第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター15

運動器/膝関節

2015年6月7日(日) 13:10 〜 14:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-C-0842] 骨付き膝蓋靭帯を用いた前十字靭帯再建後にスクワット動作で膝蓋骨骨折を生じた症例

田中彩乃1, 植原健二2, 小林哲士2, 星野姿子1, 清水弘之2 (1.聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部, 2.聖マリアンナ医科大学整形外科学教室)

キーワード:前十字靭帯再建術, 膝蓋骨骨折, スクワット

【目的】
骨付き膝蓋靭帯(以下BTB)を用いた前十字靭帯再建術(以下ACLR)のリハビリテーションでは,スクワットは大腿四頭筋とハムストリングスの同時収縮を得られる安全なトレーニングであるとされ早期から行われることが多い。しかし,われわれは術後にスクワット姿勢で膝蓋骨骨折を生じた症例を経験したので文献的考察を含めて報告する。
【症例提示】
33歳男性,23歳時にスキーで前十字靭帯を損傷した。受傷時は競技レベルであったが保存加療を選択した。33歳時,走行中に膝崩れを生じたためACLRに至った。手術は,BTBを用いたACLR,外側半月板縫合,骨軟骨柱移植術を施行した。BTB採取の膝蓋骨側の骨切りサイズは横10×縦20×深さ10mmであった。
【経過と考察】
術後2週より1/3部分荷重歩行開始,7週にて全荷重歩行を開始した。術後7週3日にて膝屈曲60度のスクワット姿勢を取った際に礫音と疼痛を自覚,画像検査で膝蓋骨骨折を認めたため,観血的整復固定術を行った。
BTBを使用したACLR後の膝蓋骨骨折の発生率は0.23~2.3%と報告されている。発生機序としては,転倒などの直接的な外傷,ゴルフスウィングなどの回旋動作,膝の過屈曲,ジャンプやスクワットが挙げられる。また,BTBを用いたACLR後では膝蓋骨の強度は30~40%減少するとの報告がある。解剖学的特性では,膝蓋骨には膝蓋腱と拮抗する大腿四頭筋腱の合力がかかり,また膝関節屈曲時には大腿骨からの圧迫力が加わる。さらに膝屈曲40~60度のとき膝蓋骨下端にかかる回転モーメントは最大と報告されている。今回のスクワット動作は再建靭帯に対して安全な配慮はされていたが,膝蓋骨採骨部に対しては高負荷であった可能性がある。主治医や画像から得た情報で配慮すべき症例では,再建靭帯のみならず膝蓋骨への負荷を考慮したプログラムや動作観察が重要であると考えられた。