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[VIII29-24] 乳腺上皮細胞に発現する甘味受容体の生理作用に関する研究
【目的】近年,甘味を感知する受容体が生体中の様々な細胞に発現し,多様な生理作用を調節していることが報告されている.しかし,乳腺上皮細胞における甘味受容体のことは現時点でわかっていない.本研究では乳腺上皮細胞における甘味受容体の発現パターンを調べ,その生理作用について検証した.【方法】妊娠期と泌乳期のマウス乳腺を採取し,ウエスタンブロットにより甘味受容体のサブユニットT1R3を検出した.また,マウス乳腺上皮細胞を用いて乳分泌培養モデルを作製し,乳分泌との関連性を調べた.【結果】T1R3は妊娠期から泌乳期にかけてほぼ一定レベルで乳腺に存在し,単離した乳腺上皮細胞にもT1R3が発現していることがわかった.乳分泌培養モデルの培地に甘味受容体のリガンドである非糖質系甘味料4種類をそれぞれ添加した実験では,特定の甘味料を添加した場合にα-カゼインやβ-カゼインの分泌量が著しく減少し,乳分泌を上方調節する転写因子STAT5の活性も低下していた.また,タイトジャンクションを構成するClaudin-3,-4の発現量も非糖質系甘味料の種類特異的に増減していた.カゼイン分泌量の減少やSTAT5活性の低下はT1R3阻害剤を培地に添加した場合にも確認された.以上の結果より,泌乳期の乳腺上皮細胞には甘味受容体が発現し,その乳分泌能力を調節していると考えられた.