かっていれば早期に対策を実施することができる。大学における先行研究として,AO入試入学者の成績は一般入試入学者よりも概して低かったとの報告がある。しかし,AO入試と一般入試だけでなく,推薦入試や社会人入試も含めた入試形態と成績との関係を調べた研究は見当たらない。同様に,面接点と成績との関係について十分に検討されているとは考えにくい状況がある。よって,本研究の目的は,入試形態および面接点と成績との関係を調べることである。
【方法】
対象は,某A専門学校理学療法学科学生97名(平均年齢22.2±6.5歳)とした。入試形態の分類としては,AO入試(25名),推薦入試(38名),社会人入試(13名),一般入試(21名)とした。推薦入試は高校生のみが受験可能,社会人入試は社会人のみが受験可能である。AO入試と一般入試は,どの年代でも受験可能である。面接は,全ての入試形態で行われる。面接は3名の試験官により実施される。主に情意領域に関する10項目(外見,態度など)について5段階の50点満点で評価する(5:非常に良い,3:普通,1:非常に悪い)。面接点については,3人の評価の合計点を算出した。成績は1年次前期結果を参照し,科目毎(『基礎科目(心理学,教育学など)』および『専門基礎科目(解剖学,運動学など)』)に偏差値化し平均値を算出した。
統計解析として,入試形態と成績との関係を一元配置の分散分析後に多重検定(Tukey-Kramer法)にて調べた。また,面接点と成績との関係を単回帰分析にて調べた。解析には統計解析ソフトウェアIBM SPSS Statistics V22.0(日本アイ・ビー・エム株式会社)を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
対象全体の成績は,49.7±7.0であった。入試形態ごとの成績は,AO入試48.8±7.6,推薦入試49.4±5.2,社会人入試51.0±6.9,一般入試49.1±8.2であった。また,対象全体の面接点は,104.0±13.1であった。
いずれの入試形態と成績との関係についても,有意差は見られなかった。面接点と成績との関係としては,面接点が高いほど成績も高かった(P<0.05)。
【考察】
近年は,各学校の入学生を確保したいという思惑と受験を早く終わらせたいという受験生の意識が重なり,入試の前倒し傾向が見られる。よって,以前は一般入試で受験していた受験生がAO入試や推薦入試を受験するようになってきていると考えられる。また,対象が在籍するのは専門学校であり,資格を取得するための強い意志を持った受験生が集まっていることも成績への影響がなかった要因であると考える。また,社会人入試の受験生については,現役生に比べて年齢を経ているため勉学への意欲が高く結果として成績に関して問題を生じていないと考える。
面接は,ほとんどの大学および専門学校の入試で実施される。面接点が高い受験生は情意面で優れていると考えられる。情意面で優れた学生は勤勉性や計画性に秀でており成績についても良好な結果を残すとの報告がある。教員としては,面接点が低かった学生に対し早期より授業を理解できているかを把握し,必要であれば個別指導や課題を課すなどの取り組みを行っていくことが重要であると考える。
本研究の限界として,入試形態ごとの人数に差があることおよび参照した成績に『専門科目(理学療法評価法,治療学など)』が入っていないことが挙げられる。これらの点については,今後の研究課題としたいと考える。
【理学療法学研究としての意義】
入学試験における面接点の結果において入学後の成績が予測されるので,入学後早期より当該学生への指導や勉強方法への介入が可能となると考える。