[P3-A-0978] ハムストリングスのストレッチング効果の持続時間の検討
―せん断波エラストグラフィー機能を用いた個別筋評価―
キーワード:ストレッチング, ハムストリングス, せん断波エラストグラフィー
【はじめに,目的】
筋の柔軟性の低下は肉離れの受傷要因となる可能性が報告されていることから,スタティックストレッチング(以下:SS)は肉離れの主たる予防方法の1つとして用いられている。肉離れの好発部位としてハムストリングスが挙げられるが,ハムストリングスに対するSSの肉離れ予防効果については一定の見解が得られていないのが現状である。これはSSが筋の柔軟性に及ぼす影響に関する情報が少なく,肉離れの予防策としてどのタイミングでSSを行うべきかが明確になっていないことが1つの原因であると考えられる。そのため,ハムストリングスのSSによる柔軟性改善効果がSS後何分後まで持続するかという情報は,SSを行うタイミングを考案するのに有用である。また,ハムストリングスを構成する3筋の中でも,競技によって肉離れが好発する筋が異なるため,3筋それぞれでSS効果を検討することも重要であると考えられる。
先行研究では,関節可動域やスティフネスを指標としてハムストリングスのSS効果の持続時間を検討しているが,個別の筋ごとに評価した報告は見当たらない。近年,超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用いて測定される弾性率をSS効果の指標として用いることで,SS効果を個別の筋ごとに検討する方法が注目されている。そこで本研究では,このせん断波エラストグラフィー機能で測定した弾性率を指標として,ハムストリングスのSSの柔軟性改善効果の持続時間を各筋で比較することを目的とした。
【方法】
対象は下肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常男性18名(平均年齢23.2±2.3歳)とした。対象筋は利き脚(ボールを蹴る)側の半腱様筋(以下:ST),半膜様筋(以下:SM)及び大腿二頭筋(以下:BF)とした。ストレッチング開始前(以下:Pre),直後(以下:Post),10分後,20分後,30分後に,背臥位,股関節90°屈曲位,膝関節45°屈曲位におけるST,SM,BFの弾性率を測定した。ストレッチングは背臥位,股関節90°屈曲位において,痛みが生じる直前まで膝関節を伸展させた肢位を5分間保持させた。
筋の弾性率の評価には,SuperSonic Imagine社製超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用い,解析には全て2回の測定値の平均値を使用した。測定位置は,坐骨結節と内側上顆を結ぶ線の中点をST及びSMの基準,坐骨結節と外側上顆を結ぶ線の中点をBFの基準とし,触診にて特定した各筋の筋腹とした。
統計学的解析は,持続時間を検討するため,各筋のPreに対するPost,10分後,20分後,30分後の弾性率を多重比較を用い比較した。有意水準は5%とした。
【結果】
統計学的解析の結果,弾性率(kPa)はSTではPre(46.5±16.1)に対してPost(35.1±12.0),10分後(36.5±9.2)において有意に低下していたが,20分後(41.4±14.5),30分後(41.0±12.3)には有意な差は認められなかった。またBFにおいてもPre(76.4±21.8)に対してPost(57.2±17.9),10分後(65.5±18.2)において有意に低下していたが,20分後(69.4±19.0),30分後(71.4±16.4)には有意な差は認められなかった。一方,SMではPre(99.7±34.4)に対してPost(65.8±21.5),10分後(77.0±25.4),20分後(80.0±29.4)において有意に低下していたが,30分後(90.5±34.0)には有意な差は認められなかった。
【考察】
各筋の弾性率の結果から,ストレッチングによる柔軟性改善効果はST,BFでは10分後まで,SMでは20分後までは持続することが示唆された。
ハムストリングスのストレッチングの即時効果を検討した先行研究において,本研究で用いたストレッチング方法ではハムストリングスを構成する3筋の中でSMに最も大きな張力がかかることで,SMの柔軟性が最も増加することが報告されている。本研究においてハムストリングスのストレッチングの柔軟性の増加の持続時間がSMで最も長かったのは,ストレッチングの柔軟性改善効果がSMで最も大きいためであると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法においてよく用いられているハムストリングスのストレッチングの柔軟性改善効果はST,BFではストレッチング10分後まで,SMではストレッチング20分後までは持続しており,3筋の中でもSMで最も持続することが示唆された。
筋の柔軟性の低下は肉離れの受傷要因となる可能性が報告されていることから,スタティックストレッチング(以下:SS)は肉離れの主たる予防方法の1つとして用いられている。肉離れの好発部位としてハムストリングスが挙げられるが,ハムストリングスに対するSSの肉離れ予防効果については一定の見解が得られていないのが現状である。これはSSが筋の柔軟性に及ぼす影響に関する情報が少なく,肉離れの予防策としてどのタイミングでSSを行うべきかが明確になっていないことが1つの原因であると考えられる。そのため,ハムストリングスのSSによる柔軟性改善効果がSS後何分後まで持続するかという情報は,SSを行うタイミングを考案するのに有用である。また,ハムストリングスを構成する3筋の中でも,競技によって肉離れが好発する筋が異なるため,3筋それぞれでSS効果を検討することも重要であると考えられる。
先行研究では,関節可動域やスティフネスを指標としてハムストリングスのSS効果の持続時間を検討しているが,個別の筋ごとに評価した報告は見当たらない。近年,超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用いて測定される弾性率をSS効果の指標として用いることで,SS効果を個別の筋ごとに検討する方法が注目されている。そこで本研究では,このせん断波エラストグラフィー機能で測定した弾性率を指標として,ハムストリングスのSSの柔軟性改善効果の持続時間を各筋で比較することを目的とした。
【方法】
対象は下肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常男性18名(平均年齢23.2±2.3歳)とした。対象筋は利き脚(ボールを蹴る)側の半腱様筋(以下:ST),半膜様筋(以下:SM)及び大腿二頭筋(以下:BF)とした。ストレッチング開始前(以下:Pre),直後(以下:Post),10分後,20分後,30分後に,背臥位,股関節90°屈曲位,膝関節45°屈曲位におけるST,SM,BFの弾性率を測定した。ストレッチングは背臥位,股関節90°屈曲位において,痛みが生じる直前まで膝関節を伸展させた肢位を5分間保持させた。
筋の弾性率の評価には,SuperSonic Imagine社製超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用い,解析には全て2回の測定値の平均値を使用した。測定位置は,坐骨結節と内側上顆を結ぶ線の中点をST及びSMの基準,坐骨結節と外側上顆を結ぶ線の中点をBFの基準とし,触診にて特定した各筋の筋腹とした。
統計学的解析は,持続時間を検討するため,各筋のPreに対するPost,10分後,20分後,30分後の弾性率を多重比較を用い比較した。有意水準は5%とした。
【結果】
統計学的解析の結果,弾性率(kPa)はSTではPre(46.5±16.1)に対してPost(35.1±12.0),10分後(36.5±9.2)において有意に低下していたが,20分後(41.4±14.5),30分後(41.0±12.3)には有意な差は認められなかった。またBFにおいてもPre(76.4±21.8)に対してPost(57.2±17.9),10分後(65.5±18.2)において有意に低下していたが,20分後(69.4±19.0),30分後(71.4±16.4)には有意な差は認められなかった。一方,SMではPre(99.7±34.4)に対してPost(65.8±21.5),10分後(77.0±25.4),20分後(80.0±29.4)において有意に低下していたが,30分後(90.5±34.0)には有意な差は認められなかった。
【考察】
各筋の弾性率の結果から,ストレッチングによる柔軟性改善効果はST,BFでは10分後まで,SMでは20分後までは持続することが示唆された。
ハムストリングスのストレッチングの即時効果を検討した先行研究において,本研究で用いたストレッチング方法ではハムストリングスを構成する3筋の中でSMに最も大きな張力がかかることで,SMの柔軟性が最も増加することが報告されている。本研究においてハムストリングスのストレッチングの柔軟性の増加の持続時間がSMで最も長かったのは,ストレッチングの柔軟性改善効果がSMで最も大きいためであると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法においてよく用いられているハムストリングスのストレッチングの柔軟性改善効果はST,BFではストレッチング10分後まで,SMではストレッチング20分後までは持続しており,3筋の中でもSMで最も持続することが示唆された。