第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター2

神経/脳損傷2

2015年6月5日(金) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0042] 修正したジェスチャートレーニングが失行における意味性の錯行為の改善に有効であった一症例

信迫悟志1,2, 菅野安須加1 (1.東大阪山路病院リハビリテーション科, 2.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)

キーワード:失行, 錯行為, ジェスチャートレーニング

【目的】今回,道具使用において意味性の錯行為を呈した症例に対して,ジェスチャートレーニング(Smania,2006)を修正して実施した結果,良好な結果を得たので報告する。
【症例提示】85歳,女性,多発性脳梗塞。MRI所見にて両側前頭葉皮質と左側頭葉後部皮質に陳旧性梗塞が認められた。発症後1ヶ月の初期評価時,brunnstrom stage両上下肢手指VI,感覚障害なし。寝返り,起き上がり,座位保持,起立は自立,平行棒内歩行は軽介助。高次脳機能について,標準失語症検査にて超皮質性感覚失語と診断。標準高次動作性検査(SPTA)では,上肢・物品を使う動作(物品あり)の使用命令,動作命令にて,左右ともに修正誤反応率100%であったが,模倣については左右とも修正誤反応率0%であり,誤反応は全て意味性の錯行為であった。本症例はMRI所見より背側皮質視覚路は保たれており,動作では自動性や模倣は良好であるのに対して,腹側皮質視覚路上に病巣が存在し,道具の意味的知識は低下しており,実動作では意味性の錯行為を認めた。よって比較的良好な背側皮質視覚路を活性化し,腹側皮質視覚路を再建する治療的介入として,ジェスチャートレーニングの他動詞ジェスチャーの段階3を修正して実施した。元法では,一般的な道具の画像を提示し,その道具使用に相当するパントマイムを表出する課題であるが,今回はパントマイムを観察し,そのパントマイムに相当する道具を選択する課題に修正して実施した。
【経過と考察】ジェスチャートレーニングの正答率は,初回11%,2回目56%,3回目89%,4回目94%と向上し,4回目の介入後にはSPTAの上肢・物品を使う動作(物品あり)の使用命令,動作命令にて,左右ともに修正誤反応率0%となり,意味性の錯行為も消失した。修正したジェスチャートレーニングにより背側皮質視覚路が活性化され,腹側皮質視覚路への促通効果がもたらされたため,意味性の錯行為が消失したものと考える。