第50回日本理学療法学術大会

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予防理学療法1

2015年6月6日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-C-0699] 要支援者・要介護者における生活空間と足部機能との関係

南條恵悟1,2, 長澤弘3, 久合田浩幸4, 池田崇4,5 (1.湘南鎌倉総合病院リハビリテーション科, 2.神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科リハビリテーション領域, 3.神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科, 4.介護老人保健施設リハビリケア湘南かまくら, 5.東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科リハビリテーション医学分野)

キーワード:生活空間, 足部機能, 高齢者

【はじめに】
高齢者の足部機能は加齢により低下し,移動能力や転倒と密接に関わる要因であることが報告されており,足趾把持トレーニングにより,地域高齢者の歩行速度の向上得られたなどの報告がされている。一方,高齢者における身体活動量は,日常生活機能を保持するために重要な役割を果し,身体活動量を向上させる必要性が提唱されている。身体活動の簡便な調査方法としてLife Space Assessment(以下LSA)が近年,介護予防領域を中心に活用されている。LSAは高齢者の移動能力との関連性が強く,手段的日常生活活動能力の独立した予測因子であるともいわれている。しかし,それぞれ,移動能力に密接に関係している足部機能と,生活空間との関連性は過去に検討されていない。そこで今回は,通所リハビリテーション利用中の要支援・要介護者を対象に,足部機能と生活空間の関連性を横断的に検討することを目的とする。

【方法】
通所リハビリテーションサービス利用中の要支援・要介護者のうち,独力で連続50m以上歩行可能な50名(男性33名 女性17名 平均年齢79.3±7.0歳 要支援1・2:20名 要介護1・2:24名 要介護3・4:3名)を対象とした。なお,歩行速度の計測で予想される4 Metabolic equivalents以上の運動負荷が禁止されている,歩行時に補装具を必要とする利用者は対象から除外した。計測項目は生活空間評価をLSA,運動能力評価を5m最大歩行速度(以下5MWS),Timed up and go test(以下TUG),Functional reach test(以下FRT),開眼片脚立位保持時間(以下OLS),下肢粗大筋力の指標として,測定機能付自力運動訓練装置のレッグエクステンション(ミナト医科学社製Well tonicシリーズ)を用いて等尺性膝伸展筋力を計測し,体重で除した値(kgf/kg)とした。足部機能の評価として足関節背屈・第一中足趾節関節背屈可動域,足底表在感覚,足趾圧迫力,外反母趾の程度を計測した。足関節背屈・第一中足趾節関節可動域は端座で他動運動をゴニオメーターにて計測した。足底感覚は市販の筆で額を擦った際の強度を10とし,足底面を擦った際の主観的な強度を答えさせた。足趾圧迫力の測定は,端座位にて自作の計測台に足部を乗せ,徒手筋力計(アニマ社製徒手筋力測定器μTas MF-01)のパッドを,母趾と第2-4趾を別々に鉛直方向に圧迫させ,それぞれ計測値の和を体重で除した値を足趾圧迫力(kgf/kg)とした。外反母趾の程度はManchester scaleを使用し,4段階の重症度を1から4の順序尺度に置き換え,両側の重症度の和を指標とした。外反母趾の程度を除く,足部機能評価は左右の計測値のうち,最大値を代表値とした。解析は各々の指標の関係性を検討するためにLSAと運動能力評価,等尺性膝伸展筋力,足趾圧迫力の関係性の関係をピアソンの相関係数を用いて,それ以外の足部機能と各項目の関係はスピアマンの順位相関を用いて検討した。LSAに足部機能が関係するかを,LSAを従属変数とし,年齢,性別,BMI,運動能力評価,足部機能評価,等尺性膝伸展筋力を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を用いて検討した。検定の有意水準は5%未満とした。

【結果】
LSAと有意な相関関係が得られた項目は,年齢(r=-0.40),5MWS(r=0.53),TUG(r=-0.57),等尺性膝伸展筋力(r=0.31)であった。運動能力評価と有意な相関関係が得られた項目は,5MWSとは等尺性膝伸展筋力(r=0.42),足趾圧迫力(r=0.35),TUGとは等尺性膝伸展筋力(r=-0.40),足趾圧迫力(r=-0.35),FRTと等尺性膝伸展筋力(r=0.42)であった。それ以外の項目では有意な相関関係は得られなかった。LSAを従属変数とした重回帰分析では5MWS,OLS(β=0.80,0.40 自由度調性済みR2=0.40)が有意な独立変数として採用された。


【考察】
過去の報告では足部機能と歩行・バランス能力の関連性を一次予防事業に含まれる対象者で検討している報告が多く,本研究では脳卒中や骨折等の既往を持つ要支援・要介護者を対象に検討をしたが,特に5MWSやTUGで示される移動能力と,足部機能の中でも足趾圧迫力の関連性があることが分かった。LASと足部機能との直接的な関係性は今回の検討では得られなかったが,LSAと5MWSの関連性は得られており,先行研究で報告されているLSAと移動能力の関係性は本研究でも確認された。以上から,特に足趾圧迫力の向上が移動能力の改善をもたらし,間接的にLSAを向上させていく可能性は示唆された。

【理学療法研究としての意義】
高齢者の生活空間と,より関連性の強い身体機能の因子を探る事で,身体活動を維持・向上させていくための,効果的な介入を構築することに貢献できると考えられる。