[P3-A-0974] 股関節機能向上運動がスクワット動作に及ぼす即時効果
キーワード:スクワット, 股関節, 姿勢
【はじめに,目的】
スクワット動作はスポーツ動作において最も基本的な姿勢である。様々なスポーツ傷害の原因として,不良なスクワット動作が指摘されている。本研究の目的は,臨床やスポーツ現場で簡便に実施可能な評価方法を用いて,股関節の機能向上運動がスクワット動作に及ぼす即時的効果を検討する事である。
【方法】
バスケットボール競技を行う小学生男子26名を対象に,無作為に股関節機能向上運動群(以下,股関節群)17名(10.4±1.2歳)と非股関節機能向上運動群(以下,コントロール群)9名(10.9±0.3歳)に分けた。両群の年齢に有意差はなかった(p>.3)。
両群とも介入前と介入直後に任意のスクワット動作を行い,矢状面からOLYMPUS製デジタルカメラを用いて撮影。カメラの高さ・距離を統一した。その後,Image Jにて画像処理を行い骨盤傾斜角・臀部位置・膝蓋骨位置を介入前後で比較検討した。
評価は以下のような方法を用いた。骨盤傾斜角は,仙骨面に棒状のものを当てて仙骨面と鉛直線とのなす角度を採用。臀部位置は,踵部最後端から臀部最後面部の鉛直線と床面との交点までの距離を測定。膝蓋骨位置は,つま先最先端から膝最前面部の鉛直線と床面との交点までの距離を測定。それぞれを相対的な距離とするため,足長で除した値を採用した。
股関節群への介入は,股関節屈曲ストレッチ20秒3セット,端坐位での前方ボールリーチ5秒保持10回2セット,片脚立位にて脊柱伸展位で骨盤前傾運動3秒保持10回2セットを実施。コントロール群への介入は,肩関節水平内転・肩関節屈曲のストレッチ20秒3セットずつ,下腿三頭筋の動的ストレッチ20秒3セットを実施した。
統計処理は,対応のあるt検定を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
股関節群において,骨盤傾斜角は介入前20.99°±9.22°から介入後27.02°±12.57°へ有意に増加(p<.02)。臀部位置は介入前0.14±0.21から介入後0.25±0.17へ有意に後方化(p<.04)。膝蓋骨位置は介入前0.22±0.12から介入後0.22±0.15と有意差はなかった(p=.9)。
コントロール群において,骨盤傾斜角は介入前14.46°±6.57°から介入後12.71°±6.10°(p>.4),臀部位置は介入前0.24±0.1から介入後0.17±0.11(p>.08),膝蓋骨位置は介入前0.2±0.11から介入後0.22±0.11(p>.5)でいずれも有意差はなかった。
【考察】
本研究より,股関節機能向上運動がスクワット動作における骨盤傾斜角,股関節位置を変化させうることを示した。また,この運動により一般的に良肢位とされるスクワット動作獲得への即時的効果が示唆された。
上記より,スクワット動作の姿勢が変化したことが伺える。これは臀部の後方化に伴う重心位置の後方変位を骨盤前傾に伴う重心位置の前方変位で相殺することによって,矢上面における重心位置の変位を制御したと考えられる。また,膝蓋骨位置に有意な変化はみられなかった。しばしば膝関節が前方に突出することによる膝蓋大腿関節へのストレスが報告されているが,本研究のような股関節主体の姿勢変化により,スポーツ現場や臨床で指導されるような身体力学的に安全かつ効率的なスクワット動作が獲得されると考える。
股関節群への介入運動に関して,過去の報告でスクワット動作に股関節機能が重要である事が指摘されている。そこで股関節機能に特化した運動を選択した。姿勢変化への影響について,スクワット動作では股関節最大屈曲可動域を必要としないため,自動運動による短期的学習効果の影響が強いと考える。この学習効果の持続性については今後の研究が待たれる。
一方,コントロール群への介入運動に関して,股関節機能と他関節機能を明確に分けるために上肢と下腿の運動を選択した。スクワット動作に関与する肢節が多岐に渡る事を考慮すると,どのような介入でも何かしらの姿勢変化が起こりうる。しかし本研究では,コントロール群での姿勢変化はみられなかった。特に,下腿三頭筋の動的ストレッチにより膝蓋骨位置は前方移動すると予想されるが,介入前後で有意な差はみられなかった。これはスクワット動作において腓腹筋は短縮位であることによると考えられる。
本研究の限界は,正確な重心位置の把握が困難であることである。
【理学療法学研究としての意義】
スポーツ場面において,不良なスクワット動作により傷害が発生するという報告が散見される。本研究での機能向上運動が,各肢節に負担の少ないスクワット動作の獲得,指導の一助となる事を願う。
スクワット動作はスポーツ動作において最も基本的な姿勢である。様々なスポーツ傷害の原因として,不良なスクワット動作が指摘されている。本研究の目的は,臨床やスポーツ現場で簡便に実施可能な評価方法を用いて,股関節の機能向上運動がスクワット動作に及ぼす即時的効果を検討する事である。
【方法】
バスケットボール競技を行う小学生男子26名を対象に,無作為に股関節機能向上運動群(以下,股関節群)17名(10.4±1.2歳)と非股関節機能向上運動群(以下,コントロール群)9名(10.9±0.3歳)に分けた。両群の年齢に有意差はなかった(p>.3)。
両群とも介入前と介入直後に任意のスクワット動作を行い,矢状面からOLYMPUS製デジタルカメラを用いて撮影。カメラの高さ・距離を統一した。その後,Image Jにて画像処理を行い骨盤傾斜角・臀部位置・膝蓋骨位置を介入前後で比較検討した。
評価は以下のような方法を用いた。骨盤傾斜角は,仙骨面に棒状のものを当てて仙骨面と鉛直線とのなす角度を採用。臀部位置は,踵部最後端から臀部最後面部の鉛直線と床面との交点までの距離を測定。膝蓋骨位置は,つま先最先端から膝最前面部の鉛直線と床面との交点までの距離を測定。それぞれを相対的な距離とするため,足長で除した値を採用した。
股関節群への介入は,股関節屈曲ストレッチ20秒3セット,端坐位での前方ボールリーチ5秒保持10回2セット,片脚立位にて脊柱伸展位で骨盤前傾運動3秒保持10回2セットを実施。コントロール群への介入は,肩関節水平内転・肩関節屈曲のストレッチ20秒3セットずつ,下腿三頭筋の動的ストレッチ20秒3セットを実施した。
統計処理は,対応のあるt検定を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
股関節群において,骨盤傾斜角は介入前20.99°±9.22°から介入後27.02°±12.57°へ有意に増加(p<.02)。臀部位置は介入前0.14±0.21から介入後0.25±0.17へ有意に後方化(p<.04)。膝蓋骨位置は介入前0.22±0.12から介入後0.22±0.15と有意差はなかった(p=.9)。
コントロール群において,骨盤傾斜角は介入前14.46°±6.57°から介入後12.71°±6.10°(p>.4),臀部位置は介入前0.24±0.1から介入後0.17±0.11(p>.08),膝蓋骨位置は介入前0.2±0.11から介入後0.22±0.11(p>.5)でいずれも有意差はなかった。
【考察】
本研究より,股関節機能向上運動がスクワット動作における骨盤傾斜角,股関節位置を変化させうることを示した。また,この運動により一般的に良肢位とされるスクワット動作獲得への即時的効果が示唆された。
上記より,スクワット動作の姿勢が変化したことが伺える。これは臀部の後方化に伴う重心位置の後方変位を骨盤前傾に伴う重心位置の前方変位で相殺することによって,矢上面における重心位置の変位を制御したと考えられる。また,膝蓋骨位置に有意な変化はみられなかった。しばしば膝関節が前方に突出することによる膝蓋大腿関節へのストレスが報告されているが,本研究のような股関節主体の姿勢変化により,スポーツ現場や臨床で指導されるような身体力学的に安全かつ効率的なスクワット動作が獲得されると考える。
股関節群への介入運動に関して,過去の報告でスクワット動作に股関節機能が重要である事が指摘されている。そこで股関節機能に特化した運動を選択した。姿勢変化への影響について,スクワット動作では股関節最大屈曲可動域を必要としないため,自動運動による短期的学習効果の影響が強いと考える。この学習効果の持続性については今後の研究が待たれる。
一方,コントロール群への介入運動に関して,股関節機能と他関節機能を明確に分けるために上肢と下腿の運動を選択した。スクワット動作に関与する肢節が多岐に渡る事を考慮すると,どのような介入でも何かしらの姿勢変化が起こりうる。しかし本研究では,コントロール群での姿勢変化はみられなかった。特に,下腿三頭筋の動的ストレッチにより膝蓋骨位置は前方移動すると予想されるが,介入前後で有意な差はみられなかった。これはスクワット動作において腓腹筋は短縮位であることによると考えられる。
本研究の限界は,正確な重心位置の把握が困難であることである。
【理学療法学研究としての意義】
スポーツ場面において,不良なスクワット動作により傷害が発生するという報告が散見される。本研究での機能向上運動が,各肢節に負担の少ないスクワット動作の獲得,指導の一助となる事を願う。