第50回日本理学療法学術大会

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循環1

2015年6月6日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-C-0734] 当院における心臓外科手術後患者に対する早期リハビリテーション介入効果

箕岡尚利1, 西村真人1, 根来政徳1, 立花慶太1, 佐藤のぞみ1, 田中政敏1, 田上光男2, 夏梅隆至3, 平林伸治3, 渋川貴規4, 舩津俊宏4, 谷口和博4 (1.独立行政法人労働者健康福祉機構大阪労災病院中央リハビリテーション部, 2.独立行政法人労働者健康福祉機構中国労災病院中央リハビリテーション部, 3.独立行政法人労働者健康福祉機構大阪労災病院リハビリテーション科, 4.独立行政法人労働者健康福祉機構大阪労災病院心臓血管外科)

キーワード:早期理学療法, 移動能力, 心臓外科手術

【はじめに,目的】
心臓外科手術後早期から開始する理学療法は,目標歩行の早期獲得や在院日数の短縮などに対して有用性が報告されている。当院では2013年8月より心臓血管外科術後患者に対して,ICU管理下から理学療法士が早期介入を行っている。本研究の目的は,理学療法士の術後早期介入が,患者の歩行能力に与える影響を明らかにすることである。
【方法】
対象は,2013年1月から12月に心臓手術を受けた患者93例である。術後早期の理学療法士介入の有無により,2013年1月~7月の対照群と2013年8月~12月の介入群との2群に分割した。女性,年齢,術前ニューヨーク心臓協会心機能分類(NYHA分類),術前左室駆出率(LVEF),術前クレアチニン値(Cr),術前脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP),術前呼吸機能,術式,手術時間,人工心肺装置の使用,人工心肺装置の使用時間,ICU滞在日数,手術から歩行開始までの日数,入院日数,術後在院日数,退院時歩行能力(棟内歩行以下か院内歩行以上かで二分)をカルテより後方視的に調査し比較検討した。統計学的処理はJMP9.03を用い,χ2検定,wilcoxonの順位和検定を行い,統計学的有意はp<0.05とした。
【結果】
対照群61名,介入群32名であった。女性(対照群:介入群=28名:8名,np),年齢(69.2±10.8歳:68.2±13.2歳,np,平均値±標準偏差で記載以下同様に)や術前LVEF(63.9±13.0%:65.4±11.5%,np),術前Cr(1.4±2.1mg/dl:1.3±1.4mg/dl,np),術前BNP(460.9±741.7pg/ml:473.3±1122.6pg/ml,np),術前肺活量(89.4±16.8%:93.0±15.8%,np),術前1秒率(83.3±17.8%:79.8±9.9%,np),術式(単独CABG16名:13名,単独弁膜症手術20名:8名,複合手術・同時手術25名:11名,np),手術時間(398.1±100.4分:372.1±118.3分,np),人工心肺装置の使用(44名:19名,np),人工心肺装置の使用時間(204.3±54.4分:217.8±84.5分,np),ICU滞在日数(6.2±2.0日:6.5±2.1日,np),入院日数(35.8±21.9日:27.4±8.8日,np),術後在院日数(23.8±20.9日:20.2±8.4日,np)に有意差を認めなかった。有意差を認めたのは,術前NYHA分類(I/II/III/IV=10名/40名/11名/0名:6名/10名/12名/4名,p<0.05),手術から歩行開始までの日数(7.9±4.9日:4.4±1.5日,p<0.01),退院時歩行能力(棟内歩行以下15名,院内歩行以上46名:棟内歩行以下0名,院内歩行以上32名,p<0.01)であった。
【考察】
本研究では,理学療法士の早期介入により手術から歩行開始までの期間を短縮し,退院時により高い歩行能力を獲得した。先行研究(本田ら2009,川端ら2008)では,早期理学療法介入が歩行能力を早期に回復することや在院日数を短縮することを報告されている。当院では,在院日数に差を認めなかったが,理学療法士の介入は歩行開始までの日数を短縮し,早期より患者の身体活動量を増加したため,退院時の歩行能力が対照群に比べ高くなったと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
心臓外科手術後患者に対する理学療法士の早期介入は,退院時により高い歩行能力の獲得を可能とする。