第50回日本理学療法学術大会

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2015年6月5日(金) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0188] サッカーのキック動作時における軸足側への荷重負荷に影響する要因

山根鉄平1, 三浦雅史2, 川口徹2 (1.医療法人社団石史山会札幌スポーツクリニック, 2.青森県立保健大学)

キーワード:サッカー, キック動作, 軸足

【はじめに,目的】
サッカー選手に多いスポーツ障害の一つである第5中足骨疲労骨折は,軸足での発症が多いという報告がある。キック動作はサッカー競技で最も特徴的かつ使用頻度の高い技術の一つであることから,キック動作時に軸足へ加わる荷重負荷を明らかにすることは,第5中足骨疲労骨折に対する理学療法や予防の一助となり得る。
第5中足骨疲労骨折の症例の特徴や発生要因として,下肢アライメントや下肢筋力が報告されている。これらの要因は,キック動作時の外側荷重にも影響している可能性が考えられるが,実際に検討した報告は見当たらない。また,我々は第48・49回の日本理学療法学術大会で,キック動作時の軸足はキックの種類によって前額面上での下腿の傾き(下腿傾斜角度)が異なり,その傾きが大きいキックでは動作中の前足部外側領域における足底圧(前足部外側足底圧)が大きいということを報告し,キック動作時の荷重負荷に関する示唆を得た。そこで本研究ではこれらの要因から,キック動作時の軸足へ加わる荷重負荷に影響する要因について検討した。
【方法】
対象は,健常な男子アマチュアサッカー選手13名とした。対象には軸足側を裸足,蹴り足側は室内用シューズを着用させ,課題動作を行った。課題動作は,床面に置いて静止した5号球のサッカーボールを4m先の的(1m×1m)に向かって全力でキックする動作とした。キック動作は,インサイド・インステップ・インフロントの3種類を利き足(キック動作に関して選手が主観的に得意とする側の下肢)で行った。3種類のキックの順番は無作為に決定した。
解析に用いる要因として,内側顆間距離,Leg-Heel angle,立位での内側縦アーチ高率,立位での足囲足幅比率,内側縦アーチ変化率,足幅変化率,股関節外転筋力,股関節内転筋力,足関節内がえし筋力,足趾把持力,下腿傾斜角度を独立変数として扱い,前足部外側足底圧を従属変数とした重回帰分析を行った。
統計学的解析には,統計解析ソフトウェアSPSS Statistics 19 for Windows(IBM社製)を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象の属性および身体組成は,年齢18.9±1.2歳,競技歴10.3±2.8年,身長171.8±6.0cm,体重60.5±6.2kgであった。
ステップワイズ法(変数増減法)による重回帰分析をキックの種類ごとに行った結果,インサイドでは立位での内側縦アーチ高率,下腿傾斜角度が選択され,重回帰式y=-3.143x1+1.337x2+137.057(y:インサイドの前足部外側足底圧,x1:立位での内側縦アーチ高率,x2:下腿傾斜角度)が得られた(R^2=0.26,p=0.089)。インステップでは股関節内転筋力,股関節外転筋力が選択され,重回帰式y=21.425x1+26.649x2-25.200(y:インステップの前足部外側足底圧,x1:股関節内転筋力,x2:股関節外転筋力)が得られた(R^2=0.75,p=0.0004)。インフロントでは股関節内転筋力,内側縦アーチ変化率が選択され,重回帰式y=25.470x1-2.556x2-3.567(y:インフロントの前足部外側足底圧,x1:股関節内転筋力,x2:内側縦アーチ変化率)が得られた(R^2=0.55,p=0.007)。
【考察】
インサイドの重回帰式は決定係数が低く,また有意でなかった。独立変数が外側荷重に影響を与える可能性のある要因であり,前回大会の報告で前足部外側足底圧が小さかったインサイドには影響が少なかったためと考えられ,他の要因を検討する必要がある。インステップとインフロントの重回帰式は決定係数が0.5以上であり,また有意であった。標準偏回帰係数の符号から,インステップでは,股関節内転・外転筋力の高い者ほど前足部外側へ重心をより大きく移動する可能性が示唆された。インフロントでは,股関節内転筋力の高い者ほど前足部外側へ重心をより大きく移動する可能性,内側縦アーチ変化率が少ない即ち内側縦アーチ保持能力が高い者ほど前足部外側への荷重負荷が少ない可能性が示唆された。実際にこれらの要因に対してアプローチした際,前足部外側足底圧がどのように変化するかは,今後検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
インステップとインフロントのキック動作では,軸足の外側荷重に股関節内転・外転筋力と内側縦アーチ変化率が影響し,これらの要因から前足部外側足底圧を予測できる可能性が示唆されたことから,本研究はサッカー選手の第5中足骨疲労骨折に対する理学療法や予防の一助となり得る。