日本畜産学会第125回大会

講演情報

ポスター発表

[P-29-39_47] 一般演題(ポスター発表)<育種・遺伝>

2019年3月29日(金) 09:00 〜 15:30 ポスター会場・展示 (大教室)

[P29-47] トキ国内野生下個体群における始祖個体の遺伝的寄与のシミュレーションによる評価

九冨 斉1, 山田 宜永1, 谷口 幸雄2, 杉山 稔恵1, 金子 良則3, 祝前 博明4 (1.新潟大院自然科学, 2.京大院農, 3.トキ保護セ, 4.新潟大朱鷺自然セ)

【目的】演者らは先に,トキ野生下個体群の遺伝的多様性を把握する上での一助として,集団遺伝学的パラメータの評価を行った.本研究ではさらに,始祖個体の遺伝的寄与の確率的様相について検討を加えた.【方法】2017年までの放鳥個体の家系図Aおよび放鳥個体と野生下生まれで血統が既知の生存個体の家系図Bの情報を用いて,遺伝子落下模擬実験を実施し,各始祖個体の遺伝子の伝達様相および消失ゲノム割合などを評価した.【結果】友友,洋洋,美美,華陽および溢水の5始祖個体について得られた遺伝的寄与の範囲と平均は,それぞれ順に,家系図Aでは0.21~0.51および0.35,0.20~0.51および0.34,0.17~0.34および0.25,0~0.07および0.03,0~0.06および0.03であった.Bでは,0.18~0.56および0.36,0.16~0.53および0.35,0.14~0.37および0.25,0~0.05および0.02,0~0.06および0.02であった.推定消失ゲノム割合は,家系図A,Bでともに,友友,洋洋および美美ではいずれも0%であった一方,華陽および溢水ではそれぞれ12%および10%であった.野性下個体群では,飼育下個体群における始祖個体の遺伝的寄与の様相がタイムラグを経て実現されつつあるが,当面は可能な限り,華陽や溢水のゲノム割合の高い個体の放鳥を実施していくことが重要である.