[P3-A-1056] 不安定条件における前足部荷重課題の脳活動分析
―FunctionalMRIによる検証―
キーワード:FunctionalMRI, 前足部荷重, 左右差
【はじめに,目的】
脳損傷後の運動機能の回復は脳の可塑性によって起こることがわかってきておりリハビリテーション分野においては運動療法によって脳の可塑性を促進させるため,FunctionalMRI(以下fMRI)での研究が行われるようになってきている。脳血管障害の姿勢制御の特徴は足関節の機能や前後方向への重心移動能力の低下があり,特に前方への重心移動能力の獲得が重要であると報告されている。前方への重心移動能力低下とは,すなわち前足部への荷重能力低下を意味する。これまでの研究では,安定条件での前足部荷重課題における脳活動を分析し,視床といった錐体外路系の活動を得ている。しかし,安定条件での結果は9名中6名が安静時と比較して有意な脳活動を得ていないことから,より不安定な条件での検証が必要である。よって本研究の目的は,fMRIを使用して,前足部荷重課題における脳活動を環境が不安定な条件での計測及び分析を行う。なお本研究で使用するfMRIは機器の機能上背臥位での計測になるため,重心位置を変化させることはできない。よって,本研究での前足部荷重を「足圧中心点の前方変位」と定義し,計測を実施した。
【方法】
対象は整形外科的及び神経学的な疾患の既往のない若年健常成人9名(男性2名,女性7名,年齢21~23歳,平均年齢21.8歳)で行った。事前にチャップマンの利き足テストに基づいて,利き足を測定し,9名中1名のみ左足が利き足であった。運動課題は背臥位にて両足で足底に設置されたエアスタビライザーを押す動作を30秒間持続的に試行し,安静30秒と課題30秒を計4試行行う。運動強度は頭部体動の防止と持続的に運動課題を実施することによる疲労を考慮して最大強度の40%にした。まず事前に最大強度で行い,その後40%の強度での運動課題の練習を実施する。統計解析はStatistical Parametric Mapping8(以下SPM8)にて画像処理を行い,安静時と課題時に対して対応のあるt検定を行う。統計的有意水準は1%未満とした。
【結果】
本研究では頭部体動により解析不可だった1名を除いて解析を行い,8名全員の賦活が得られため,集団解析を行った。集団解析の結果,右視床と両側小脳,左感覚野,右運動野,右運動前野が賦活した。
【考察】
本研究で特徴的なのは左右の大脳半球の脳活動が異なった。結果として,右の大脳では運動野,運動前野などの運動関連領域が賦活し,左の大脳では感覚野が賦活している。これは,下肢は利き足が機能脚,非利き足が支持脚と左右で役割が異なることを反映していると考察する。不安定条件では前足部に荷重している間,不安定な条件のもと,絶えず姿勢制御を行うのに末梢からの情報を基に安定性を得ていると考えられる。左半球では末梢からの感覚情報を基に身体の位置情報をより多く得ることで姿勢制御を行うため感覚野が優位に活動すると考える。右半球ではより随意運動あるいは姿勢制御を行ったため運動野,運動前野がより活動すると考察する。以上のようなメカニズムによって姿勢制御が要求される前足部荷重時は利き足非利き足で役割が異なることと同様に左右の脳活動が異なると考察する。今後は,反復運動や交互動作,片足のみといった条件を変えて継続して研究を進めていく。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法で提供される運動課題における脳活動を知ることは,脳の可塑性を促進させるのに重要である。本研究の結果より,左右の脳活動より利き足非利き足における機能的な役割が異なることが示唆され,視床や感覚野と錐体路の起始部である運動野以外の脳の賦活が得られた。fMRIを使用して下肢運動課題における脳活動を分析することは,脳の可塑性を促進させる運動療法の一助になると考える。
脳損傷後の運動機能の回復は脳の可塑性によって起こることがわかってきておりリハビリテーション分野においては運動療法によって脳の可塑性を促進させるため,FunctionalMRI(以下fMRI)での研究が行われるようになってきている。脳血管障害の姿勢制御の特徴は足関節の機能や前後方向への重心移動能力の低下があり,特に前方への重心移動能力の獲得が重要であると報告されている。前方への重心移動能力低下とは,すなわち前足部への荷重能力低下を意味する。これまでの研究では,安定条件での前足部荷重課題における脳活動を分析し,視床といった錐体外路系の活動を得ている。しかし,安定条件での結果は9名中6名が安静時と比較して有意な脳活動を得ていないことから,より不安定な条件での検証が必要である。よって本研究の目的は,fMRIを使用して,前足部荷重課題における脳活動を環境が不安定な条件での計測及び分析を行う。なお本研究で使用するfMRIは機器の機能上背臥位での計測になるため,重心位置を変化させることはできない。よって,本研究での前足部荷重を「足圧中心点の前方変位」と定義し,計測を実施した。
【方法】
対象は整形外科的及び神経学的な疾患の既往のない若年健常成人9名(男性2名,女性7名,年齢21~23歳,平均年齢21.8歳)で行った。事前にチャップマンの利き足テストに基づいて,利き足を測定し,9名中1名のみ左足が利き足であった。運動課題は背臥位にて両足で足底に設置されたエアスタビライザーを押す動作を30秒間持続的に試行し,安静30秒と課題30秒を計4試行行う。運動強度は頭部体動の防止と持続的に運動課題を実施することによる疲労を考慮して最大強度の40%にした。まず事前に最大強度で行い,その後40%の強度での運動課題の練習を実施する。統計解析はStatistical Parametric Mapping8(以下SPM8)にて画像処理を行い,安静時と課題時に対して対応のあるt検定を行う。統計的有意水準は1%未満とした。
【結果】
本研究では頭部体動により解析不可だった1名を除いて解析を行い,8名全員の賦活が得られため,集団解析を行った。集団解析の結果,右視床と両側小脳,左感覚野,右運動野,右運動前野が賦活した。
【考察】
本研究で特徴的なのは左右の大脳半球の脳活動が異なった。結果として,右の大脳では運動野,運動前野などの運動関連領域が賦活し,左の大脳では感覚野が賦活している。これは,下肢は利き足が機能脚,非利き足が支持脚と左右で役割が異なることを反映していると考察する。不安定条件では前足部に荷重している間,不安定な条件のもと,絶えず姿勢制御を行うのに末梢からの情報を基に安定性を得ていると考えられる。左半球では末梢からの感覚情報を基に身体の位置情報をより多く得ることで姿勢制御を行うため感覚野が優位に活動すると考える。右半球ではより随意運動あるいは姿勢制御を行ったため運動野,運動前野がより活動すると考察する。以上のようなメカニズムによって姿勢制御が要求される前足部荷重時は利き足非利き足で役割が異なることと同様に左右の脳活動が異なると考察する。今後は,反復運動や交互動作,片足のみといった条件を変えて継続して研究を進めていく。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法で提供される運動課題における脳活動を知ることは,脳の可塑性を促進させるのに重要である。本研究の結果より,左右の脳活動より利き足非利き足における機能的な役割が異なることが示唆され,視床や感覚野と錐体路の起始部である運動野以外の脳の賦活が得られた。fMRIを使用して下肢運動課題における脳活動を分析することは,脳の可塑性を促進させる運動療法の一助になると考える。