第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター13

運動器/肩関節

2015年6月6日(土) 11:25 〜 12:25 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0436] 広範囲腱板断裂によりリバース型人工肩関節全置換術を施行した一症例

小藤定1, 村西壽祥2, 小倉亜弥子1, 阪根寛1, 伊藤陽一3 (1.佐野記念病院, 2.大阪河﨑リハビリテーション大学, 3.大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学)

キーワード:RSA, 広範囲腱板断裂, リバース型人工肩関節全置換術

【目的】
平成26年4月よりリバース型人工肩関節全置換術(reverse total shoulder arthroplasty;以下RSA)が認可された。RSAの適応年齢は原則70歳以上であるが,広範囲腱板断裂再建術後に再断裂を繰り返したため,RSA施行となった症例を経験したので報告する。
【症例提示】
60歳男性である。平成19年,土木作業中の重量物運搬時に右肩の違和感を覚え当院受診し,右腱板断裂の診断を受け鏡視下腱板修復術の施行となる。翌年職業復帰するも,平成25年5月,就業中の重量物運搬により右肩の違和感再燃し,右腱板再断裂の診断を受け,同年6月に再び鏡視下腱板修復術を施行となる。同年11月のMRIにて再々断裂の診断を受ける。保存的加療にて理学療法継続するも疼痛は持続し,自動関節可動域や筋力に改善は認められず平成26年9月にRSAの施行となる。
【経過と考察】
術前他動肩関節可動域(以下ROM)は屈曲150°,外転150°,自動ROMは屈曲50°外転40°で,下垂位での等尺性筋力(アニマ社製μ-tasF100を使用,単位:kgf)は屈曲3.6(健側10.1),外転5.1(同10.3)であった。肩甲骨は挙上,過度な上方回旋位を呈していた。術後は外転装具にて4週間固定を行い,術後2日目から他動ROM運動と三角筋の等尺性運動を開始した。装具除去後は自動介助ROM運動を追加し,術後2ヶ月の他動ROMは屈曲135°,外転120°,自動ROMは屈曲80°外転80°で下垂位での等尺性筋力は屈曲8.2,外転10.9であった。肩甲骨は術前に比べ上方回旋の減少,挙上の増加が認められた。本症例は術前から三角筋の筋力低下と肩甲骨での代償が著明な症例であった。術後2ヶ月で肩関節屈曲,外転筋力は改善が見られるものの,自動ROMは依然として乏しい状態で,肩甲骨の位置異常も残存している。本邦におけるRSA術後の肩甲骨の位置に着目した報告は皆無であり,更なる三角筋筋力増強による肩関節自動可動域の改善と,肩甲骨位置の検討が必要である。