第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター17

運動器/脊椎

2015年6月7日(日) 09:40 〜 10:40 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-A-0860] 前立腺癌の脊椎転移により対麻痺を呈した症例

永冨孝幸, 永渕輝佳, 濱田浩志, 丸井理可, 二宮晴夫 (JCHO大阪病院)

キーワード:脊椎転移, 対麻痺, がんのリハビリテーション

【目的】がん罹患患者数およびがん生存率は年々増加しており,担がん患者に対し生活機能とその質を改善する目的にリハビリテーションを実施することの有用性が報告されている。今回我々は脊椎転移により対麻痺を呈した症例を経験し,ADL能力改善が得られ,退院可能となった症例について検討を加えて報告する。
【症例提示】68歳・男性,2013年12月頃より骨盤から腰椎にかけて疼痛自覚,2014年1月より徐々に疼痛増悪し,5月下旬両下肢脱力認め,立位不可となり,救急搬送される。搬送時PSA>1000と高値を認め,前立腺癌の診断にて内分泌療法開始となる。同時に第9胸椎転移に対し放射線治療施行し,6月下旬より理学療法開始となる。
【経過と考察】理学療法開始時,Frankel分類B,ASIA運動機能スコア50点,触覚機能スコア88点,痛覚機能スコア64点,Eastern Cooperative Oncology Group Peformance Status(ECOG PS)4,FIM 58点であった。理学療法は開始当初,障害受容困難で非積極的であったが,体位変換,関節拘縮予防,車椅子離床と基本動作練習を病棟看護師と連携し,実施した。神経症状の改善とともに理学療法に積極的になり,立位練習,移乗動作練習,ADL動作練習を実施した。9月初旬の退院時には,Frankel分類D,ASIA運動機能スコア77点,触覚機能スコア94点,痛覚機能スコア94点,ECOG PS 3,FIM 109点であり,排尿障害は認めなかった。脊椎転移による対麻痺発症急性期において,呼吸器合併症,褥創予防,関節拘縮予防が重要であるが,病棟看護師と連携したことで合併症を予防できた。神経症状の回復とともに患者と目標を共有しながら理学療法を進め,目標を達成できていくことにより,意欲が向上し,PSの向上,日常生活自立度が向上したと考えられる。