第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

変形性膝関節症5・ACL損傷

2015年6月6日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-C-0589] 片側UKAと両側同時UKAのリハビリテーション経過の比較

南晃平1, 杉優子1, 藤井賢吾1, 河本佑子1, 河島隆貴1, 田中繁治2, 花山耕三3 (1.川崎医科大学附属病院, 2.川崎リハビリテーション学院, 3.川崎医科大学)

キーワード:UKA, 両側同時UKA, リハビリテーション

【はじめに,目的】
近年,両側罹患の変形性膝関節症に対して一期的両側膝関節置換術が施行されており,二期的両側手術に比べ医療費削減や入院日数の短縮などの有用性が報告されている。当院でも基礎疾患や全身状態を考慮された上で両側同時に人工膝関節置換術が施行されている。また人工膝単顆置換術(以下UKA)は人工膝全置換術(以下TKA)に比べ低侵襲であり,当院では両側同時手術には積極的にUKAが施行されている。術後のリハビリテーションは片側手術と同様,術後1日目から全荷重開始し,早期の1本杖歩行獲得を目標にしている。しかし,両側同時手術の場合,片側手術に比べ術後リハビリテーション進行の遅延が推測される。本研究の目的は片側UKA症例(以下,片側群)と両側同時UKA症例(以下,両側群)の術後リハビリテーション経過の違いについて明らかにすることである。
【方法】
対象は2011年8月から2014年8月の間に内側型変形性膝関節症に対してUKAを施行された49例(片側群37例,両側群17例)とした。術前から杖歩行困難な者,神経学的疾患を有する者,透析導入していた者,大型連休を挟みリハの進行に影響があると考えられる者,術前より転院予定の者は除外した。
対象の属性項目として年齢,性別,身長,体重,BMI,術前FTA,術前JOA score,全抜糸日,在院日数を調査した。術後リハビリテーション経過として手術翌日を術後1日目とし,起立開始日,車椅子移乗開始日,平行棒または歩行器歩行開始日,1本杖歩行開始日,階段昇降開始日を調査した。また運動機能として術前と術後14日目の膝関節可動域(以下膝ROM),膝関節筋力(以下膝筋力),10 meter walk test(以下10MWT)を測定した。
統計解析はR-2.8.1を用い,各調査項目の正規性を検定した後,片側群と両側群を比較した。有意確率は危険水準5%未満とした。
【結果】
術後合併症を認めた片側群2例(創部感染1例,深部静脈血栓症1例),両側群2例(深部静脈血栓症1例,肺塞栓症1例)を統計解析から除外した。術後リハビリテーション経過を追った片側群30例と両側群15例の属性項目は年齢(片側群74±6/両側群75±6歳),BMI(27.2±3.3/24.8±2.9),在院日数[16(13~30)/19(15~29)日]であった。BMIと在院日数は片側群と両側群に有意差を認めた。その他の属性項目は有意差を認めなかった。
術後リハビリテーション経過は起立開始日[片側群1(1~2)/両側群1(1~2)日目],車椅子移乗開始日[1(1~2)/1(1~2)日目],平行棒または歩行器歩行開始日[2(2~3)/3(2~4)日目],1本杖歩行開始日[3(2~7)/7(3~9)日目],階段昇降開始日[6.5(3~18)/9(5~16)日目]であった。平行棒または歩行器歩行開始日,1本杖歩行開始日,階段昇降開始日は片側群が両側群と比較して有意に早かった。
術前の運動機能は膝ROM,膝筋力,10MWTとも有意差を認めなかった。術後14日目の運動機能は,膝屈曲ROM(°)は片側群術側110(80~125)/両側群右側110(80~130)/左側110(75~120),伸展ROMは片側群術側-5(-20~0)/両側群右側-5(-10~0)/左側-5(-10~0)であった。膝関節屈曲筋力(Nm/kg)は片側群術側0.23(0.07~0.87)/両側群右側0.23(0.07~0.52)/左側0.20(0.05~0.41),伸展筋力は片側群術側0.38(0~0.91)/両側群右側0.46(0.22~1.04)/左側0.41(0.2~1.05)であった。10MWT(秒)は片側群10.0(4.7~16.5)/両側群10.0(4.7~20.0)であった。術後14日目の運動機能も手術を施行した片側群術側膝と両側群両膝のROM,筋力に有意差はなく,また10MWTも片側群と両側群で有意差を認めなかった。
【考察】
片側群と両側群の術後リハビリテーション経過は起立開始日や車椅子移乗といった術直後の時期に違いはなかったが,歩行練習開始時期以降では両側群が片側群に比べ有意に遅延している。人工関節置換術後の歩行能力は非手術側下肢機能の影響を受けると考えられ,両側同時手術は非手術側に依存した歩行が不可能なため,歩行練習開始時期以降のリハビリテーション経過の遅延に影響したと考える。また石原らはTKA症例の在院日数に影響及ぼす因子として膝ROMや下肢伸展挙上筋力ではなく1本杖歩行獲得日数であったことを報告しており,本研究でも両側群の1本杖歩行練習の遅れが在院日数の延長に影響した可能性が考えられる。運動機能をみると片側群の術側膝,両側群の両膝のROMや筋力は同等に回復しており,10MWTも差を認めていない。低侵襲であるUKA症例であれば両側同時手術であっても術後14日目には片側手術と同等の運動機能回復を促せると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
片側UKAと両側同時UKAの術後リハビリテーション経過の違いを明らかにすることで,クリニカルパス等に使用する術後リハビリテーションの妥当な目標設定の一助になると考える。