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[VIII29-10] 黒毛和種およびホルスタイン種肥育牛における脂肪組織リモデリング関連因子発現
【目的】肥満の脂肪組織は慢性炎症状態にあり,肥大化脂肪細胞では細胞老化が進行している.これら肥大化脂肪細胞がマクロファージにより排除され,脂肪組織が成長するための環境が構築される脂肪組織リモデリングは,ヒトや実験動物におけるアディポジェネシス制御のキーファクターであることが判明している.そこで本研究では,脂肪蓄積能力の異なる黒毛和種及びホルスタイン種肥育牛脂肪組織における,脂肪組織リモデリング関連因子発現を検討した.【方法】供試牛として黒毛和種及びホルスタイン種去勢肥育牛を用いた.と畜時に,皮下,内臓,ロース筋肉内の脂肪組織を採取した.脂肪細胞サイズ測定には,オスミウム染色法を用いた.脂肪組織リモデリング関連因子発現量測定には,リアルタイムPCR法を用いた.【結果】皮下脂肪細胞のサイズに品種差は認められなかった.一方,黒毛和種の内臓及び筋肉内の脂肪細胞サイズは,ホルスタイン種より有意に大きかった.細胞老化を促進するp53並びにマクロファージマーカーCD68の遺伝子発現量は,内臓脂肪及び筋肉内脂肪組織で黒毛和種がホルスタイン種より有意に高かった.これに対し,皮下脂肪組織ではこれら因子の発現量に品種差は認められなかった.以上より,脂肪組織リモデリング関連因子発現の品種差には,脂肪蓄積部位が影響していると考えられた.