第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

症例研究 ポスター13

運動器/肩関節

Sat. Jun 6, 2015 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-C-0438] 投球により肋骨疲労骨折を生じた一症例

~肩甲胸郭関節機能に着目した介入~

加藤雄樹, 齋藤賢一, 五百川威, 近良明 (医療法人社団KOSMIこん整形外科クリニック)

Keywords:投球障害, 肋骨骨折, 肩甲胸郭関節

【目的】
投球障害の大半は肩関節や肘関節の障害であり,肋骨疲労骨折の発生頻度は低く,報告も少ない。今回投球による肋骨疲労骨折後の症例を経験した為,考察を加えて報告する。
【症例提示】
15歳男性。高校野球選手。右投右打の外野手である。平成26年6月初旬,遠投を反復している際に右背部痛を発症。近医受診し肋骨疲労骨折の診断を受け,3週間のバストバンド固定を行った。8月初旬から投球再開するもすぐに痛みが生じ,8月中旬に当院受診し右肩投球障害と肋骨不全骨折の診断で理学療法開始となった。
【経過と考察】
初期評価時,投球のMaximum External Rotation(MER)で右側胸部後方に鋭痛が生じ,第6,7,8肋骨上に圧痛を認めた。他動的なMERで疼痛が再現された。右肩関節他動可動域は90°外転位内旋のみ低下し,右肩甲骨下制・下方回旋アライメント,右肩関節自動屈曲時の著明な翼状肩甲と上方回旋遅延,徒手筋力検査にて右僧帽筋下部線維3,右前鋸筋4と筋力低下を認めた。病歴から肋骨疲労骨折は癒合していると思われ,治療は肩甲骨安定化を目的とした段階的エクササイズを中心に進めた。投球は段階的に再開し,1か月で動的な翼状肩甲が改善,2ヶ月で僧帽筋と前鋸筋筋力の左右差が消失し,完全復帰を果たした。
一般的に肋骨疲労骨折は肋骨に付着する筋群の繰り返しの緊張による発生が知られている。野球での肋骨疲労骨折は利き手側の第7・8肋骨に多発するとされ,原因として前鋸筋収縮ストレスが述べられているが,先行研究は乏しい。投球時の肩甲骨運動に関して,宮下らはMERで肩甲骨後傾が生じると報告している。本症例は肩甲骨の不安定性を有し,MERにて上方回旋が不足した状態で肩甲骨後傾運動が生じ,肋骨への機械的ストレスが発生したと考えられた。本症例は肩甲胸郭関節機能異常が肋骨疲労骨折の発生に関与する可能性を示唆したが,投球での肋骨疲労骨折メカニズムは今後の検証が必要と思われる。