第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター9

内部障害/がん・その他

2015年6月6日(土) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0414] 女性骨盤臓器脱に対する理学療法の試み

COPMとSF36 v2TMを用い,個別性を抽出しQOL改善を目指し治療を展開した1症例

春本千保子, 森憲一 (大阪回生病院)

キーワード:骨盤臓器脱, 理学療法, QOL

【目的】
骨盤臓器脱の障害や症状は多様である。しかし,わが国におけるそれらの非侵襲的治療は,体操資料配布など個別性のある評価・治療が展開されることは少ない。今回,個別性を抽出し機能障害のみではなくQOL向上を目指し治療を展開し,一定の効果を得たので報告する。
【症例提示】
脊柱管狭窄の既往があり,腰臀部痛症状を呈する60代後半女性。X年Y月,臓器下垂症状にて当院婦人科受診。骨盤臓器脱(子宮脱)と診断。医師の内診にて膣括約筋収縮力低下が認められ,週2回1回2単位の外来理学療法開始となる。
障害や症状の出現など,個別性を聴取する目的で,カナダ式作業遂行測定(Canadian Occupational Performance Measure:以下,COPM)を使用し治療戦略を立案した。重要度の高い順に,重要度・遂行度・満足度で記載。①子宮脱悪化の不安消失(10・1・1)。②長距離歩行の獲得(10・3・4)。③物を持ち上げる動作で臓器下垂の不安消失(9・4・3)であった。臓器脱は1日平均8回,日中臓器が下垂せず保持できる間は3時間,頻尿症状を呈する個別の問題・症状が存在した。
QOLはMOS36-Item Short-Form Health Survey(以下,SF36v2TM)を使用。下位尺度得点,PF70・RP44・BP22・GH25・VT19・SF50・RE42・MH5と顕著なQOL低下を認めた。
【経過と考察】
日常生活の中で腹圧上昇と共に骨盤底筋群が協調して働ける様,既存疾患とその代償戦略により構築された姿勢や歩行等の動作の改善を目指し治療を展開した。
3ヵ月経過したX年Y+3月,医師の評価にて膣括約筋収縮は正常化。臓器脱回数は1日平均2回,日中臓器保持17時間と向上し頻尿症状の改善も得られた。COPM全項目にて有効改善指数2点以上の上昇が得られ,遂行度平均8.8,満足度平均8.8。SF36 v2TM PF95・RP88・BP74・GH72・VT75・SF88・RE92・MH55と全ての項目で向上した。
多様性のある本疾患に対し,個別性を重視した理学療法がQOL向上の一助になると推察する。