第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

肩関節・徒手療法

2015年6月6日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-C-0617] 1st・2nd・3rdポジションにおける他動的肩関節回旋可動域の比較

清水大介1, 成田祟矢2, 齋藤俊3, 坂本孝太4, 古谷佳大5 (1.健康科学大学リハビリテーションクリニック, 2.健康科学大学理学療法学科, 3.伊東市民病院リハビリテーション科, 4.甲州リハビリテーション病院リハビリテーション科, 5.介護老人保健施設星のしずく)

キーワード:関節可動域, 肩甲上腕関節, 構成運動

【はじめに,目的】
従来,ゴニオメーターで測定する関節可動域はAAOS(米国整形外科学会)や日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会が定めた関節可動域測定法が標準的である。肩関節回旋の可動域測定法に着目すると,肩関節屈曲0°以下1st),肩甲骨面上外転90°(以下2nd),肩関節屈曲90°(以下3rd)と3種類の測定法が存在している。しかし,1st,2nd,3rd位での可動域を比較しそれぞれの特徴について言及している報告は少ない。そこで我々は,ポジションの違いが肩関節回旋可動域にどのような影響を及ぼすのか検証することを目的とした。
【方法】
測定期間は平成24年8月16日~9月28日とした。肩関節周囲に疼痛を伴う者を除外し,無作為に選出した健常大学生30名(男性:15人,女性:15人)を対象とした。測定は両側60肢とした。測定方法は東大式ゴニオメーターを用い,1st,2nd,3rd位にて他動的に肩関節を内外旋させた可動域を測定した。2nd位はゼロポジションとなるように外転90°,軽度水平内転位に設定した。検査者は2人とし,1人は他動的に肩関節を回旋させ,もう1人がゴニオメーターを用い5°刻みで測定した。3回測定し,平均値を解析に用いた。測定肢位は1st位は端座位,2nd位は背臥位。3rd位は側臥位とした。検者内信頼性は級内相関係数を用いて統計学的に検討した。1st,2st,3rd位の肩関節の内外旋の可動域の差を対応のある一元配置分散分析を用い解析した。有意な主効果があったものはTurkey HSD法を用い事後比較を行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
検者内信頼性の級内相関係数は,左側1st位内旋では0.62,左2nd位外旋は0.78であったが,他の結果は全て0.8以上を示しており,信頼性のある有用な数値が得られた。1st位内旋は52.6±6.4°,2nd位内旋は78.69±18.7°,3rd位内旋は57.03±15.5°だった。1st位外旋は89.64±12.5°,2nd位外旋は125.27±14.8°,3rd位外旋は113.53±11.7°だった。全ての対象者において内旋,外旋共に2nd,3rd,1st位の順に大きくなった。
【考察】
各ポジションにおける肩甲骨関節窩に対する上腕骨回旋軸の関係と,構成運動の違いが可動域に影響を及ぼすものであると考えた。肩甲骨関節窩に対する上腕骨回旋軸については,1st位では関節窩に対してほぼ平行であり,2nd位ではほぼ垂直である。3rd位では前額面に対して垂直で,関節窩に対しては角度をなしてはいるが関節窩と回旋軸が交わっている。肩甲上腕関節は構成運動として滑り,転がり,軸回旋を有していることから,2nd位では軸回転により上腕骨を通る回旋軸が関節窩上からずれることなく関節運動が行われると考える。3rd位については関節窩を上下方向に転がり,滑りながら関節運動が行われる。1st位では関節窩を前後方向に転がり,滑りながら関節運動が行われる。関節窩は前後半径に比べ上下半径の方が大きいことから,2nd,3rd,1st位の順に大きくなった。日本整形外科学会の定める参考可動域では,1st位内旋は80°,外旋は60°とされている。また,2nd位内旋は70°,外旋は90°とされている。1st位内外旋と,2nd位内旋については,本研究の結果と参考可動域との大きな差はないが,2nd位外旋は125.27±14.8°と約35°参考可動域より大きな結果となった。本研究では構成運動の軸回旋を測定するために純粋な2nd位ではなく,ゼロポジションを測定法として選択した。ゼロポジションは前額・矢状いずれの面からの挙上であっても回旋,関節面でのglidingおよび円転が最小になる肢位とされており,2nd位と比較すると軽度水平内転位となるため,肩関節前方組織の弛緩が予想され,本研究においての2nd位外旋は参考可動域よりも大きな結果となったと考える。3rd位については日本整形外科学会では参考可動域が定められていない。本研究の結果が今後3rd位の参考可動域を定めるための一助になればと考える。
【理学療法学研究としての意義】
上腕骨の肢位の違いにより,肩関節回旋可動域は2nd,3rd,1stの順に大きくなることが示唆された。肩の関節可動域を測定する際には上腕骨回線軸と,構成運動について十分留意する必要があると考える。