第50回日本理学療法学術大会

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ポスター2

神経難病理学療法

2015年6月6日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-C-0655] 在宅パーキンソン病者における自己効力感尺度の信頼性・妥当性の検証

盛田寛明, 神成一哉 (青森県立保健大学健康科学部理学療法学科)

キーワード:パーキンソン病, 自己効力感尺度, 妥当性

【はじめに,目的】障害者および慢性疾患者の日常生活における一般性自己効力感(以下,自己効力感)は,健康行動変容につながる心理要因であり,適切な介入により変容可能であることが提唱されている。在宅パーキンソン病者(以下,在宅PD者)に対する理学療法において心理・精神機能の活性化が課題となるが,在宅PD者を対象とする自己効力感の報告は少ない。Fujiiらは,在宅PD者の自己効力感が,低いものが多いこと,ならびに日常生活のストレスコーピング,家族による日常生活・心理面への支援,および運動方法の理解度などにより影響されると報告している。しかし,評価尺度の信頼性・妥当性の検証は行っていない。本研究の目的は,日本人成人で妥当性・信頼性が検証され本邦の代表的な一般性自己効力感尺度である坂野らの一般性セルフ・エフィカシー尺度を用い,在宅パーキンソン病者を対象に,内的整合性,構成概念妥当性,および基準関連妥当性を検証し,対象者に適合する尺度を開発することである。構成概念妥当性の検証には構造方程式モデリング(以下,SEM)による確証的因子分析を用いた。この分析法は,推定された値が偶然的で再現性のない影響であるのか,あるいは有意性が確認できるほど重要な結果かという判断が統計的に可能であり,よりデータに適合した結果の呈示が可能となることから有用である。
【方法】調査対象者は在宅PD者188名であった。このうち,調査拒否および不正回答を除く122名(男60名,女62名,平均年齢70.9±7.8歳)を分析対象とした。調査方法は,質問紙(無記名,自記式)を用い,郵送法による配布・回収,および研修会会場集合法にて実施した。分析方法は,信頼性を検証するために内的一貫性を用いた。構成概念妥当性はSEMによる確証的因子分析にて検証した。基準関連妥当性はベック抑うつ尺度総得点との相関分析によった。
【結果】SEMによる確証的因子分析において,年齢,性,パーキンソン病発症後期間を調整因子とした結果,計16質問項目からなる原自己効力感尺度から,影響指標が0.7未満である5質問項目を削除した11指標1因子構造モデルにおいて高い適合度が得られた。除外された質問項目の内容は,仕事の自己効力感に関する質問が4項目,他人に比しての記憶力に関する質問が1項目であった。この11項目自己効力感尺度において,内的整合性を示すCronbach’s α係数は0.94と高かった。基準関連妥当性については,外的基準としたベック抑うつ尺度総得点と11項目自己効力感尺度総得点間に高い相関を認めた(r=0.831,p=0.000)。
【考察】構成概念妥当性を検証した結果,坂野らの一般性セルフ・エフィカシー尺度から11質問項目が抽出され在宅PD者のデータに適合した。さらに,この11項目自己効力感尺度は,内的整合性が高いこと,基準関連妥当性が確保されたことが確認された。また,この尺度は,原尺度に比べ質問項目数が少なく簡便に使用でき,回答者の負担も減少することが予測される。したがって,今回,妥当性・信頼性が確認された11項目自己効力感尺度は,在宅PD者の日常生活における一般性自己効力感評価尺度として使用できる可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】自己効力感は,適切な介入により改善できることが示されている。本11質問項目自己効力感尺度で在宅PD者の自己効力感を測定できれば,効率的かつ効果的な理学療法評価および目標・プログラム設定につながり,日常生活活動自立度や生活の質の向上に資する可能性がある。