第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

ポスター3

体幹1

2015年6月7日(日) 09:40 〜 10:40 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-A-0953] 骨盤底筋を促通する介入方法の検討

河邉真如1, 布施陽子2, 山下剛司1 (1.おゆみの中央病院, 2.文京学院大学保健医療技術学部理学療法学科)

キーワード:骨盤底筋, 膀胱挙上, 介入方法

【はじめに,目的】
骨盤底筋の収縮は,腹圧性尿失禁をはじめとする骨盤内臓器に関するトラブルの治療として指導することは多い。しかし,骨盤底筋の収縮は意識することが難しく,指導しても正確に行えていないことをしばしば経験する。また,骨盤底筋に機能障害がない場合でも,初めて骨盤底筋の収縮を行う場合などでは骨盤底筋の促通には運動方法の指導だけでは十分に伝わらない場合が多い。本研究の目的は,骨盤底筋の収縮をより分かりやすく促す介入方法を検討することである。
【方法】
対象は健常成人男性5名,女性4名(平均年齢22.3±3.3歳,平均身長162.5±6.5cm,平均体重56.2±9.8kg)。骨盤底筋の収縮の確認は超音波診断装置(HITACHI社製)を用いてプローブ下縁を恥骨部に触れるようにし,プローブの中心と恥骨結合が直線で結べる位置でプローブを60°傾けた位置で行った。先行研究より,膀胱の正中線の挙上を骨盤底筋が収縮している状態とした。膀胱の正中線の挙上は,膀胱全体と骨盤内筋膜のレベルの水平断像を描写し,骨盤内筋膜と左右両端の膀胱との境界を結ぶ線から膀胱の正中線と骨盤内筋膜との境界の高さを計測した。課題は全て足底接地し,背もたれに寄りかからない端座位とし,課題1:安静座位,課題2:端座位で骨盤底筋を収縮させる(以下,収縮座位),課題3:着衣の上から陰部にタオルを当て端座位を保持する(以下,タオル座位),課題4:着衣の上から左右の坐骨結節にボールを1個ずつ入れ端座位を保持する(以下,ボール座位)。各課題それぞれ膀胱の正中線の挙上を5回ずつ計測した。解析ソフトはIBM SPSS(statistics21)を使用し,一元配置分散分析および多重比較法(Bonferroniの方法)により有意水準5%未満で行った。
【結果】
一元配置分散分析により課題間の膀胱挙上に有意差が認められた(p<0.01)。タオル座位は安静座位,ボール座位と比較して有意に膀胱の挙上が大きくなった。タオル座位と収縮座位に有意な差はなかった。ボール座位は他3つの課題より有意に膀胱の挙上は小さくなった。
【考察】
今回の結果から,タオルを骨盤底に当てて端座位をとることで骨盤底筋の収縮を意識して行った時と同様に骨盤底筋を促通できることが分かった。安静時にも骨盤底筋が活動している健常者での測定ではあったが,安静時よりも有意に膀胱の挙上が見られている。先行研究より,骨盤の傾斜によって骨盤底筋の活動が変化するという報告があるが,今回は骨盤の傾斜は設定していないためタオルによる骨盤底への刺激が促通に大きく貢献していると考える。また,坐骨結節にボールを当てた座位では骨盤底筋の促通が困難であることが分かった。
【理学療法学研究としての意義】
今回の方法はセッティングを簡易的に行うことができ,座位を保持するのみで行えるため,骨盤底筋の収縮法が分かりにくい場合や初めて行う場合にも指導・介入が行いやすいと考える。