[P2-A-0487] 足底感覚入力が片脚立位姿勢制御に与える影響
足底感覚入力密度の違いに着目して
キーワード:姿勢制御, 足底感覚, 足趾把持筋力
【はじめに,目的】
人は安定した立位や歩行には足底からの正常な感覚入力が必要不可欠であり,姿勢調整はこれらの情報を基に行われる。足底には地面からの情報を受け取るメカノレセプターが多数存在しており,足底感覚情報や足趾把持筋力は静的および動的姿勢制御において重要とされる。本研究では,足底全体に対して2種類の感覚入力を加え,入力前・後の片脚立位時の重心動揺と二点識別感覚,足趾把持筋力を測定し,足底感覚入力が姿勢制御に及ぼす影響および入力の密度の違いによる影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,整形外科疾患のない大学生24名(男12名,女12名:年齢21.9±0.7歳)とし,無作為に3条件に割り振った。条件Aは,直径15mmのビー玉を,条件Bは,直径6mmのBB玉を敷き詰めた板の上で,開眼しメトロノーム(120歩/分)に合わせて1分間足踏みを行った。条件Cはコントロール群として足踏みの代わりに3分間の読書を行った。全条件において課題の実施前に,利き足での片脚立位時の重心動揺と母趾球と踵の二点識別覚,足趾把持力を2回測定し,各項目について平均値を算出し,実施後に,実施前と同様の項目を1回測定した。開眼片脚立位時の姿勢制御能力は,重心動揺計(アニマ社製GRAVICODER GS-11)を用いて測定し,得られた値のうち,総軌跡長,単位軌跡長,外周面積を分析の対象とした。足底感覚は,ノギスを用いて利き足の母趾球と踵の二点識別覚を評価した。足趾把持筋力は,ELECTRONIC DYNAMO METER(ヤガミ電子握力計ED-100N)を改造した足趾把持力測定器を用いて測定した。3条件における感覚入力前・後の重心動揺計測値,母趾球と踵の二点識別覚,足趾把持力について一元配置分散分析と多重比較検定を行った。また,条件A,Bにおける母趾球,踵の二点識別覚,足趾把持筋力の感覚入力前・後についてt検定を用いて比較した。統計処理にはSPSS16.0Jを用い,有意水準は5%とした。
【結果】
二点識別覚:条件Aにおいて,足底感覚入力前後で母趾球と踵に有意差は認められなかった。条件Bでは,母趾球の足底感覚入力前は11.3±1.2mm,入力後では9.2±1.9mmと有意に減少し,踵においては,足底感覚入力前は11.4±1.8mm,入力後では9.6±1.4mmと有意に減少した。(母趾球:p=0.019,踵:p=0.045)
足趾把持筋力:条件Aでは,足底感覚入力前は6.9±1.2kg,入力後では8.4±1.5kgと有意に増加した(p=0.039)が,条件Bでは有意差は認められなかった。
重心動揺計測値:足底感覚入力前では,総軌跡長,単位軌跡長,外周面積において条件A,B,Cの間に有意差は認められなかった。入力後では,総軌跡長において,条件A(96.0±16.4)と条件C(118.4±20.5)との間(p=0.036),条件B(90.5±10.3)と条件Cとの間(p=0.008)に有意差が認められた。単位軌跡長において,条件A(3.2±0.5)と条件C(3.9±0.7)との間(p=0.036),条件B(3.0±0.3)と条件Cとの間(p=0.007)に有意差が認められた。外周面積には,有意差は認められなかった。
【考察】
条件Bの母趾球と踵のみ感覚刺激入力前・後で有意差が認められたが,これは直径6mmのBB球を敷き詰めた板の上で足踏みしたことで足底感覚の閾値が減少したと考えられる。足底への機械的入力は下腿の筋肉を間接的に刺激するとされているが,足底感覚を促通させた条件Bでは足趾把持筋力への有意な上昇は得られなかった。密度が低いと足底への圧力も大きくなるため,直接足底筋への圧迫刺激が加えられたことで条件Aのみ感覚入力前・後で有意に足趾把持筋は増加したのではないかと考える。姿勢制御能力に関与する因子として,村田らは,開眼片脚立位での重心動揺と主要な下肢筋力,足部機能との関連を検討し,下肢筋力よりも足趾把持力と足底の二点識別覚の関連性が高いことを示しており,今回の実験でも同様の関連性がみられた。条件Bの方が総軌跡長と単位軌跡長の平均値が有意に減少し,外周面積は条件A,B共に有意差を認められなかった。このことは,重心の移動する範囲の大きさには違いが認められないが,条件Bの方が足底感覚入力後の重心の移動する範囲内を重心足圧中心が入力前と比べて安定して推移していたことが考えられる。密度が高い方が足底感覚を促通し,足底感覚情報がフィードバックしやすくなり,姿勢制御能力により影響を及ぼしたと考える。
【理学療法学研究としての意義】
姿勢制御における至適な足底感覚入力密度を明らかにすることにより,効果的な介入方法の開発につなげることができると考える。
人は安定した立位や歩行には足底からの正常な感覚入力が必要不可欠であり,姿勢調整はこれらの情報を基に行われる。足底には地面からの情報を受け取るメカノレセプターが多数存在しており,足底感覚情報や足趾把持筋力は静的および動的姿勢制御において重要とされる。本研究では,足底全体に対して2種類の感覚入力を加え,入力前・後の片脚立位時の重心動揺と二点識別感覚,足趾把持筋力を測定し,足底感覚入力が姿勢制御に及ぼす影響および入力の密度の違いによる影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,整形外科疾患のない大学生24名(男12名,女12名:年齢21.9±0.7歳)とし,無作為に3条件に割り振った。条件Aは,直径15mmのビー玉を,条件Bは,直径6mmのBB玉を敷き詰めた板の上で,開眼しメトロノーム(120歩/分)に合わせて1分間足踏みを行った。条件Cはコントロール群として足踏みの代わりに3分間の読書を行った。全条件において課題の実施前に,利き足での片脚立位時の重心動揺と母趾球と踵の二点識別覚,足趾把持力を2回測定し,各項目について平均値を算出し,実施後に,実施前と同様の項目を1回測定した。開眼片脚立位時の姿勢制御能力は,重心動揺計(アニマ社製GRAVICODER GS-11)を用いて測定し,得られた値のうち,総軌跡長,単位軌跡長,外周面積を分析の対象とした。足底感覚は,ノギスを用いて利き足の母趾球と踵の二点識別覚を評価した。足趾把持筋力は,ELECTRONIC DYNAMO METER(ヤガミ電子握力計ED-100N)を改造した足趾把持力測定器を用いて測定した。3条件における感覚入力前・後の重心動揺計測値,母趾球と踵の二点識別覚,足趾把持力について一元配置分散分析と多重比較検定を行った。また,条件A,Bにおける母趾球,踵の二点識別覚,足趾把持筋力の感覚入力前・後についてt検定を用いて比較した。統計処理にはSPSS16.0Jを用い,有意水準は5%とした。
【結果】
二点識別覚:条件Aにおいて,足底感覚入力前後で母趾球と踵に有意差は認められなかった。条件Bでは,母趾球の足底感覚入力前は11.3±1.2mm,入力後では9.2±1.9mmと有意に減少し,踵においては,足底感覚入力前は11.4±1.8mm,入力後では9.6±1.4mmと有意に減少した。(母趾球:p=0.019,踵:p=0.045)
足趾把持筋力:条件Aでは,足底感覚入力前は6.9±1.2kg,入力後では8.4±1.5kgと有意に増加した(p=0.039)が,条件Bでは有意差は認められなかった。
重心動揺計測値:足底感覚入力前では,総軌跡長,単位軌跡長,外周面積において条件A,B,Cの間に有意差は認められなかった。入力後では,総軌跡長において,条件A(96.0±16.4)と条件C(118.4±20.5)との間(p=0.036),条件B(90.5±10.3)と条件Cとの間(p=0.008)に有意差が認められた。単位軌跡長において,条件A(3.2±0.5)と条件C(3.9±0.7)との間(p=0.036),条件B(3.0±0.3)と条件Cとの間(p=0.007)に有意差が認められた。外周面積には,有意差は認められなかった。
【考察】
条件Bの母趾球と踵のみ感覚刺激入力前・後で有意差が認められたが,これは直径6mmのBB球を敷き詰めた板の上で足踏みしたことで足底感覚の閾値が減少したと考えられる。足底への機械的入力は下腿の筋肉を間接的に刺激するとされているが,足底感覚を促通させた条件Bでは足趾把持筋力への有意な上昇は得られなかった。密度が低いと足底への圧力も大きくなるため,直接足底筋への圧迫刺激が加えられたことで条件Aのみ感覚入力前・後で有意に足趾把持筋は増加したのではないかと考える。姿勢制御能力に関与する因子として,村田らは,開眼片脚立位での重心動揺と主要な下肢筋力,足部機能との関連を検討し,下肢筋力よりも足趾把持力と足底の二点識別覚の関連性が高いことを示しており,今回の実験でも同様の関連性がみられた。条件Bの方が総軌跡長と単位軌跡長の平均値が有意に減少し,外周面積は条件A,B共に有意差を認められなかった。このことは,重心の移動する範囲の大きさには違いが認められないが,条件Bの方が足底感覚入力後の重心の移動する範囲内を重心足圧中心が入力前と比べて安定して推移していたことが考えられる。密度が高い方が足底感覚を促通し,足底感覚情報がフィードバックしやすくなり,姿勢制御能力により影響を及ぼしたと考える。
【理学療法学研究としての意義】
姿勢制御における至適な足底感覚入力密度を明らかにすることにより,効果的な介入方法の開発につなげることができると考える。