第50回日本理学療法学術大会

講演情報

分科学会 シンポジウム

日本基礎理学療法学会 分科学会 シンポジウム12

基礎理学療法の新たなる可能性―若手研究者(U39)による最先端研究紹介―

2015年6月6日(土) 17:30 〜 19:20 第4会場 (ホールB7(2))

座長:山崎俊明(金沢大学 医薬保健研究域保健学系), 金子文成(札幌医科大学 保健医療学部理学療法学科)

[S-12-4] 随意運動とinterhemispheric interactionの神経生理学的関連について

上原一将1,2 (1.国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンター先進脳画像研究部, 2.日本学術振興会)

ヒトの随意運動は,脊髄及び筋に対する下降性斉射の出力領域となる対側大脳皮質一次運動野(contralateral primary motor cortex:cM1)によって主に制御されていることは広く知られている。しかしながら,動作肢と同側の大脳皮質一次運動野(ipsilateral M1:iM1)も同様に随意運動の制御に関与している事が近年明らかになりつつある(Muellbacher, et al., 2000;Kobayashi, et al., 2003)。我々は,片側手指周期運動を行っている最中のiM1の興奮性変化について経頭蓋磁気刺激法(transcranial magnetic stimulation:TMS)を用いて検討を行い,iM1の興奮性変化は周期運動の運動周波数に依存して変化すること,これに加え,このiM1の興奮性変化にはiM1内に存在する皮質内抑制回路が関与していることを明らかにした(Uehara, et al., 2011, 2013)。
さらに,我々は,iM1の興奮性変化に関与すると考えられる片手随意運動中のcM1からiM1に対する半球間抑制(interhemispheric inhibition:IHI)の動態をdual-coil TMS法を用いて検討し,随意運動中に特異的に働くIHIのサブタイプを同定した(Uehara, et al., 2014)。片手随意運動中の長潜時IHIは安静時と同等の抑制量を維持していたが,短潜時IHIは片手随意運動中に安静時と比較して有意に抑制量の増加が認められた。つまり,片手随意運動では短潜時IHIがiM1の興奮性変化に関与している可能性が示唆された。
これらの研究成果は,脳卒中後に出現すると考えられているIHIの不均衡やmirror movement等に対するリハビリテーションの一助になると考える。