第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター9

内部障害/がん・その他

2015年6月6日(土) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0411] がん患者リハビリテーション~ICUから介入した1症例~

岡田努 (淀川キリスト教病院リハビリテーション課)

キーワード:がん患者リハビリテーション, 終末期癌, 予後予測

【目的】“がん患者リハビリテーション(がんリハ)”においては,対象となる疾患・病期が多様であることを実感する。本邦では正式にがんリハが開始されてから5年が経つ,そこでがんリハとは何であるかを再考するために今回の症例を提示する。
【症例提示】70歳代男性。発症前のADLは自立。身体機能面・認知機能面とも重大な問題点はなかった。家族との関係も良好であり,入院中も家族のサポートは十分に得られていた。理学療法には意欲的に取り組み,本人・家族とも自宅退院を願っていた。入院してからは,一度も外出・外泊は出来なかった。

【経過と考察】当院の人間ドックにて大腸がんの診断,入院加療となる。45病日経過中に化学療法を3クール施行。第71病日,大腸切除術施行(1回目の手術)。第75病日,麻痺性イレウスを発症し腹腔ドレナージ・ストーマ造設術施行(2回目の手術)。その直後から循環動態が不安定となりICU管理となる。第79病日からICUにて理学療法開始。第86病日,一般病棟へ転棟。第101病日,当院系列のホスピスへ転院。第122病日,死亡退院。化学療法と入院の長期化により手術直前は,活動性が低下し歩行も不安定となっていた。理学療法開始時は寝返りにも介助が必要であり,FIM40点(運動13点,認知27点)だった。転院時は,起き上がり・端坐位保持・立ち上がり・立位保持・車椅子移乗動作は物的介助で見守り,歩行も点滴台把持して見守り~接触介助のレベルとなった,FIM61点(運動26点,認知35点)であった。ICUからの介入であり,まず離床を,次いで自宅退院を目標として取り組んだ。ADLレベルの向上は得られたが病勢強く,転帰はホスピスとなり,自宅退院は叶わなかった。目標が未達成となったことは悔やまれる。本症例の経験から,終末期におけるがんリハは正確な予後予測が必要であり,その予測に基づいた詳細な目標を立案し早期に実現させることが重要であると考察する。