第50回日本理学療法学術大会

講演情報

分科学会 シンポジウム

日本理学療法教育学会 分科学会 シンポジウム4

理学療法教育の新たなる挑戦―Outcome Based Education.

2015年6月5日(金) 18:10 〜 20:00 第2会場 (ホールC)

座長:日高正巳(兵庫医療大学 リハビリテーション学部理学療法学科)

[S-04-1] Outcome-based Education教育ガイドラインの課題:診療ガイドライン作成の経験から

中山健夫 (京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)

近年,根拠に基づく医療(EBM)の考え方に基づく診療ガイドラインがさまざまな臨床領域で作成され,現場で利用されている。診療ガイドラインとは,「診療上の重要度の高い医療行為について,エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価,益と害のバランスなどを考量し,最善の患者アウトカムを目指した推奨を提示することで,患者と医療者の意思決定を支援する文書」(日本医療機能評価機構Minds 2014)であり,医療者の間のみならず,社会的にも急速に関心が高まっている。米国医学研究所(Institute of Medicine)は2011年の包括的なレポートにおいて,「信頼できる診療ガイドラインの要件」として以下を示している。
1.既存の臨床的エビデンスの系統的レビューに基づくこと
2.専門的な学際的パネル(作成委員会)と,関連のある団体の代表によって作成する
3.患者の希望を考慮する
4.歪曲やバイアス,利益相反を減らすため,明示的で透明性の高い過程を重視する
5.ケアの選択肢とアウトカムの関係を論理的に説明し,エビデンスの質と推奨度の評価を示す
6.重要な新エビデンスが現れたら適宜更新すること
日本では診療ガイドラインの作成主体は学会である。したがって,上記の要件は診療ガイドラインを通して学会に期待される社会的責任と言えるだろう。診療ガイドラインの利用に当たっては,作成過程の透明性・客観性の観点からその質を評価するため,6領域23項目+総合評価から成るAGREEIIの評価法が国際的に広く用いられている。
本講演では,近年の診療ガイドラインの作成と活用の経験から,Outcome-based Educationに向けた教育ガイドラインのあり方について課題と方向性の提示を試みたい。