第50回日本理学療法学術大会

講演情報

分科学会 シンポジウム

日本基礎理学療法学会 分科学会 シンポジウム12

基礎理学療法の新たなる可能性―若手研究者(U39)による最先端研究紹介―

2015年6月6日(土) 17:30 〜 19:20 第4会場 (ホールB7(2))

座長:山崎俊明(金沢大学 医薬保健研究域保健学系), 金子文成(札幌医科大学 保健医療学部理学療法学科)

[S-12-1] 関節リウマチに伴う筋弱化のメカニズム

山田崇史 (札幌医科大学保健医療学部理学療法学科)

関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)患者のおよそ3分の2では,健常者に比べ筋力が25~50%程度低下することが報告されており,関節の変形や疼痛とともに日常生活活動を制限する重大な要因となっている。骨格筋の発揮張力は,その横断面積に比例することから,一般的に,筋力の低下は,筋量の減少に起因すると考えられている。しかしながら,RAでは,筋の量的な減少よりもむしろ固有張力(単位断面積あたりの張力)の低下が,筋力低下の実体であることが示されている。これまで我々は,RAの患者及びモデル動物を用い,Muscle weakness(筋弱化)と呼ばれるこの現象のメカニズム解明に取り組み,以下に挙げるいくつかの興味深い知見を得た。
・RAモデル動物であるコラーゲン誘発性関節炎(CIA)マウスの骨格筋では,固有張力の低下が,筋小胞体からの収縮時Ca2+放出量の低下を伴わない。したがって,クロスブリッジにおける張力産生機能の低下が筋弱化の要因である。
・CIAマウス骨格筋の筋原線維では,Ca2+誘引性最大張力の低下が,活性窒素種の一種であるパーオキシナイトライトによる,アクチンの翻訳後修飾を伴う。
・パーオキシナイトライトの生成が増加するメカニズムには,神経型一酸化窒素合成酵素と筋小胞体Ca2+放出チャネルの共局在化が関与する。
さらに近年,我々は,別のRAモデル動物であるアジュバント関節炎ラットにおいて,抗酸化物質の投与により,固有張力の低下が防止されるとともに,アクチンの翻訳後修飾が軽減することを示し,RAに伴う筋弱化のメカニズムに,酸化あるいは窒素化ストレスによるアクチン分子の機能障害が関与することを示した。本発表では,これらの病態解析に関する研究成果とともに,近年,我々が取り組んでいる温熱療法や神経―筋電気刺激療法などの物理療法の介入効果についても報告する。