[P1-C-0063] 高位頸髄損傷者の非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)への移行と在宅復帰後の5年経過
~咳のピークフロー(CPF)に着目して~
キーワード:高位頸髄損傷者, NPPV, CPF
【目的】近年,人工呼吸器依存高位頸髄損傷者に対する非侵襲的陽圧換気療法(以下NPPV)が注目され,脊髄損傷の急性呼吸不全から慢性呼吸不全に移行する換気補助手段の第一選択はNPPVである。NPPVによる呼吸管理は,気管内吸引が不要になり介助者を選ばずに外出する機会が増え,発声が可能になるなどQOLの向上への貢献は大きいが,まだ長期的な経過に関する理学療法分野での報告例は少ない。今回,気管切開での人工呼吸器管理(以下TPPV)からNPPVへ移行が成功し,在宅復帰後5年間の経過を観察した高位頸髄損傷者の理学療法を経験したので,その移行経過およびその後の呼吸管理について咳嗽能力に着目し報告する。
【症例提示】神経学的高位C1(AIS:C),男性,現在20歳台。受傷時,頸椎内固定術施行,TPPVによる人工呼吸器管理され,受傷後9か月に在宅復帰目的にて当院転院。
【経過と考察】当院転院後,土岐らによるTPPVからNPPVへの移行プログラムを採用し,受傷後9か月より気管切開での高容量一回換気量に設定する人工呼吸器管理(Stage1~3)を実施,受傷後12か月より気管切開を残したままインターフェイスを使用するNPPV導入(Stage4)を実施し,受傷後16か月より気管切開を閉鎖しNPPV移行(Stage5)し,受傷後18か月に自宅退院となった。咳嗽能力は,Stage4では咳のピークフロー(以下CPF)0L/minであったが,自宅退院時にはCPF330L/minに到達し自己喀痰可能になった。受傷後31か月後(在宅復帰1年3か月後)には日中のNPPV離脱に成功,夜間のみの使用になった。CPFの推移は,在宅復帰1年後290 L/min,2年後270L/min,3年後260L/min,4年後 320L/min,5年後280L/minであり,在宅復帰後5年間において,CPFは喀痰可能な270L/minを概ね保持していた。また,本症例では自己喀痰や発声によるコミュニケーションが可能になりQOLが向上する結果も得られ,NPPV移行を成功させるためには患者自身の努力と意欲も重要であった。
【症例提示】神経学的高位C1(AIS:C),男性,現在20歳台。受傷時,頸椎内固定術施行,TPPVによる人工呼吸器管理され,受傷後9か月に在宅復帰目的にて当院転院。
【経過と考察】当院転院後,土岐らによるTPPVからNPPVへの移行プログラムを採用し,受傷後9か月より気管切開での高容量一回換気量に設定する人工呼吸器管理(Stage1~3)を実施,受傷後12か月より気管切開を残したままインターフェイスを使用するNPPV導入(Stage4)を実施し,受傷後16か月より気管切開を閉鎖しNPPV移行(Stage5)し,受傷後18か月に自宅退院となった。咳嗽能力は,Stage4では咳のピークフロー(以下CPF)0L/minであったが,自宅退院時にはCPF330L/minに到達し自己喀痰可能になった。受傷後31か月後(在宅復帰1年3か月後)には日中のNPPV離脱に成功,夜間のみの使用になった。CPFの推移は,在宅復帰1年後290 L/min,2年後270L/min,3年後260L/min,4年後 320L/min,5年後280L/minであり,在宅復帰後5年間において,CPFは喀痰可能な270L/minを概ね保持していた。また,本症例では自己喀痰や発声によるコミュニケーションが可能になりQOLが向上する結果も得られ,NPPV移行を成功させるためには患者自身の努力と意欲も重要であった。