第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

地域理学療法8

Sat. Jun 6, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0694] 地域ネットワークの構築に向けたリハビリテーション資源調査

小牧隼人, 原野信人, 帖佐康平, 小牧美歌子 (馬場病院)

Keywords:資源調査, リハビリマップ, 地域包括ケアシステム

【はじめに,目的】
2025年の地域包括ケアシステム実現に向けて,理学療法士には専門的知識を背景とした介護予防の取り組みや街づくりといった役割が求められている。しかし,医療機関に従事する理学療法士の業務は施設内でのリハビリテーションが中心であり,地域での効果的な予防活動の実施や各医療機関の連携を進めることは容易ではない。また,当院は県圏域地域リハビリテーション広域支援センターに指定され,周囲の医療機関や施設へ向けた研修会を実施しているが,介護支援専門員や地域住民からは,「連絡をとりたいが,電話をかけていい時間が分からない」「どの医療機関でどのようなリハビリテーションが提供されているのか分からない」といった声も聞かれている。今回,地域のネットワーク構築を進めるべく,当院のあるH市内で働く理学療法士間の情報共有,介護支援専門員や地域住民への情報開示を目的にH市のリハビリテーション提供施設を調査し,一覧化した小冊子「リハビリマップ」を作成した。リハビリマップ作成によりみえてきた地域の課題や今後の取り組みについて報告する。
【方法】
平成26年5月9日~6月20日の調査期間に,H市内40の医療機関に郵送にて調査目的の説明文,アンケート用紙を配布し回答を得た。掲載項目は,①基本情報として住所,電話番号,FAX番号,E-mailアドレス,診療日,診療時間,休診日,連絡のとりやすい時間帯とし,②リハビリ提供情報として理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の人数,代表者氏名,提供リハビリの分類(脳血管,運動器,呼吸器,心大血管,がんリハ,訪問リハ),特色・PR(自由記載)とした。これらの項目に対するアンケート結果をもとにリハビリマップを作成した。
【結果】
40の医療機関のうち15の施設より回答を得たが,事前にリハビリテーションを提供していると思われた医療機関は12であり,リハビリテーション提供施設の回答率は100%であった。各セラピストの合計数は理学療法士94名,作業療法士35名,言語聴覚士17名であり,各施設の理学療法士数は10名以上が4施設,10名未満が8施設であった。各分類のリハビリテーション提供施設数(入院/外来)は,脳血管8/10,運動器8/10,呼吸器6/6,心大血管0/0であった。がんリハは1施設,訪問リハは6施設で実施していた。また,施設の所在地は市内北部に9施設,中部に1施設,南部に2施設とばらつきがみられた。
【考察】
地域包括ケアシステムは中学校区を目安に,およそ30分以内に必要なサービスが提供される生活圏域を想定している。しかし,今回の結果では縦に長いH市の北部に施設が集中しており,当院は南部へ位置するためサービス範囲や対象人数の拡大が予測される。一方で,新たに介護予防や街づくりなど,施設外の活動を進めるには実践の場の確保や職場の理解に加え,マンパワーなど多くの課題が存在する。今回の調査では10名未満の施設が約67%でありマンパワーが十分とは言えないため,地域のネットワークを通じて新たなアイデアを捻出し,各施設や立地条件に応じた取り組みを進めていく必要がある。また,医療機関内のリハビリテーションは介護支援専門員や地域住民など外部からは実情が認識されにくいため,様々なツールで情報を開示すること,地域で活動していくことでその専門性を周知していく姿勢が必要である。当院では,介護予防教室を新たに開催するのではなく,周辺に点在するいきいきサロンにボランティアとして月に1回の訪問を開始し,徐々に関係団体を増やすことで介護予防実践の場を増やしてきている。また,リハビリマップを通じた情報開示から地域ケア会議への参加要請等,多職種との連携も進み始めている。リハビリマップは地域包括支援センターや市役所,各医療機関への配布を実施し,今後はホームページ等でも情報を開示していく予定である。
【理学療法学研究としての意義】
地域への取り組みを進めるためには,まず自らの関わる地域を知りその課題や利用可能な資源を探る必要がある。今回のリハビリマップ作成により市内の医療機関の所在や関わる地域を認識することは介護予防等の地域への取り組みを進めていく足がかりになると思われた。今後は,具体的なネットワークの構築方法と実現可能な予防活動への行動,そして効果的な活動内容の模索といったことを理学療法学研究として進める必要がある。