第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

予防理学療法3

Sat. Jun 6, 2015 11:25 AM - 12:25 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0714] 筋硬度計とアンケートによる肩こりの調査

薗和納, 高倉利恵 (大阪河﨑リハビリテーション大学)

Keywords:肩こり, アンケート, 筋硬度

【はじめに,目的】
肩こりは一般的にも臨床的にもみられ非常に身近なものである。厚生労働省の平成25年に行われた国民生活基礎調査において健康状態の訴えが問われている。そこでは肩こりが,男性では2位,女性では1位として挙がっている。このように肩こりは身近な健康状態の異常でありながら解消される事が少ない。自分自身も抱えるこの肩こりについて興味を持ち今回の研究テーマとした。
本研究では肩こりについてのアンケート調査と筋硬度計を利用して肩こりの代表的な部位である僧帽筋の硬さの計測を行い,肩こりとの関係性を考察する事を目的とした。
【方法】
20~50歳代の本学ボランティア学生及び関係者,男性22名,女性19名の合計41名を対象とした。
アンケートは一般的及び医学的情報,睡眠時間,姿勢継続時間,精神的ストレス,肩こり有訴者には肩こりの詳細,肩こりのない者には健康状態について質問した。測定部位は僧帽筋上部線維とし,左右3回ずつ行い平均値をとった。統計にはSpearmanの順位相関係数を使用し,筋硬度計の数値と主観的肩こりの程度の関係性をみた。なお有意水準は5%とした。
【結果】
男性の肩こり有訴者は17名,女性は15名で,合計32名のうち整形疾患を既往歴に持つ者(男性8名,女性5名)が他分野に比べて多かった。BMIと肩こりの有無の関係性はなかった。肩こりあり群の右利きの割合は男性82%,女性93%であった。肩こりなし群の女性は他に比べ約2時間睡眠時間が長かった。肩こりあり群の一日の座位保持時間は10~12時間と答える者が男性18%,女性40%であり他の姿勢に比べ,男女差が大きかった。男女共悩み事がある時に肩こりが増強し,肩こりの部位は僧帽筋上部線維を上位に挙げた。主観的な肩こりの程度は重度と答える者が全体の約45%であり,筋硬度計の数値は女性の右側にのみ主観的肩こりの程度との相関関係を認めた(rs=0.5935,p<0.05)。男女共肩こりの悪化要因としてパソコン作業,運転,精神的ストレスを上位に挙げた。男性3名,女性1名が肩こりの改善方法を認知し,ストレッチ等を行っていた。肩こりの感覚は「重い・だるい」という訴えが最も多く,肩こり有訴者の約68%が肩こりが日常生活を送る上で阻害因子にはならないと回答した。
肩こりなし群に健康状態で何か気をつけている事はないかと質問したところ,ないと回答する者が最も多かったが,女性ではストレッチをしている・ダイエットをしている・ポジティブに物事を考えると回答する者がそれぞれ1名ずつであった。
【考察】
肩こり有訴者数は男女間で殆ど差がなく,肩甲骨や頸部の保持・動きを担う筋において主観的肩こりの程度が高かった。筋硬度計の数値と主観的肩こりの程度の相関性が,女性の右側以外にみられず,数値にばらつきがあった事から,被験者間での肩こりに対する意識の違いが考えられる。また筋硬度計を使用する際に,様々な要因が筋硬度計の数値に影響を与えたと考える。皮膚や皮下組織,徒手による圧迫等の変化が筋硬度計の数値を左右する可能性がある。このため筋硬度計の数値の妥当性や再現性は高いとは言い難い。筋硬度計の数値の正確性を高めるために,同じ検者が測定を行い検者間での差を生じさせないようにする事,また筋硬度計を筋に当てる時は計測角度を確認する等の注意を払う事が必要である。
パソコン作業によくみられる顎を前方に突き出した姿勢の継続や整形疾患による姿勢の崩れにより僧帽筋上部の血液循環障害が生じ,肩こりの誘発要因となっている可能性がある。また睡眠不足,精神的ストレスも自律神経機能を乱しこの要因を誘発すると考える。
肩こりの改善方法を認知している有訴者は全体で4名と非常に少なく,多くは肩こりを改善しない状態で日常生活を送っている。運動療法等を用いる事の重要性や肩こりの誘発要因に姿勢の崩れや精神的ストレスがある事を認識する事が必要であると考える。これらの事を認識・実行する事で肩こりの有訴者の減少や肩こりの改善に繋がると考える。
【理学療法学研究としての意義】
肩こりの有訴者は多くその症状は重度である者が多いが,肩こりの改善方法を知る有訴者は少なく,肩こりが日常生活の阻害因子にはならないと答える有訴者が多かった。この事から姿勢の改善や日常生活指導,また物理療法等を行い,肩こりが改善する事を認識する事が肩こりの有訴者の減少に繋がるのではないかと考える。