第50回日本理学療法学術大会

講演情報

合同シンポジウム

日本医学教育学会 合同シンポジウム2

医学教育の進歩と理学療法

2015年6月5日(金) 16:00 〜 17:50 第2会場 (ホールC)

座長:浅香満(高崎健康福祉大学 保健医療学部理学療法学科)

[TS-05-1] 医学教育の動向―多職種連携の時代―

伴信太郎 (日本医学教育学会理事長/名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻総合診療医学分野)

本講演では,「理学療法士教育」の参考にしていただけるように,1)日本の医学教育の全体像,2)転換期を迎えている医学教育の背景,3)教え方/学び方の変貌,4)カリキュラム立案の為の枠組み,について述べる。
1.転換期を迎えている医学教育
世界的に医学教育は大きな転換期を迎えている。その背景には,①ICTの発達,②人口の高齢化,③医学・医療の高度専門細分化,④医療関係諸職種の増加,などが挙げられる。
2.日本の医学教育の全体像
今日の医学教育は,「最先端医療」と「最前線医療」を両輪とすることが求められている。後者は特に総合診療専門医と多職種連携がキーワードで,多職種連携については医療専門職だけの‘interprofessional’教育から,一歩進めて,住民も巻き込んだ‘transprofessional’教育に向っている。
3.教え方/学び方の変貌
これまでの医学教育は,専門的な知識を伝達することが主と考えられてきたが,現在は,知識は誰でも手に入る時代であり,専門的な情報を伝達することは教育の一部分を占めるに過ぎない。学習目標を明確にした上で,‘モチベーションを高める工夫’をすれば,知識はグループ学習や自学自習で自ら獲得してくことが可能であり,かつその方が望ましい。このような時代においては,書物やネットの知識ではない,暗黙知も含めた知識の獲得が求められており,そのためには現場経験(実習/研修)が重要である。すぐに現場で経験できないような技能は,学生同士あるいはシミュレーションを使った経験ができるように学習方略を工夫する。シミュレーションも高価な設備・機器は不要である。
4.カリキュラム立案の為の枠組み
医学教育では,卒前6年間,卒後2年間が必修で,卒前も卒後も必修カリキュラムと選択カリキュラムから構成されている。このような学習者のニーズを汲み上げることができるカリキュラム立案も大切である。